『○○のために動けない』は本音じゃない。(セルフ・ハンディキャッピング)

転職できたのに、しなかった人たち〜自分に嘘をついた”数年後のリアル 第2話


49歳、Bさん。
地方都市に家を構え、娘がふたり。上の子は高校受験を控えている。
仕事では外資系で長くMRを経験し、社内でも毎年表彰。
──正直、実力も実績もある。

けれど、彼にはずっと夢があった。
「バイオベンチャーで、勝負してみたい」
40代前半の頃から、ずっとそう言っていた。


しかし、実際には動かなかった。

理由は決まってこうだ。
「子どもが小さいし、受験もあるし…今は全国勤務なんてできないよ」
「単身赴任してまで、無理はできないよ」
「家も買ったしな」

──けれど、これ、本当に“理由”だろうか?


実際、家を買っていても、
子どもがいても、
単身赴任しながらキャリアアップしている人は山ほどいる。
むしろ、それがスタンダードな世界でもある。

Bさんの本音は、こうだ。

「今の会社では評価されている」
「ここなら自分の立場がある」
「でも、外の世界に行ったら、自分はどうなるかわからない」

つまり──怖いのだ。
うまくいかないかもしれない未来が。
今の実績が“会社限定のもの”であるかもしれない現実が。


だから、「子どものために今は動けない」という理由を、自分に与えてしまう。

特別な事情がある場合は除き、

これは心理学で言う「セルフ・ハンディキャッピング」。
自分の行動を制限する“言い訳”を、先に用意しておくことで、挑戦しない自分を正当化する現象だ。

「もし失敗しても、それは自分のせいじゃない」
そう思うことで、プライドを守っている。

もちろん、何か他に、言えない事情があるのかもしれない。そこまでは、こちらの感知するところではないし、知る由もない。ただ、数多くの人が、その状況でもキャリアアップのために単身で転職している。そういう世界なのだ。

残ることを選ぶなら良い。

でも、いつも転職情報を血眼に探しているので、残ることを選んでいるということではないのだろう。


でも、時間は待ってくれない。
気づけば49歳。
希望勤務地、年収維持、希望業種──
これらをすべて叶えられる案件は、もはや“奇跡”に近い。

それを知りながら、それでも、Bさんは思っている。
「もうすぐ、いい案件が出るかもしれない」と。


🌱それでも、未来を変えるのは「今」しかない。

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Bさんに実力がないわけじゃない。
ただ、過去の自分にとらわれすぎているだけだ。

たとえ勤務地を広げられなくても、
転職の可能性をゼロにする必要はない。
やり方を変えれば、可能性はまだ残っている。

「今の自分にできる挑戦は何か?」
──それを見つけることで、また未来は動き出す。


💡登場用語解説:

  • セルフ・ハンディキャッピング:あらかじめ失敗の言い訳を用意しておくことで、自尊心を守ろうとする心理。
  • 認知的不協和:現実と理想が矛盾するときに、そのギャップを埋めようとして、都合よく理由を作り出してしまう傾向。

どうでも良いことですが、前回からのシリーズの文体は「である調」になっています。普段はデスマス調です。