ファイザーによるアストラゼネカの買収劇は、数ヶ月前にファイザーによる断念により立ち消えになりました。オフィシャルには今後もう無いと言われていましたが、水面下では、この年末にまた仕掛けるだろうと言われていました。法的にも、通念上も12月頃なら可能だと言っていたアナリストが居ます。さて、12月になりましたが、その気配はありません。結局ファイザーはアストラゼネカを諦めたのでしょうか。
まあ、諦めたと言うよりも、その必要があまり無くなったという印象も見え隠れしています。その理由がドイツのメルクセローノの存在です。
抗PD-1抗体という新しいトレンド
企業は人です。製薬業界も、企業ですので、やはり人材がモノを言います。その人材と言う切り口で言うと、オンコロジー領域に優秀な人材が流入している事は火を見るよりも明らかです。また、メーカーはこぞってオンコロジーパイプラインの充実を図ってきました。プライマリーからスペシャリティへ、そしてオンコロジーへと言った感じでしょうか。いまさら、高血圧とか糖尿病の新しい薬の開発に社運をかけるメーカーには魅力はありません。オンコロジー、ヘマトロジー、そしてオーファン、その他のスペシャリティファーマが隆盛を極めているのです。
さて、では、その次のトレンドは何でしょうか。ワクチンでしょうか。難しいですよね。ただ、オンコロジーに関連した新しい流れとしては、免疫オンコロジーと言う新領域がありますよね。それが抗PD-1抗体でしょうか。
抗PD-1抗体は小野薬品が長年かけて開発して晴れて世に出てきたオプジーボが牽引している状況でしょうか。それに追随し、世界の大手、中堅、スペシャリティファーマが開発にしのぎを削っていますよね。特にメラノーマなどの毒性の強い分野には期待されているようですね。この抗PD-1抗体のパイプラインを引っさげて提携先を探していたのがメルクセローノ、つまりドイツのメルクです。そして、その提携先に手を挙げてきたのがファイザーです。
ファイザーとドイツのメルクは、包括的な提携をしました(こちら)。ファイザーにとっては、このヨーロッパのメーカーとの提携の事実が、アストラゼネカへの興味を減少させる原因になっているのです。では買収なのか?いや、そんな性急な話ではないと思いますが、少なくともアストラゼネカを買収するモチベーションは下がりそうです。なぜなら、ファイザーはじめ、アメリカの大手企業の目論みは税金の安いヨーロッパに本社機能を移す事なのですから。
ファイザーとドイツのメルクの提携が発表されたのがこの11月ですから、水面下で囁かれていた、12月ファイザー、AZ買収説も、もう誰も言わなくなったのです。まあ、もしかしたら、AZの買収断念ありきで、ドイツメルクとの提携をしたと言えるのでしょうか。わかりません。
このグローバルでの提携で一番活気づくのは、日本のメルクセローノではないでしょうか。日本のメルクセローノは数年前にアービタックスを新発売し、その時は勢いが有りましたが徐々におちつきました。アービタックスも発売後長年経過し、そして最近では大手に比べた地味なパイプラインでなかなか人材が集まりませんでした。
ところがところが、今回の抗PD-1抗体を引っさげた提携先探しでファイザーと提携したのです。大きな開発費で、このパイプラインの開発は加速されるでしょう。そして、人材獲得に大きく有利な材料になりそうです。最近就任したメルクセローノの新しい社長は偶然なのか、どうなのかわかりませんが、ファイザー出身ですね。
メルクセローノが人材を募集する動きになるかもしれません。今までは若干苦労した人材獲得も、抗PD-1抗体開発パイプラインへの期待で、優秀な人材がメルクセローノに集結するかもしれません。
折しも、昨今のこの突発的な買い手市場に、大きな募集をかける可能性があります。製薬業界には求職者が多めに存在しているこのタイミングですので、まさに、メルクセローノが優秀な人材を獲得するのは今がチャンスではないでしょうか。
メルクセローノへの就業に興味が有る方は、是非ご連絡くださいませ。お気軽に相談に乗らせていただきます!