🏡 【小説風】檜風呂の夢と、まさかの辞令

──変化を避けた人が、いちばん変化に弱くなる話。


【1】檜(ひのき)の香りと、地元の風

前野涼太、39歳。
MRとして新卒からずっと同じ会社。
「転職? いや、今さらないでしょ」
そう言いながら、年下の後輩たちに昔の経験談を自慢げに語るのが最近の楽しみだった。

今年、念願だった家を建てた。
場所は地元・山梨の郊外。駅からは遠いが、両親の家から車で15分。

「将来のこと考えたら、親のそばがいいだろう」
「子どもも自然に触れさせたいしさ」
「妻も“もう引っ越しは最後にしてね”って言ってるし」

決め手は、こだわりの檜風呂だった。
「毎日帰ったらこの香り…最高だな」
なんて呟きながら、完成した家を見上げていた。

風呂上がり、リビングに備え付けたワインセラーから、地元のシャルドネを1本取り出した。ああ、MRになってよかった。会社も安定しているし、このままこの家で定年をむかえよう。

そんな事をしみじみと想う毎日であった。


【2】ある朝、社内メールに現れた“それ”

異動の内示は、5月の月曜。
なにげなく開いた社内メールに、こう書いてあった。

「西日本支店 配属内示:前野涼太」

…え? 西日本?

一瞬、頭が真っ白になった。
間違いかと思って、人事部に電話した。

「はい。営業本部長からの指示でございます。
前野くんみたいなベテランが必要なんだよ。頼んだよ!とのことでございます。」

人事部門の人々はいつも軽い口調。悪気はないのだろう。
でも、心の中で何かが音を立てて崩れた。

引越しはもう勘弁という、妻。

今一番手がかかる小さな子供。

様々な事柄が脳裏に浮かんでは消え、走馬灯のようにぐるぐるとまわった。


【3】“安定”だと思っていたものの正体

夜、檜風呂に入った。
ザバーンと流れ出た並々と張られた湯の音が消えると、シーンとした浴室を湯気だけがただよった。
だが、香りは何も感じなかった。

家を買ったばかり。ローンは35年。
両親の介護がもうすぐ始まりそうで、妻も正社員を辞めたばかり。
子どもはこの春から小学校。

「なんで今なんだよ……」

その時、はじめて気づいた。
これまでの“安定”って、全部「会社のおかげ」だったことに。

会社がよしと言えば家も建てられるし、
会社が言えば転勤にも行かなきゃいけない。

自動車保険も会社、共済会も会社、家を建てるときの不動産屋関連も、会社の口利き、なにをするにも、会社、会社の15年だったのだ。

15年積み上げたものの正体は、
「自分で選ばなかった15年」だったのかもしれない。

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【4】変化を避けた人が、変化に一番弱い

結局、前野は西日本への異動を受け入れた。
だが心には、ぽっかりと穴が開いたままだ。

結局、単身赴任を選択せざるを得なかった。

その異動先の新支店で出会った、転職経験のある後輩が、こう言った。

「前野さんって、ずっと同じ会社ですよね。すごいです。でも、他も見てみたいと思ったことないんですか?」

何も答えられなかった。

すごい? いやいや、考えたこともなかっただけの話だ。

地方都市の駅前の、保険会社と製薬会社が多く入る雑居ビルの入り口を出て、裏に周り、ポケットから出したセブンスターの箱の端をポンポンん叩き、出てきた1本を咥えて、ジッポで火をつけた。単身赴任後、喫煙も復活した。

ため息と一緒の煙がもくもくと放たれると、山梨の家の檜風呂が毎回脳裏をよぎった。そういう時には、妻に電話して、子供の声も聞いた。セブンスターが復活している事を、もちろん妻は知らない。


未来の“想定外”に備えるということ

安定したい。ずっと同じ場所で暮らしたい。
──その気持ちは、とてもよくわかる。

だけど、人生はそんなに甘くない。
こだわりの檜風呂すら、辞令ひとつで「使えない設備」になることがある。

変化を避ける生き方は、
いざ変化がきたときに、いちばん脆くなる。


「安定を求める人ほど、変化に弱くなる」

──今の自分が、動ける自分かどうか。
ほんの少し、問いかけてみてもいいかもしれない。


ところで──

もしあなたが、前野涼太の立場だったらどうしますか?

15年勤めた会社からの突然の転勤辞令。
家も建てた。檜風呂も入った。親も安心してる。
けれど「想定外」は、待ってくれなかった。

🔽 あなたならどれを選びますか?


🔘 選択肢:

1️⃣ 辞令を受け入れ、転勤。会社に従うのが一番安定。
2️⃣ 事情を説明して人事に直談判!残留を希望する。
3️⃣ 思い切って退職し、地元で転職先を探す。
4️⃣ 在宅勤務や異動など“働き方の交渉”を試みる。
5️⃣ 単身赴任で一旦しのぎ、裏で転職活動を始める。


💬 ぜひコメントで、あなたの選択とその理由を教えてください。
きっと、涼太と同じように悩む誰かのヒントになります。



さてさて皆さま、今回は小説風にしてみました。いかがでしたでしょうか。

まあ、勤務地は、MRにとって最も大きな問題であるのです。

転職ご相談、おまちしております。