少し前ですが、東京ビックサイトで開催されたインターフェックスで面白い薬剤に出会いました。面白い薬剤を見せてくれたのは、事前に、コンタクトをしていたドイツ人です。東京ビッグサイトに着き、早速彼が所属する、ドイツの製薬会社のブースに足を運びました。
インターフェックスの海外から参加した会社が集まっている一角に、彼ともう一人が小さなブースを構えていました。彼はドイツの製薬会社で、アジアパシフィックのビジネスディベロップメントを担当して、もう一人はR&Dの担当者でした。
彼らが見せてくれたのは、四角いパッチ製剤でした。一見、単なる絆創膏に見えましたが、効能はアルツハイマー型認知症ということで、びっくりしました。が、実は、びっくりしたのは僕だけで、すでに日本でもノバルティスから発売されたとのことでした。いやあ、MRを離れて数年たつと、新薬のキャッチアップに疎くなりますね。 (イクセロンパッチ)
僕がびっくりしたのには、少し理由もあって、実は僕が新卒で入社した製薬会社では、当時、アルツアイマーの治療薬の開発に社運をかけていたときだったからです。大学病院を担当したときに、老年病科での治験に少しかかわりましたが、その治験が本当に本当に大変だったことを覚えています。
なにしろ、主訴は痴呆です。患者自身が、気づいていない場合が多いです。痴呆ですから・・・・。多くの場合は、ごく近い家族などが気づくということです。まあ、そりゃそうですよね。
そして治験ですが、これがまた効果の判定が、色々ありまして。僕の覚えている限りですが、例えば、ずーっと下を向いていたおじいちゃんが、前を見た。こんなことでも、効果として認められたりするらしいです。 これも昔の話で、いまはどのようになっているのかは、知りませんが。
モニタリングですが、内臓疾患や怪我ではないので、基本的にご自宅に患者さんは居る訳です。患者の身近にいる人にしかわからないような効果もあるわけです。従いまして、その治験には、患者と、患者にごく近い人物が必ず居なければいけないという、縛りがあったりしたのを覚えています。
しかも、その、「ごく近い人」とされた場合には、その人にも条件がつきます。例えば、半年間旅行にいけないとか、何日以上離れてはいけないとか・・・・・。
治験といっても、製薬会社は真剣で、医師はもちろん業務としてやっていただいてはいるものの、患者にとっては、時にはそんなに真剣ではない人も、含まれたりしているのです。意外と、この「ごく近い人」が、縛りを守りきれずに、旅行に行ってしまったり、色々と不都合が生じて、結果的に症例としてカウントできなくなったりしていました。
当然、近くで監視をしていないと、治験薬を飲み忘れたり、あるいは、飲んだことを忘れて、また飲んでしまったりするわけですよ。もしもダブルドーズになってしまったら、おそらくその時点でデータとしての価値が揺らぎますよね。
で、ブースのドイツ人が言いました。
「ヨーロッパでは、ウチ等がとっくに売ってるけど、日本でノバルティスから発売になるよ。」
「へえ、それは知らなかった。良かったね。」
僕が言うと、僕の質問にも答えてくれました。
「とにかく、貼ってあるのが見えるから、飲み忘れがないよ。」
「貼ってあるのが見えるから、もう一個貼らないし、ダブルドーズもないよ。」
「肝での初回通過効果もないよ。」
当然、超高齢化社会に向けて直滑降の日本です。認知症患者の推計は2010年で250万人らしいですね。さらに、2030年人は420万人に達すると言われているらしいです。こんなに使いやすい製剤があれば、本当にすばらしいと、彼らに言いましたが、彼らは、もう日本でも発売だし、誰でも知ってるよと言っていました。
新薬のCatch upが必要だと感じた一日でした。