みなさまお元気ですか。今月のFDAの動きを見ていて、「ついにここまで来たか」という感じです。
AIツール「Elsa」が全庁導入へ ーまあ、時代の流れですよね
FDAが6月2日に発表したのが、生成AI(人工知能)ツール「Elsa」の全庁導入。科学的審査員から調査員まで、要するにFDA職員みんなでAIを使っちゃおうという話です。
マーチン・A・マカリー長官は6月30日までに全センターでAI活用を展開するという、けっこう攻めたスケジュールを発表しています。パイロットプログラムでそれなりの成果が出たんでしょうね。規制当局がここまでAIに積極的になるとは、時代も変わったものです。
この「Elsa」のおかげで、これまで手作業でやっていた面倒な作業が自動化されて、科学者たちがもっと大切な患者の安全性向上に集中できるようになる、とのこと。まあ、理想通りにいくかはやってみないとわかりませんが。
ELSAって結局何なの?
ELSAは大規模言語モデルを活用したAIツールで、読解、文章作成、要約をサポートするように設計されています。副作用情報の要約から安全性プロファイル評価をサポートしたり、ラベル比較を高速化したり、非臨床用データベース開発のためのコード生成まで幅広く対応。最初に使った審査員は「AIが6分でやったことを、普通なら2〜3日かかる」と言ったそうですが、まあ、実際のところは使ってみないとわからないのが正直なところでしょうね。現場からは賛否両論の声も聞こえてきているようですし。
HIV予防薬「Yeztugo」承認 ー6ヶ月に1回でOKって画期的
HIV関連では6月18日に面白いニュースがありました。HIV-1感染リスク軽減のための曝露前予防(PrEP)薬として「Yeztugo(レナカパビル)」が承認されたんです。これ、6か月間の保護効果を提供する初めてのHIV予防薬なんですよ。
従来のHIV予防薬って毎日飲まなきゃいけなくて、患者さんにとっては結構な負担だったんですが、Yeztugoは半年に一度の投与で済む。これは患者さんにとって相当楽になりますし、予防効果も上がることが期待されています。まあ、コンプライアンスが良くなるのは間違いないでしょうね。

Yeztugo(レナカパビル)の開発元と日本展開
Yeztugoの開発元はギリアド・サイエンシズ(Gilead Sciences)で、約20年の開発期間を経て完成した薬剤です。ギリアドは米国市場以外にもグローバルな承認を目指しており、ヨーロッパを含む各地域で申請を提出しているとのこと。日本でも当然申請してくるでしょうが、PMDAの審査がどのくらいかかるかは未知数ですね。ただ、HIV予防領域での画期的な薬剤ですから、優先審査の対象になる可能性は高いでしょう。日本での承認時期は早くても2026年以降といったところでしょうか。価格設定次第では日本市場でもそれなりのインパクトがありそうです。
中国企業への対応 ーデータの完全性は譲れないところ
それから、5月22日には中国企業2社に対するデータ完全性への懸念を受けた措置が発表されました。まあ、このあたりはFDAとしては譲れないところでしょう。グローバルなサプライチェーンの中で品質管理をどう保つかは、どこの規制当局も頭を悩ませている問題ですからね。
で、これからどうなるのか
こうして見ると、FDAが従来の規制手法から先進技術を使った効率的な審査体制に舵を切っているのがよくわかります。AI技術の全面導入と革新的な医薬品の承認が同時に進んでいるわけで、アメリカの医薬品規制も新しい時代に入ったなという感じですね。
特にAIツール「Elsa」の成果は他の規制当局にとってもお手本になるでしょうし、今後の医薬品開発と承認プロセスがどう変わっていくか、業界にいる人間としては興味深いところです。
まあ、変化についていくのは大変ですが、患者さんにとって良い薬がより早く届くようになるなら、それに越したことはありませんからね。

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