POCT  新しくて熱いマーケット

POCT  「臨床現場即時検査」 新しくて熱いマーケット

日本が超高齢化社会であること、医療費が国の予算を圧迫していること、医師、看護師などの医療従事者が大幅に不足していること。これらのことは言わずもがな、論ずるまでもありません。医療政策は待った無しなのです。2015年6月に出た政府の「骨太の方針改革」の中でも医療費抑制は待った無しの課題でした。甘利内閣府担当特命大臣は、医療、適正化も「成長の新エンジン」と意気込み、挑戦できる事柄は全部やるとして、2020年度のプライマリーバランス黒字化に向けて決意を示して、同日に成長戦略「日本再興戦略 改訂2015」も閣議決定したのです。こうしている間にも、60歳以上の人口はどんどん増え、疾病の発症人口がさらに高まっているのです。がん、リウマチ、アルツハイマー、肺炎、肝炎は60歳で発症率が上がり、人工透析に初めてかかる年齢も60歳から増えます。

今更ながら、敢えて言えば、もう医療費の抑制は待った無しということではなく、期限をとっくに過ぎてしまってさえいるのです。

そこで前述の骨太の方針なのですが、見ると中身の薄さに唖然とします。何故かといえばこれだけ事態がさしせまって何らかの施作を要しているにもかかわらず、内容が「ジェネリック医薬品の使用適正化」に終始しているのです。確かにジェネリックの普及は医療費の削減につながるのですが、なんだか20年以上変わっていませんよね。薬価も高すぎますね。

POCT  熱いマーケット

ジェネリックの普及もさることながら、それ以外の方法で医療費の削減に大きく寄与することがあると思います。例えば糖尿病で考えると、検査して糖尿病であることがわかり、運動療法と薬物治療をしていきますね。血糖値をモニタリングすることは今や通院しなくても血糖測定キットがだいぶ普及しています。おそらくしばらくの間は薬物治療になることになるのかと思いますが、自己測定キットがあれば、病院での検査は少ない回数で済みますよね。病院で採血しますと、保険点数が発生して医療費がかかりますが、このキットは、市販で買えるので医療費の抑制になりますね。これが実はPOCTと言われています。

POCTは医療費抑制だけでなく、適切な治療指針を決定するスピードを早めることなど、様々な利点があるのです。日本臨床検査自動化学会が定めたPOCTガイドラインによりますと、POCTは次のように定義されています。

POCTとは、被検者の傍らで医療従事者が行う検査であり、検査時間の短縮および被検者が検査を身近に感ずるという利点を活かし、迅速かつ適切な診療・看護・疾患の予防、健康増進等に寄与し、ひいては医療の質を、被験者のQOL(Quality of life)に資する検査である。

つまり、病院でも家庭でもその他の場所でも、簡単で身近な検査が可能ということなのです。POCTはPoint of care testing、臨床現場即時検査というふうに日本語では訳されて、被検者の近く、当初は病院内なら、ベッドサイドや診察室というのが一般的でしたが、次第に病院の外の薬局、自宅で行う場合も定義に入ってきました。ただこの日本語訳に関しては、天理よろづ相談所病院臨床病理部部長である松尾収二先生によると、あまり良い命名ではないようです。検査の種類ということよりも、医療の質や結果思考の考え方がもっと日本語に盛り込まれるべきだとしているのですが、なかなか旨い日本語がないようです。

POCTの種類ですが、奈良県臨床衛生検査技師会のホームページに天理よろず相談所病院の松尾先生が寄稿されていてその表によるとありとあらゆる検査項目があり驚きます。がんの腫瘍マーカーまでPOCTの項目に入っていますね。
アメリカではかなり普及しているようですが日本では今までなかなか普及してきませんでした。ところが、前述の政府の骨太方針では民間資本の導入をかなり意識しているようで、そうなると各検査メーカー、試薬メーカーもこの日本のマーケットを注目しないわけがないのです。いよいよ、日本にのPOCTマーケットが熱くなるのではないかと思っています。試薬メーカーは今までなんとなく医薬品の縁の下というイメージがあったのですが、考えてみれば分子標的のコンパニオンドラッグなどはそもそも試薬がなければ成り立たないマーケットで、いわば、試薬メーカーの存在なしには立ち行かなくなってきてはいたのです。いよいよ検査、試薬、この辺りのキーワードが日の目を見る時代に突入でしょうか。

各社を見てみると、東邦薬品などの大手ディーラーも動き出しています。メーカーでみると、GEの超音波画像診断装置、シーメンス社のPOCT装置「ACUSON Freestyle」、睡眠時無呼吸症候群で使用するC-PAPを展開しているフィリップスは、従来その診断には入院が必要だった検査を入院せずに、家庭で可能にした携帯型睡眠評価装置「ウォッチパット」を市場に導入しています。これらは大幅な医療費の削減とQOLの向上につながる画期的な製品ですね。

なかなか日本で普及しなかったPOCT。これはドラッグラグやデバイスラグにも似ていると思います。技術的にも、制度的にも、政治的にも、そして人材的にも課題があり、なおかつ患者そのもののメンタリティーなどの課題もあるのだろうと思います。自分でできると言われても、お医者さんにやってもらったほうが安心という患者さんもたくさんいるでしょう。ここは、さらなる普及を促進する対策が必要になるかと思います。そのためには教育や啓発が必要になるのかなと思います。最近、POCTの普及のためにPOCコーディネータという役割が生まれました。POCを患者、医師、コメディカルに正しく伝える仕事です。このような役割が行く行く資格化されるかもしれませんね。また、メーカー側もこのマーケットに本腰を入れ始めてきていて、優秀な人材をこのPOCT市場にアサインしようとする動きがあります。企業の積極かつ正しいマーケティング活動が進むと、医療機関、医療従事者、患者への浸透は早いと思います。医薬品で最近あまり旨味を感じなくなった企業はこの熱いマーケットに次々と参入してくるに違いありません。

日本から新薬を出せるだろうか

14日の日経新聞に製薬協会長で大日本住友製薬社長のインタビュー記事が載っています。見出しは「新薬出せねば行き詰まり」というなんとも悲壮感さえ感じる言葉です。さらに響きも4−4−5という、字余り加減で語呂もよろしくないです。サブタイトルとして「後発薬台頭、製薬各社にどう影響」という見出しです。このインタビューの趣旨は、加速する後発医薬品の普及に乗じて医療費削減の折、厚生労働省が打ち出した方針をうけて製薬メーカー側からの意見を聞くといった内容です。厚生労働省が高らかに打ち出した施作は後発医薬品の数量シェアを現状の50%強から80%以上に高めるというものです。で、それについてどう思うか?的な記事です。

増えすぎた医療費抑制には後発品のさらなる普及は、厚労相としては待った無しの命題でしょう。ここのところ自民党行革推進本部は「ジェネリックが高すぎる。」ということで、どうやら次回の衆院選の公約として安価なジェネリック医薬品の処方をすべての処方箋に記載するというような内容を盛り込むとか。

さて日経新聞のインタビュー記事に戻りますが、追い詰められている感のある見出しの文字とは対照的に、製薬協会長であり大日本住友製薬社長のお写真はかっこよいです。ダンディズムがほとばしっております。1968年東大経済学部卒、住友化学入社、2008年から大日本住友製薬社長で、現在70歳でいらっしゃるそうです。70歳で製薬企業の社長というのも驚きですし、個人的には新卒以来一度も転職していないということも驚きです。

製薬協の立場としては政府のジェネリック医薬品の普及推進には賛成をせざるを得ないでしょう。しかしながら先発メーカーの社長としては自社製品の売り上げを蝕む後発品の台頭は複雑な心境になるでしょうね。

「からだ・くらし・すこやかに」というコーポレートメッセージの大日本住友製薬。ジェネリック医薬品が安くなり普及すれば、くらしはよくなると思うのですが、実は今回の政府の打ち出した80%以上へ後発品数量シェアをアップさせるという方針には些か注文があるようです。つまりジェネリック医薬品が増えると当然ですが先発品の売り上げは減ります。ジェネリックが発売されている先発品は「長期収載品」ということになるでしょう。リピトールもアリセプトもたくさんの優秀な”元”新薬は、30以上のジェネリック医薬品にマーケットを明け渡しているわけですから、先発メーカーの売り上げは減りますよね。大日本住友製薬の社長が言っているのはまさにそこで、長期収載品の売り上げが製薬企業の利益の屋台骨であることはまちがいありません。この利益が減ってしまえば、企業は売り上げ高から研究開発費にかけるコストが回らずに、厳しくなるということなのです。簡単に言えば、そんなに新薬メーカーをいじめるなと。いうことでしょうか。

ただし「新薬出せねば行き詰まり」という見出しには、一般的な見解以上の意味があるような気がします。大日本住友製薬は2017年度に売上高4500億円、営業利益800億円の目標をかかげております。ところが開発中の抗がん剤「BBI608」の、結腸直腸がんを対象とした単剤の第3相国際共同治験が昨年の5月頃に中止が発表されるやいなや株価が暴落、その爪痕がまだ残っているのです。ちなみに2014年度の売り上げ高は3714億円で、対前年をも下回ってしまいました。この期待の新薬が出なければ当然のことながらこの中期見通しは見直しを迫られることになるでしょう。

大日本住友製薬に限らず今までオンコロジー領域を持たなかった製薬企業がこぞってオンコロジーのパイプラインの拡充を図っています。精神科領域を得意としていた大日本住友も開発の柱をオンコロジーに置き、2012年に米国のがん領域を専門とする創薬ベンチャー、Boston Biomedical, Inc.(BBI)を買収したのです。中止となったBBI608の結腸直腸がん対象の単剤治験は、北米では2015年度、日本でも2016年度の発売開始を目標としていました。これは正直痛手となっています。まあ、開発そのものをやめたわけではなく、単独中止後は併用療法などの使用方法に活路を見出そうとしているのです。

このボストンの会社、治験、なんでこけちゃったんでしょう。詳細は知りません。治験結果が思わしくなかったと言えばそれはサイエンスですから仕方がないということなのでしょうか。しかもそれが「想定外」だったということを社長も公言しています。筆者が昔所属していた日本の中堅製薬会社でも、似たような出来事がありました。奇しくもボストンにあるバイオファーマと提携し、投資を始めた途端に彼らのKPIが悪化したのです。疑いたくはありませんが、BBIの化合物は過大評価されたのでしょうか。それとも、プロトコルの書き方など、治験の人的な戦略そのものの失敗なのでしょうか。いずれにしてもBBIにとっては特段痛くもかゆくもないことかもしれません。すでに多額の売買益を得ているわけですから。サイエンスの結果は仕方がないとしても、そこに投資した判断はどうだったのか。まるで日本のプロ野球チームに所属するダメな多額の助っ人外人選手の様に。?

さて日本の中堅から大きな国内製薬メーカーは開発費に限界があります。ただ開発費の売り上げ高比率はグローバルファーマ同様に20%位を維持していますが、ボリュームが難しいですね。そこで海外のベンチャーに投資をしようとするわけですが、このベンチャーが失敗すると痛いです。

そんな中での、日経のインタビューでしたから、まあ、ちょっとタイミングが悪かったのか、「新薬出さねば行き詰まり」というインタビューになってしまったのでしょうか。

似たようなケースは今後も他の国内企業で出てくるはずです。治験の失敗はサイエンスのことで致し方ないとしても、KPIをキープすることや投資判断は人的なスキルセットの問題となりうるでしょう。ここは企業努力で上げていかなければならないかもしれません。それにはやはり人材も外から引っ張ってこないと難しいかもしれません。大日本住友製薬にかぎらず、大きな会社、特に財閥系の化学品部門の様な企業は役員のほとんどが新卒からの生え抜きで65歳以上ですね。生き残るには良い人材を外から連れてきて、組織を活性化することも必要かもしれませんね。

最近大塚製薬や小野薬品で目覚ましい画期的な新薬がグローバル基軸で出ていますね。日本の製薬企業発の新薬がもっと増えると良いですね。

【予測】MR数は2016年から増加に転じる?

数年前、ファイザーで早期退職、まあ、リストラがありました。グローバルで15%の人員削減ということで、日本も然り、執り行われました。変な話かもしれませんが、この早期退職は大人気、退職をすると数十ヶ月分の給料がもらえる訳ですから…。早期退職の詳細が、抜き打ちで社員にリリースされると、社員からは応募の電話が殺到し、その日のうち、いや、1時間もしないうちに予定人員に到達し、売り切れた、ということを聞いた事が有ります。中には、電話をするためのアルバイトを個人的に雇って応募した…なんて言う輩も居たとか居ないとか。それだけ大人気の早期退職制度だったのです。

何故そんなに大人気だったかと言えば、もちろん手厚い制度そのものの魅力も有るでしょうが、丁度その頃は、退職したMRは行く先がたくさん有ったのです。製薬業界も即戦力のMRを受け入れる企業がたくさん有りました。糖尿病や高血圧、CNS、オンコロジーなどの新薬のパイプラインを控えた製薬企業がこぞってミッドキャリアのMRを中途採用で迎え入れていました。つまり、次の行く先を見つけやすかったので、ジョブセキュリティと言う点から考えると退職する事にそこまでのインパクトやリスクも無く、たくさんの人が中途採用を、まあ、安心して選んで、喜んで大金を手にしたのです。
それから数年経った今、まさに、数社でリストラが行われようとしていますよね。ノバルティスはディオバンの件で、サノフィはプラビックス特許切れの後グローバルで削減の動きが、アストラゼネカも主力製品の特許切れの影響で。また、国内企業も海外売り上げ比率の上昇で国内が鈍化してコスト削減に追い込まれている会社が多いですね。第一三共はかなりの人数を削減しそうですし、アステラスは営業所を減らす方向とか。これは筆者の勝手なブログですから事実関係に何の責任も持つつもりはありませんので悪しからず。

さあ、では、これらの企業に所属する人々は、あの、ファイザーの時の様に喜んで早期退職制度への応募に殺到するのでしょうか。

しません!!

数年前と今この現在とでは、環境があまりに違います。

一番の違いは、受け入れ企業があまりにも少ない事です。つまり、MRの中途採用の募集が少なすぎるのです。早期退職制度が喉から手が出るほど欲しくても、行く先企業が不十分である事が不安で制度に応募する事を躊躇する人々が大部分を占めている様子です。ノバルティスやサノフィ、第一三共の早期退職はうまく行くかどうか、成り行きが見られるところです。

個別企業の早期退職は横に置いといて、そもそもグローバルでここ数年、製薬企業はMR数を減らしてコスト削減を図るトレンドに有りました。アメリカを中心に、MR数の減少傾向が何年も続いています。さらに、MRのアウトソーシング、つまりCSOのコントラクトMRも、当初の予想ほどではないものの増え続けました。

では、メーカーではなく、CSOは良い受け皿になるのでしょうか。給与レベルにある程度折り合いがつけば、と、思う方も居るかもしれません。当然CSOにとっては人材そのものが財産になる訳ですから、この人員の流れは見ているはずです。しかしながら、もともと高い給料の年齢の高いMRはCSOにとってはマッチする人材では有りません。最近ではCSOも年齢は峻別するし勤務地はどこでも良い訳でもありません。

早期退職制度を利用しようかどうしようか迷っている人々にとっては、取り巻く環境下での逆風が次から次へと出てきている訳で、人々にとってはさらに早期退職制度への手を挙げ難くなっているのです。

こんな難しい状況であれば、手を挙げずに、つまり、制度を利用せずに、コツコツとこのまま続ければ良いじゃないか、と思い直すひとも出てくるでしょう。

しかしながら、安閑として続けるわけにもいかない現状があるのです。このままだと数年後は早期退職制度どころか、単純に首切りが始まるのではという漠然とした不安からです。

単純にクビになるくらいだったら現行の早期退職制度の利用に踏み切った方が良い、というのが趨勢でしょう。

なかなか悲観的な事が多いですね。
だがしかし、だがしかし!
筆者の個人的な感覚ではありますが、悲観ばかりではありません。昨年あたりから、漠然と続いてきたMRの減少の勢いが弱まっています。つまり、

MR数の減少は、まだあと少しの間は続くのですが、もうすぐ底に達するのではないだろうか、ということ。再来年あたりからはむしろ増加するのではという感覚です。バイオファーマを中心に数百人の新しい部隊が誕生しているし、メガファーマにおいてもオーファンや専門領域へのシフトが続いていて人員が必要に転じています。

新製品の新発売も来年から多くなります。

スタチン、ARB、DPP-4、SGLT-2、アレルギー薬やPPIなど、今まで売れ筋だった路線、つまりプライマリー領域華やかしかり日の製品群の時代は、新発売スタートダッシュのマンパワーを補う方法としてコントラクトMRが重宝されました。当然、限られたスパンでのプロダクトライフサイクルの方程式です。

立ち上げでお祭り騒ぎして、競合品が出て、数年経過し、特許が切れる、といったような製品群の場合は、コントラクトMRの利用はまさにプロモーションのユーティリティとして正しいでしょう。

ところが、来年からの新製品の多くは、専門領域での新規物質が多いのです。現状、世界の開発品目、世界のパイプラインの40%ほどが専門領域や、またオーファンドラッグです。

オーファンは儲からない、という、これまでの常識を覆すかの様にオーファンの開発が盛んです。オーファンが思ったよりも儲かると言う事に各企業が気づき始めたのです。逆に言えば、今から糖尿病などの薬を開発しているような会社は、戦略として若干疑わなければならないかもしれません。

専門領域やオーファンドラッグは、なかなか競合もジェネリックも存在しないマーケットです。

競合もジェネリックもなかなか出てこない、、、、と、言う事であれば、MRアウトソーシングよりも、むしろ帰属意識の高いプロパー社員の方が適しています。

これからは、専門性の高い領域で専門MRの転職マーケットが盛んになるのではと、思います。再来年、つまり、2016年くらいからでしょう。

現在早期退職を考えている方、専門MRへの道をサポートしますよ。ご連絡くださいませ。

夢のような薬があった。

ディオバンで大騒ぎですね。

だいたいARBとか、数が多すぎて競争が激しいにも関わらず、優位差があるような論文がなかなか出ない、つまり本当に効能効果は似たり寄ったりなんでしょうね。それが全ての始まりような気もします。接待もできないし、似たり寄ったりの薬で熾烈な競争が展開されているので、どうにかして差別化をしないといけないわけですよね。そりゃ少しでも他社より良いデータを残したいです。

アメリカが何でも良いとは思いませんが、アメリカではこんな事は起こりにくいでしょうね。まず、ニューロタンのジェネリックが10円位で売られちゃってますので、後から出た競合品が色々改善されて出てきたとしても、10円ならニューロタンのジェネリックを買う訳で、もうこの時点でこのカテゴリー、つまりARBの戦争は終わりです。

ただし日本では7掛けですから、まだまだ少しでも優れた競合品があれば、そちらに目が向く訳じゃないでしょうか。 今まで長年処方されてきた100円の薬に慣れているお年寄りが、30円安いかもしれないけど色も名前もパッケージも違うジェネリックは、何か違うように見える事でしょう。30円の差なら、今までので良いよ。という事になるかもしれません。

このようなお年寄りも、100円が10円になるなら、慣れてないかもしれないけど10円のジェネリックを選ぶ事は明らかです。おまけに、あとから改善されて発売された同種同行品を服用していた人々も、少し古い薬らしいけど、同じような薬ならそのジェネリックで良いよ。という事になりますね。この現象がまさに、ジェネリックが発売された品目そのもののダメージだけでなく、そのカテゴリー全ての製品のダメージ、すなわち、そのカテゴリーのマーケティングの終焉を意味します。

したがいまして、クドいようですが、アメリカではARBの戦争は終わっちゃったとも言えるでしょう。

ディオバンのこの一連の騒ぎを見て思い出す薬があります。それは、このブログの筆者が新卒でMRをしていたころ、1990年代ですが、夢のような薬があったのです。

現在の新薬開発のトレンドは海外で開発されて日本に入ってくる感じですよね。ところが、その夢の薬は日本でのみ承認されていて、アメリカにも無かったのです。売り上げも膨大でした。下手したらディオバンよりも多かった? かもしれません。

その薬の名はアバン。

そして、カラン。 セレポート。 ホパテ。 レン。 ですね。

1990年代と言えば、そんなに大昔ではないと思うのですが、この時代に日本だけで「脳代謝改善薬」という薬があったんですよ。懐かしいです。当然高齢化に突き進む日本社会において、夢のような薬だった訳ですね。実際に発売されて、いやー、相当売れていましたよ。 筆者もMRとして大学病院を担当していましたが、専門の先生が、こぞってこの有用性を謳っていて、積極的に処方されていました。製薬会社も、当然の事ながら、奨学寄付も、研究会も、当時は接待もガンガン、地方の学会にはまるで大名旅行か参勤交代の行列のように、専門医と取り巻きと、製薬会社社員が大挙して流れ、夜の繁華街も医者と製薬会社社員で潤い、景気が良かった時代です。

ところがです。これらの薬が売られてしばらくして、既にそうですね、一体いくら位の売り上げをあげたんでしょうか。ググってみると、だいたい8000億円くらい売れたらしいですよ。

そのうちに、効能効果にも、売上高が大きすぎることにも疑問の声が上がり、再評価の結果効果が無しということになり、発売取り消しになりました。効果があるから薬になったはずなのに、売られた後に効果が無いという事になり、8000億円売り上げた後に発売が取り消されたのです。当然保険請求で国庫から莫大な税金が使われた事でしょう。 この件は、効果がなくても、薬は売れるんだなという、変な証明にもなってしまいます。

この時は、確かにインパクトはありましたが、それほど大騒ぎもしなかったような気がします。まあ、事件性が無かったからかもしれませんが、そもそも事件性があったのかどうかさえ調べていないのでは。調べたら、何らかのコトは出てきたでしょうね。もう今となっては闇の中です。

粛々と発売中止のアナウンスがされて、粛々と発売が中止されて、3ヶ月もすぎた頃には誰も話題にもしなくなり、夢の薬は忘れ去られました。 おそらく、誰も咎められる事無く、そのまま、儲かったまま、何事も無かったようにフェードアウトしていったような記憶があります。

ディオバンの今回の件とは性質も違うので同じように比較する事はできないかもしれませんが、ディオバンと同じように、いやそれ以上の出来事だったのではないでしょうか。考えさせられます。

ジェネリック・リピトールを巡るニューヨーク決戦!

リピトールの後発品ですが、日本からは5社から発売になっていますね。 

アトルバスタチン錠5mg/10mg「EE」  – エルメッドエーザイ
アトルバスタチン錠5mg/10mg「KN」  – 小林化工
アトルバスタチン錠5mg/10mg「サワイ」 – 沢井製薬
アトルバスタチン錠5mg/10mg「サンド」 – サンド
アトルバスタチン錠5mg/10mg「トーワ」 – 東和薬品

お気づきのように、ジェネリック医薬品のネーミングは、一般名を基準としたネーミングに統一化されました。昔は、それはギャグ?というようなユニークな名前もありましたが、数十社が参入するジェネリックマーケットですので、紛らわしくなったり、処方ミスなどをなくすためだと思います。

できれば、リピトールに準えた名前をつけたかったでしょうね。 それだけリピトールのブランド名は浸透していますので。

さて、このリピトールのジェネリック戦線ですが、アメリカでは、2つのメーカー、ワトソンランバクシーでちょっとした物議を醸しております。

ワトソンは、NYに本拠を置くジェネリック医薬品メーカーです。ワトソンは自社のホームページで、今回のリピトールの後発品の発売を

“Largest generic product launch in US history” 

つまりアメリカ史上で最大の製品の後発品の新発売として、意気込んでいます。アトルバスタチン錠80mgの初出荷の様子が、ホームページ上で動画で記録されているほど、ワトソンとしては、会社的にも意義のあることだったことが伺えます。それにしても、アメリカではリピトールは80mgなんですね。

ワトソンが、動画をホームページにまでupして、「我々はもう出荷している」ということを強調している理由ですが、なんとなく、ランバクシーを意識しているような気がしてなりません。なぜなら、ワトソンは、「スタート」を切ったものの、ランバクシーは、ジェネリック・リピトールの販売権は得ているものの、主要記事によるとまだ沈黙しているのです。

Watson starts selling generic Lipitor in US, Ranbaxy mum

11月30日時点のBloombergによれば、ランバクシーはこの時点で更なる最終的なクリアランスをUSFDAから受けなければならないのです。記事によると、インドのアナリストも、いつUSFDAから許可が降りるかわからないと言っています。こんな記事を読むと、ワトソンの動画が如何にインパクトを与えているものであるかを感じざるを得ません。

 さて、ランバクシーといえば、インド最大の医薬品メーカーで、第一三共の傘下。 つまり、この一連のドタバタは、日本の会社の子会社が繰り広げていることだったのですね。ということは、むしろ、かなり日本に関係のあることだったのです。

第一三共の経営にかかわる方々にとっては、歯がゆいことだったのでしょうか。日本ではなかなかこの手の報道がないので、うかがい知ることができないところです。

さらにランバクシーは、ジェネリック最大手のテバと組んで、このジェネリック・リピトールをテバの販売網に乗せようとしております。当然戦略上のことであるかと思いますが、第一三共にとっては、日本市場はテバを通じてオペレーションをすることになるのかと思います。大洋と興和テバを同時に買収して、テバ製薬誕生の目玉製品にもなりそうな予感がします。このストーリーのためにも、ランバクシーはUSFDAからの宿題をクリアしなければならないのでしょう。

ランバクシーの拠点はインドではグルガオン、アメリカではニュージャージーに置かれてています。 ニューヨークとニュージャージーに本拠を置く2社、まさにgreater NY 決戦。。

NBAで言えば、ネッツとニックスのマジソンスクエアガーデンでの決戦!と、行きたい所なのでしょうが、今のところはネッツの不戦勝になりそうな雰囲気ですね。この東海岸での対戦は、日本にも大いに関係があり、今後の成り行きがかなり注目されます。

リピトール四方山話

最近、ファイザーがワーナー・ランバート時代にリピトールを開発した化学者をレイオフして、話題になりました。
(Lipitor Pioneer Is Out At Doomed Pfizer Lab; A Blockbuster Drought
Wall street journal, http://online.wsj.com/article/SB119733600536720234.html
As Drug Industry Struggles, Chemists Face Layoff Wave )

世界で最も売れている医薬品のひとつ…といえば、ここ数年はリピトール(アトルバスタチン)が1位を連続で占めていました。元々ワーナー・ランバートの化学者が開発して2000年に世の中に出た薬です。その後ファイザーがワーナーランバートを買収し、日本ではファイザーとアステラスと一緒に売っていますよね。

ところで、当事のファイザーによるワーナー・ランバートの買収劇は、890億ドルという金額で、いまだに世界の巨額M&Aの第4位になっています。因みに、1位から3位は下記のとおりです。

  1. ボーダフォンとマンネスマンの2028億ドル
  2. AOLによるタイムワーナーで1820億ドル
  3. RFSホールディングズによるABNアムロで982億ドル

さて、当事そんな巨額なM&Aをファイザーが決断した理由も、ずばり、リピトールに他なりません。

リピトールはその後2004年に世界の売り上げNo.1に躍り出て、売り上げのピークが過ぎた現在においても120億ドル近く売れていて、2010年時点で1位(セジデム・ストラテジックデータ株式会社の調査による:http://www.utobrain.co.jp/news/20110801.shtml)、さらにアメリカにおいても2009年まで1位(ちなみに、2010年はネクシウム:http://www.drugs.com/top200.html)なのですから、ファイザーにとっては、むしろワーナー・ランバートは安い買い物だったのかもしれませんよね。

さて、リピトールは一般名のアトルバスタチンでわかるように、いわゆる“スタチン”で、HMG-CoA還元酵素阻害薬。いわゆる高脂血症、高コレステロールの薬ですよね。

この、“ほにゃららスタチン”とか、“高脂血症”とか、“HMG-CoA還元酵素阻害薬”とかいう言葉は、1990年代に製薬会社でMRを経験した者にとっては、メバロチンを連想させます。

メバロチンといえば、日本発で初めて世界に通用するような薬だと、先輩方々から教えられたものです。昔、某国内中堅製薬会社に勤務していたとき、仲間同士で蔵王にスキーに行ったのですが、途中で三共製薬の超豪華な保養所施設があり、みんなで「メバロチン御殿」と呼んでいました(笑)。

さてさて、そんなスタチン、リピトールですが売り上げ減と特許切れで様々な影響をもたらしています。

さて、冒頭に紹介させていただいた化学者ですが、ファイザー社が別に彼を狙ってレイオフしたわけではないでしょう。そこにある研究所2100人のレイオフですから、世界的なレイオフの一環というわけです。

ファイザーは90年代にM&Aによる研究開発、パイプラインの増強をする、いわゆるファイザーモデルで製薬業界を牽引してきました。研究開発には毎年9000億円近くが使われていていました。9000億円って、1社のしかもR&Dだけにかけている金額としては、すごいですよね。

ところが、実際にはファイザー本体からの新薬は1998年のバイアグラ以来、登場していない(wikipediaによる)とのことですから、レイオフというのは当然のことなのかもしれません。日本では、名古屋にあった研究所は2008年にスピンオフして今年上場ましたね(ラクオリア創薬http://www.raqualia.co.jp/)。

驚くことではありませんが、MRにも影響しています。ファイザーはリピトールの特許切れの前にアメリカで大規模なsales rep(MR)のレイオフを計画しています。とにかくリピトールがあけた穴を、コーポレートとして相殺しなければなりませんので。その穴に関しては新たに1000億円のコストカットが迫られているようです(wall street journal: http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304906004576371561284585844.html)。そのアメリカのMRのレイオフの具体的な数字や時期などの詳細については、ファイザーの広報は名言を避けている(http://www.pharmalot.com/2011/08/pfizer-cuts-reps-before-lipitor-patent-expires/)とのことです。

それにしても、ブロックバスター一品目が、何万人もの人生を左右しているような気がして、医薬品ビジネスって恐ろしくもなりますね。さて、レイオフや、コストカットなど、暗いトーンばかりではありません。“特許切れ”といえば、当然のことながら、hotになってくるのはジェネリックメーカーです。

この11月の薬価収載でリピトールの後発品が5社から発売されます。まさに未曾有のジェネリック市場の更なる拡大につながる事は間違いありません。ただでさえ、この11月の収載はアリセプトなど大型ブランドのジェネリックが収載されるのです。引き続きジェネリック市場の活況は続くのかなと思います。

リピトールの話はこれからもつづきそうですね。

しょうがない話

先週の土曜日にわき腹に腹痛を覚え、不覚にも救急外来に搬送されました。原因は薄々わかっていましたが、腎結石です。2回目ですから。綺麗な女性の看護士さんにボルタレンの座薬を挿入されました。痛みは落ち着き、エコーにもレントゲンにも結石らしき物が映っていたので、ほぼ確定診断され、ラクテックを1リットル射って家に帰されました。茶髪に金のネックレスがまぶしい若いイケメンの救命の先生に、「ほぼ診断もついたので、痛みが落ち着いているなら、どうぞご帰宅ください。月曜日には泌尿器科を受診してください。」と促され、自力で家路につきました。まあ、救命救急だから、僕みたいに腎結石で歩ける患者にはかまっていられないでしょう。

週があけて月曜日に泌尿器科を受診しました。まあ、地域で一番大きな基幹病院ですから仕方がないのですが、とにかく待てど暮らせど順番が回ってこない。朝から受付して、外来で3時間以上待って、やっと自分の番。

先生:レントゲンを見ながら「ここにありますね。6ミリくらいです。」
先生:「とにかく、水をいっぱい飲んでください。これを出さないと。出たら拾って持ってきてください。」
先生:「あとは、結石ができないような生活をしないと・・・。」
先生:「そうですねー。石を溶かす薬と、尿が出やすい薬を出しておきましょうか・・・」

と、いいながら先生はパソコンにハルナールと入力。

僕:「あの、僕、前立腺肥大はないと思いますのでハルナールは無効ではないでしょうか・・・」

先生:「まあ、これは、大丈夫ですから。 また2週間後に来てくださいね。」

まあ、大病院が抱える問題ですよね。3時間待ちの5分診療。それは、仕方のないことだと思います。いろいろと、昔から対策も打たれているようですが、一朝一夕には解決できないことですよね。結局ハルナールを出されましたが、MRの時に研修で習ったα1-cだか何かのレセプターは、排尿障害が無ければnon responseのはずだと思うのです。そうであっても、それ以上外来診療中に先生と議論してもショウガナイし、そんなことしたら嫌な患者になっちゃうし、時間もないし、逆に先生からもっと難しい反論とかされたらわからないし、結局素直に処方されることになりました。

朝から午後1時半まで病院の外来で過ごし、これから調剤薬局へ。そこには、忙しそうな40代半ばと見られる女性薬剤師が居ました。。

薬剤師:「ジェネリックがありますが、ジェネリックにしますか」
僕:「うーん、じゃあお願いします」
薬剤師:「えっと、おしっこが出にくいんですか?」
僕:「え、いいや。」
薬剤師:「おしっこは大分出るようになりましたか?」
僕:「え、いや、それは前から普通に・・・」
薬剤師:「じゃあ、今日はおしっこが出やすくなる薬が出ていますので、どうぞぉお大事に。」

この会話は、無駄であるります。一々結石で石を早く出すために先生が・・・と説明するのも大変だし、それよりも人の話を聞く風ではないですし。ただ、これが薬局で服薬指導の点数になるわけでしょうから、この会話が成されることは、仕方が無いことかもしれません。仕方が無い。。服薬指導が何点なのか、知りませんが(明細見ればわかるけど)、その医療費が国庫から出ていると思うと、納税者としては不条理かもしれません。プリントアウトされた薬の説明には、「タムスロシン」のジェネリックの写真と、「尿が出やすくなる薬です」と書かれていました。

ほんとに、痛くてしょうがないし、待ってて疲れてしょうもない。望んでいない薬を出されて、しょうもない話でした。