鎮痛薬で痛い。

先週末、米国ファイザー社は、同社が申請していた麻酔鎮痛剤が正式にFDAから却下されたことを発表しました。ファイザーといえば、グローバルでNo.1の製薬企業で、その研究開発費だけで、日本国内の製薬企業の全売り上げを上回るといわれています。そんなファイザーにとっては、申請品目がひとつ却下になったとしても、次、またその次の品目で稼げばおつりが出るくらい儲かるだろうし、それほどダメージを受けるニュースではないかと思います。

しかしながら、自社開発品ならともかくこの麻酔鎮痛剤Remoxyにいたっては、開発ベンダー、つまりアライアンス企業が数社加わっているので、その開発ベンダーにとっては、明らかな痛手、ぶっちゃけ、痛いです。

製薬株は日本においても昔からシテ株化しやすいというか、いわば投機筋的には新薬の噂で跳ね上がるし、また暴落します。投資家の国アメリカではもちろんそれはさらにオーバーヒートします。事実、6月の米国のバイオ関連の株の動きを見ていると、値上がり率で上位はPharmacyclics Inc. (PCYC) 47.9%を皮切りに、Oncothyreon Inc.( ONTY) 42.0%、ついでAriad Pharmaceuticals Inc. (ARIA) 30.5%に対して、逆にワーストランカーになっているのがPain Therapeutics Inc.(PTIE) -61.1%、Intercell Ag Sponsored Adr( INRLY) -48.5%、さらに次いでDurect Corp. (DRRX) -42.0%です。

特筆すべきは、ワースト3社のうちの2社において、このファイザー社のRemoxy関連株ということです。RemoxyはPain Therapeutics Inc.とDurect Corp.が開発してファイザーがアライアンスを組んで申請まで漕ぎ着けた候補物質なのです。ファイザー社の株価に特にダメージはないものの、この2社がバイオ関連株のワーストを固めてしまっているという、不名誉な結果になってしまいました。投機筋にとっても、FDAの申請は常にウォッチングしている材料であるのは当然のことで、一度REJECTEDのニュースが流れますと、株価の下落は避けられません。この2社にとっては、本当に痛い、ニュースなのです

「痛い」といえば、皮肉にもこの薬剤は、鎮痛剤なのです。鎮痛剤が、こけて、リアルに痛い。洒落にもなりません。

ところで、これらの麻酔系の鎮痛剤ですが、評価診断の上で、有意差をつけるパラメーターの採り方がとても難しいと言われております。何しろ、基準は「痛み」です。痛みをスケール化して、その数値を統計上で解析しなければなりません。また、痛みの原因も様々で、ここの患者の痛みが何に由来するのかにもよります。麻酔科系のこの手の薬剤は、様々な痛みに対応した効き目を有する場合が多いです。慢性疼痛でもがん性疼痛でも、リウマチでも、とにかく痛みを取り除くというミッションをもった薬剤です。

知り合いの麻酔科の先生に聞いたことがあるのですが、とにかく「痛い」という、訴えは、本当に多いそうです。原因がわからない痛みもたくさんあります。痛みは、すべての活動を邪魔しますよね。痛いままでは、何もできません。ですから、医師はとにかく、痛みを取り除くことが優先されるそうです。

どのくらい痛いのか、ということになるのですが。痛みのスケールに関しては、専門的なものも色々あるのでしょうが、一番親しみやすいのが、フェイススケールですよね。

フェイススケール

上のスケールでは、ファイザーは2番、そのアライアンス先は5番でしょうか・・・・。

ペインの薬でよく聞くものとして、コデイン、ヒドロコデイン、また緩和ケアでは、当然モルヒネを使うのですが、いわゆる頭痛や腹痛や、種々の訴えにも使う、さらにはNSAIDと呼ばれる、いわゆるバファリンやセデス、ロキソニンやボルタレンなどの鎮痛剤をも対象に取って代わるような、薬剤・・・。もし、本当にNSAIDのマーケットまで進出できるのであれば、Remoxyにかかる期待は相当のものがあったと思います。期待が大きく株価も上がり、その後下がる。したがってこれほどまでの下げ幅にもなるわけです

いずれにしても、日本では大手に候補物質を提供するようなベンチャーは数社しかありませんし、FDAよりも早く機構を通過することも考えにくいので、海の向こうの話…という風になってしまいます。しかし、これによってグローバルでまた数パーセントのリストラということになると、関係は全くないわけではないかと思います。グローバルのパイプラインのウォッチングも、企業選びには必要になってきますね。・・・企業選びって、株ではなくて、転職先です。 もちろん。

広告