新薬の開発にはお金と情熱が必要です。
厚生労働省は4月8日、一定の要件を満たす画期的な新薬などの承認審査期間を半年短縮する「先駆け審査指定制度」について、医薬品5品目を指定しました。
- 第一三共「Valemetostat」(予定効能:再発または難治性の末梢性T細胞性リンパ腫)
- 武田薬品工業「イキサゾミブクエン酸エステル」(ALアミロイドーシス)
- 武田薬品工業「TAK-925」(ナルコレプシー)ー精神神経用剤
- 楽天メディカルジャパン「ASP-1929」(頭頸部がん)
- エーザイ「E7090」(FGFR2融合遺伝子を有する切除不能な胆道がん)――。
5品目中、4品目がオンコロジーです。
お気づきかと思いますが、武田、第一三共、エーザイと名だたる国内老舗大手製薬企業に肩を並べる形で、楽天メディカルジャパンの存在が目を引きます。
楽天メディカルジャパンは、アメリカ、カリフォルニア州サンディエゴにありますRakuten Medica Incの日本法人です。会長でCEOは楽天の三木谷浩史さんです。
三木谷会長は、2018年、「光免疫療法」を開発していたアメリカのアスピリアン・セラピューティクス社に出資し、Rakuten Aspyrian, Inc.(楽天アスピリアン)をつくりました。
楽天アスピリアンは、2018年の年末にシリーズCの調達ラウンドで、SBIグループおよび楽天株式会社などを主要投資家とする1億3400万ドルの資金調達を得て、光免疫療法による高精度ながん治療法の開発を更に進めました。
2019年3月に、社名をRakuten Medical, Inc. に変更しました。
ガン克服。生きる。
CONQUERING CANCER
三木谷会長の熱意が伝わるキャッチです。三木谷会長ががん治療薬のベンチャーに出資した背景ですが、本人がフォーチュン誌のインタビューで語っています。膵臓がんを患われたお父様のことがきっかけのようです。
お金と情熱。まさに新薬を開発することに必要な2つの要素が、そこにあるのです。
このインタビューで、三木谷会長はミッキー・三木谷と呼ばれていますね。英語圏ではこういう名前のほうが覚えてくれると思います。
インタビュアーが三木谷会長を紹介し、日本の偉大な起業家で、通信メディア、インターネットのオーソリティであること。そして、なぜ今回、バイオ企業に出資を決めて、Rakuten Medicalを作ったのか? などなど、質問をしており、三木谷会長が経緯と情熱を語っています。
今回先駆け審査指定に指定された、ASP-1929についてです。
予定される効能:頭頸部癌
① 本剤は、上皮成長因子受容体(EGFR)を標的とした抗体医薬品で
あるセツキシマブ(遺伝子組換え)と、レーザー装置(PIT690)
による非熱性赤色光(690 nm)により活性化されて物理的に細胞
膜を破壊する作用を有する色素である IR700 を結合させた抗体
薬物複合体。本剤を用いた光免疫療法は、新規原理に基づく治療
法。
② 対象疾患である頭頸部癌は生命に重大な影響がある重篤な疾患
である。
③ 再発頭頸部扁平上皮癌患者を対象とした海外臨床試験において
完全奏効例も認められ、高い有効性が期待できる。
④ 第Ⅲ相試験実施中。世界に先駆けて日本で承認申請される予定。
ということです。海外でファストトラックで開発をして、それを日本に持ってくるときに、先駆け審査指定に通せば、治験に関わる時間、そして日本人が少なくて済む気がします。
今まで、IT企業とか、ソニーとかがヘルスケアに参入するも、どことなく頼りなかったことがあるのですが、今回は本物の予感がします。
医者の世界、治験の世界、厚労省の世界などなど、他業界から参入するには、高い障壁と独特のビジネス環境にあった製薬業界ですが、デジタルやAIなどは、海外のレギュレーションを持ち込み、日本のお役所を認めさせているような戦略が目立ちます。
良いことです。
今度ばかりはかなり食い込まれるような気がします。数年前に楽天が電子ブックのkoboを買収したときに、「別に日本でやらなくても良い」と言っていたのを思い出します。
こういう会社が増えてきそうですね。製薬企業は大丈夫でしょうか。
ああ。楽天メディカルもし立ち上げるなら、弊社から人材送りたいな。