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ツイートの続き②

その銀座の女は、後日、のこのこ現れた。先生に連れられて飲みに行った時に、赤坂の店にいた。なぜかその女は、俺のことを「貴乃花」とあだ名をつけた。「たかー、ねえたかー、!!」と、真っ赤な唇で、ハッカのタバコを吸いながら、馬鹿みたいに連呼していた。その頃は若貴ブームだったからか? なぜかその女から俺は好かれていた。男としてではない、俺がその女のやらかした事を丸く収めたからである。彼女にとって、俺は手柄を立てたと言うことである。

渋谷の制服が有名な女子校から広尾の女子大に進んで、都銀のOLだった彼女だが、上司とうまくいかずに、いつしか銀座で夜勤めるようになっていた。頭もよくて、容姿端麗、知的で小柄の良い女なので、おっさんにはモテモテ。華やかな身なりではあるが、話はよくわかる、すぐに懐に入ってくる感じの女だった。

ある日先生に内緒でその女と築地の寿司屋に行った。その寿司屋はよく俺が大学病院の若手の先生を連れていく店で、大将も知っていたので、居心地が良かった。女にとっては、普通の店だが、いつもおっさんの医者や弁護士、企業の社長といった人種をを相手にしているので、俺みたいな同年代の男と食事に行くこと自体、彼女にとっては久しぶりの感覚だったのかもしれない。築地の店を跳ねると、タクシーで銀座に移動するが、彼女の出勤前に少しだけワインに詳しいマスターの居るバーで葉巻を吸いに行った。

銀座の夜はこれから始まるところだった。

◆ ◆ ◆

世の中はバブル経済がはじけてから、2年目という時期だった。地上げで成り上がった不動産屋を中心に、煽りを受けている経営者で溢れていた。ある日、先生にゴルフに誘われた。ほぼほぼ土日がゴルフだったので、慣れては居るものの、単純に休みが潰れるのは良い気分ではなかった。軽井沢のゴルフ場に着くと、合流した先生はすでに泥酔していた。何があったのかはよく知らないが、相当飲んでいる。傍には女がいた。

酷いスコアだったが、ゴルフが終わって軽井沢でパーティに出ると、突然、参加していた不動産屋が何やらプレゼンを始めた。一番若い俺が、よくわからないけど、スライドを手伝えとか言われて、アゴで使われてムカついた。誰だお前? とか思ったが、そもそも30歳にも満たない俺は、その場では単なる兄ちゃんでしかなかったので仕方がない。ただ、その不動産屋の奥さんが超美人、聞くと元国際線のCAというので、なるほど、と思った。

その不動産屋は、先日に先生の医院のある街を締めている親父さんから先生がもらって処理に困っていた刀のようなものを引き取ってくれたらしい。先生も恩があるらしく、先生は俺に、不貞腐ないで手伝ってやってくれと頼むのであった。先生がそう言うなら、まあ、仕方ないかと思っていた。

◆ ◆ ◆

朝起きたら、タバコの匂いのついた女の長い髪が俺の顔にかかっていた。なぜかわからないけど、女俺の家に泊まったのだ。
「昨日、どうしたっけ?」
俺が聞くと、女は、俺が何か不動産屋の社長から飲まされて、変な書類にサインしたと言った。何にサインしたのだろう?全く覚えていない。

不動産屋の社長に電話すると、俺がサインしたのは、新しく日本に上陸した、マルチビジネスの会員になる書類だったとのこと。なんだか怖くなったというか、めんどくさくなった俺は、慌てて解約の手続きをしようとしたが、案の定、解約は難しく。どうやら、実態のある、法的には問題ない企業で、ただネズミこうと言うだけなので、最初の会員にだけはなって数千円使ったけど、あとは放置しておいた。

バブルが弾けたおかげで、かつて地上げで儲けた不動産屋が窮地に陥り、ありとあらゆる商売に出ていたのだ。そう言う時代だった。

◆ ◆ ◆

次の日、上司から電話があり、赤羽のパチンコ屋で合流した。

つづく

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