難病に有効なことがわかったタウリン グラム薬価8.5

ミトコンドリア病(指定難病21)に、タウリン

今日のニュースで、すごい発表がありました。

 川崎医科大は19日、砂田芳秀教授(神経内科学)の研究グループが臨床試験(治験)に使った既存薬が、国指定難病・ミトコンドリア病の国内初の治療薬として承認される見込みになったと発表した。ミトコンドリア病で最も発症頻度が高い「MELAS(メラス)」の患者がアミノ酸の一種タウリンを大量に服用することで、体のまひや視覚異常といった脳卒中に似た発作を抑えられるという。厚生労働省が近く正式承認後、保険適用される。

 既存薬は大衆薬最大手・大正製薬(東京)の「タウリン散」。心不全や肝機能が低下した患者に対して1日3グラム(1グラム8・5円)が処方されているが、メラスの患者が治療薬として使う場合は1日12グラムを飲む。
(山陽新聞 https://www.sanyonews.jp/article/871171)

ミトコンドリア病にタウリンが有効で、近く保険適応されるとのことです。

ミトコンドリア病は、指定難病ということで、難病情報センターのウェブから引用すると、症状の重い方もいらっしゃるみたいです。

ミトコンドリア病(指定難病21)
1.ミトコンドリア病とはどういう病気ですか?
ミトコンドリアは全身の細胞の中にあってエネルギーを産生するはたらきを持っています。そのミトコンドリアのはたらきが低下すると、細胞の活動が低下します。たとえば、脳の神経細胞であれば、見たり、聞いたり、物事を理解したりすることが障害されます。心臓の細胞であれば、血液を全身に送ることができなくなります。筋肉の細胞なら、運動が障害されたり、疲れやすくなったりします。
ミトコンドリアの働きが低下することが原因である病気を総称してミトコンドリア病と呼んでいます。多くは生まれながらにしてミトコンドリアの働きを低下させるような遺伝子の変化を持っている方が発症しますが、薬の副作用などで二次的にミトコンドリアのはたらきが低下しておきるミトコンドリア病もあります。

2.この病気の患者さんはどのくらいいるのですか?
イギリスやフィンランドの統計では、10万人に9〜16人という報告があります。しかしミトコンドリア病は症状が多彩で、軽い症状の方もたくさんいると予想され、すべての患者さんがきちんと診断されている状況ではありません。これらの数字よりもっと多い可能性があり、全体像がまだ見えていないと言ってもいいかもしれません。
(難病情報センター: http://www.nanbyou.or.jp/entry/194)

すごいというのは、難病の治療薬としての、タウリンの薬価です。

タウリン 薬価 1グラム 8.5

昨今、オーファンとか、難病とか専門領域とかを扱う製薬企業が何かと注目されていて、製薬に携わるプロフェッショナルもそういう道を目指すという人が増えてきていました。

近年、画期的な薬が発売され、今まで治療できなかった難病患者さんにも朗報があったりしたのですが、問題になったのが薬価でした。

何百万円、何千万円もする薬が、何かと話題になりましたよね。

それに比べると、タウリンは、薬価8.5です。

ところで、何年も前の記事がヒットしましたが、それでも10円くらいでした。

 

朝日新聞のグラフを見ると、

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発作回数が服用後にゼロになっている患者さんもいらっしゃいました。朗報ですよね。
私はこの病気に詳しくないので、評価するのも軽率かもしれませんが、個人的にすごいニュースだと思いました。

 

 

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仕分け

先日、政府の行政刷新会議の「政策提言仕分け」で、ジェネリック医薬品の使用促進などについての提言がなされました。ジェネリックの促進…って、もう20年以上前から言われていることだけに、熱い反対議論などもないし、何らかの既得権限を守るような団体からの反論もないし、「まあ、そりゃそうだよね…。」というような雰囲気が大勢を占めておりました。

ついでに、「このほか、」という形で「市販類似医薬の自己負担割合の引き上げ試行を」という意見が取りまとめられたと報道されております。

ジェネリックの促進であれば、古ぼけた提言かもしれませんが、実は、この「このほか」で議論された市販類似薬の自己負担の引き上げというのは、かなり、かなり、重要なニュースで、大きなインパクトが実はあるのです。

市販薬というのは、いわゆる、薬局やドラッグストアで買える薬です。たとえば、ルルとか、キャベジンとか、色々ありますよね。 

自分で買い求めることができる市販薬の中には、医師から処方される処方薬と同じものがあります。

たとえば、何でも良いのですが、よくテレビのCMでやっている、僕自身も愛用している「ガスター10」を例にあげると、「ガスター」というのは商品名で、物質の名前(一般名)はファモチジンという物質です。 医療用医薬品(処方薬)では、先発品のガスターと、複数の企業から発売されているジェネリック品がそれぞれの商品名で存在します。つまり、ファモチジンという物質は、医療用医薬品と、OTC(市販薬)が存在するわけです。

では、値段を見てみましょう。医療用医薬品の先発品であるガスター錠10mgの薬価は1錠あたり31.1円です。同じく医療用医薬品ではありますが、数十社から出ているジェネリック品でおそらく一番低薬価であるブランドの一つは「ファモチジン錠10mg」(共和薬品)で、9.6円です。薬価は保険で請求しますので、実際には国が、もっと高い部分を負担していることになります。

そして市販薬(OTC)のガスター10ですが、たまたま見つけたものは、6錠包装で931円ですから、1錠当たりにすると155円です。

ガスター錠10mg  薬価 33.1円
ファモチジン錠10mg 薬価 9.6円
ガスター10  市販販売価格 155円
つまり、胃がムカムカして、すっきりしたい時に、ドラッグストアで「ガスター10」を購入することも、大変すばらしいことではありますが、医院でお医者さんに「ファモチジン錠10mg」を処方してもらえば・・・・ということになるわけです。

このほか、乳酸菌を摂取してプロバイオティクスをしたければ、OTCの乳酸菌製剤を購入する、あるいは毎日数百円かけてヨーグルトを食べるのも良いのですが、お医者さんにビフィズス菌製剤を処方してもらえば、1錠6円位ですみます。風邪の季節でレモン何個分のビタミンCの薬も、お医者さんでアスコルビン酸を処方してもらえばOK。仕事のし過ぎで過労、タウリン1000ミリグラム摂りたいなら、お医者さんでアミノエチルスルホン酸散を処方してもらえば、1000ミリグラム、つまり1グラム薬価10.2円です・・・・・・。

お医者さんに処方してもらえば、少ない負担で必要な医薬品が手に入り、あとは国が負担してくれる…これが、世界に誇る日本の保険薬価制度だと、思いませんか!? 納税者であれば、この恩恵を受けるべきだと、常日頃思っているのです。
今回の政策提言仕分けでは、このように市販薬で存在するものまで、ぶっちゃけ、国が面倒見なくても良いんじゃないの? ということかもしれません。市販薬で求められる同じ成分の医療用医薬品の、自己負担を上げようというのです。確かに、言う事はわかりますよね。市販薬で買えるし、実際に買っている人も居るわけだから、自己負担を引き上げても良いのでは?ということですよね。 上の例で言えば、ファモチジン錠10mgの自己負担を上げろということですよね、なぜならガスター10が存在するわけだから。。

じゃあ、この恩恵は受けられなくなる?? そうなるかもしれません。ビタミン、乳酸菌、タウリン、ロキソニン、ガスター、その他その他、薬価の恩恵を受けたい方は、今のうちにお医者さんにかかりましょう!? 的な風潮になるのでしょうか、そのうちに。。笑えません。
そしてさらに踏み込んだ議論。それは、OTCで存在する医薬品の、薬価削除です。 つまり、ドラッグストアで売っている薬は、保険薬価収載から削除するということですよ。

想像してください。

歯医者さんで、虫歯の治療をしました。「はい、では、一応痛み止めにロキソニンを処方しておきますね…」という会話が、「はい、ではドラッグストアでロキソニンSか、何か好きなのを勝手に買ってください…」になるかもしれません。 

風邪をひいて、内科で抗生剤を処方されました。「抗生剤を出しておきますので、胃を保護するために、ドラッグストアでビオフェルミンSを買って飲んでください

こんな時代がすぐそこまで来ているかもしれません。
・・・・そして、ここからが、もっと踏み込んだ話に。ドラッグメジャーがこの制度改革を実は注目しているのです。その理由は? またの機会に。