太平洋の両岸で起きているドラッグストアの戦い

みなさんお元気ですか?
日本は都議選も終わり、今度は参院選がありますね。地方の選挙は毎週のようにありますし、夏に向けて選挙戦が繰り広げられますね。

戦いといえば、ドラッグストア業界の戦いは熾烈を極めていますね。

アメリカの薬局チェーン業界で、一つの時代が終わろうとしています。Rite Aidは今年5月、なんと2度目の破綻申請を行いました。最初の破綻から復活してわずか7ヶ月での出来事です。

これは単なる一企業の失敗談ではありません。薬局という業界が持つ構造的な問題と、勝者と敗者を分ける残酷なまでの論理を物語っています。そして興味深いことに、太平洋を挟んだ日本のドラッグストア業界でも、似たような力学が働いているんです。

アメリカ:三つ巴からの脱落

アメリカの薬局業界は長らく「Big Three」と呼ばれてきました。CVS、Walgreens、そしてRite Aidです。でも今や、これは二強時代へと移行しています。

Rite Aidの没落は本当に劇的でした。同社は2023年10月に破綻申請し、CVSやWalgreensとの競争についていけず、負債の増大、売上の減少、数百万ドルのオピオイド訴訟和解金に苦しんでいたんです。2022年3月から2023年3月の間だけで約7億5000万ドルの損失を計上していました。

関係ないけど、マンハッタンには結構Duan Readという店がありまして。今でも数店舗あるみたいですが、Walgreensに吸収されたっぽいですね。懐かしい話です。

で、なぜRite Aidは失速したのか。

答えは単純で残酷です。規模の経済で負けたんですよ。

CVSは早くから保険事業に参入し、ヘルスケアのエコシステム全体を押さえにかかりました。Walgreensは積極的な店舗展開と効率化で生き残りを図った。一方のRite Aidは、中途半端な規模で中途半端な戦略を続けました。薬局業界では、「規模がすべて」という法則が容赦なく働きます。仕入れ価格、物流コスト、システム投資、どれをとっても規模が大きいほど有利になるわけです。

日本:静かに進む再編劇

翻って日本のドラッグストア業界を見ると、アメリカほど劇的じゃないんですが、似たような構図が浮かび上がってきます。

現在の売上ランキングを見ると、1位がウエルシアホールディングス、2位がツルハホールディングス、3位がマツキヨココカラ&カンパニーなんです。ここで注目すべきは、3位のマツキヨココカラ&カンパニーが、実はマツモトキヨシとココカラファインという老舗同士の統合によって生まれた巨大企業だということなんですね。

これは生き残りをかけた統合です。個別では1位のウエルシアに対抗できないと判断した両社が、手を組んで巨人に立ち向かおうとしている。アメリカでRite Aidが単独で闘い続けて敗れ去ったのとは対照的ですよね。

でも興味深いのは、株式市場の評価では必ずしもウエルシア・ツルハ連合が圧倒的というわけではなく、マツキヨココカラの時価総額は売上上位2社を合わせても追いつかないほど高く評価されていた時期もありました。これは投資家が、単純な規模の論理を超えた何かを見ているということかもしれません。

地方の雄たちの戦略

日本の面白いところは、全国チェーンだけじゃなくて、地方に根ざした強者が存在することなんです。

九州のコスモス薬品は、地域密着型の戦略で着実に成長を続けています。関東のクリエイトSDは、首都圏の激戦区で独自のポジションを築いている。北海道のサツドラ(サッポロドラッグストア)は、地域特性を活かした品揃えで差別化を図ってるんですね。

これらの企業は、全国制覇を目指すんじゃなくて、特定の地域で圧倒的なシェアを持つことで生き残りを図ってるんです。アメリカのRite Aidが全国チェーンとして中途半端な規模に甘んじたのとは真逆の戦略ですよね。

あとまだ、色々ありますよね。富士製薬のセイムスとか、神奈川の地元だとクリエイトが結構ありますよ。それぞれ特徴あります。

食品が充実しているのは、クリエイトですかね。

でも知り合いに聞くと、店全体の利益率がかなり低いんですよねあの業界は。大変です。

日本がアメリカに教えられること

実は、日本のドラッグストア業界には、アメリカが学ぶべき要素がいくつもあるんです。いやあ、アメリカはもっと日本から学ぶべきことがたくさんある気がしますよ。

丁寧さとか。

まず、地域密着戦略の有効性。アメリカは「全国展開か死か」みたいな発想が強いんですが、日本の地方チェーンは「この地域では絶対に負けない」という戦略で成功してるんですね。コスモス薬品が九州で築いた牙城や、サツドラが北海道で持つ存在感を見ると、必ずしも全国チェーンである必要はないってことがよくわかります。

次に、統合のタイミングと方法。マツキヨとココカラファインの統合は、お互いが弱り切る前に手を組んだ賢明な判断でした。Rite Aidは手遅れになるまで単独行動を続けたんですが、日本企業は「負ける前に手を組む」という発想があるんですね。

そして、商品ミックスの多様化。日本のドラッグストアは化粧品、日用品、食品まで幅広く扱って収益源を分散させています。アメリカの薬局は処方薬への依存度が高すぎるんじゃないでしょうか。

アメリカから日本が学ぶべきこと

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一方で、日本がアメリカから学ぶべき点もあります。そりゃまあ、ありますよ。

CVSのヘルスケア統合戦略は本当にすごいんです。保険事業、クリニック運営、調剤、小売りを一気通貫でやってるんですね。日本のドラッグストアも調剤併設は進んでますが、ここまで包括的なヘルスケアエコシステムを構築できてる企業はまだ少ないです。

デジタル化のスピードも、アメリカの方が圧倒的に速い。処方箋の電子化、オンライン診療との連携、アプリを使った顧客管理など、日本はまだまだ遅れてるんじゃないでしょうか。

薬局業界の宿命

薬局・ドラッグストアという業界には、避けて通れない構造的な課題があるんです。

第一に、商品の多くが規制商品で、差別化が困難だということ。処方箋医薬品はもちろん、一般用医薬品も価格競争になりやすいんですね。

第二に、立地がすべてだということ。便利な場所にある店が圧倒的に有利で、後発組が良い立地を確保するのは本当に困難なんです。

第三に、調剤事業の重要性が増していること。高齢化社会において、調剤併設店舗の収益性は格段に高い。でも薬剤師の確保や設備投資など、参入障壁も高いんです。

これらの要因が複合的に作用して、「規模の経済が働きやすく、一度差がつくと逆転が困難な業界」という特性を生み出してるんですね。

勝者の条件

アメリカと日本の薬局戦争を通じて見えてくる勝者の条件は明確です。

まず、圧倒的な規模を持つか、特定地域で圧倒的なシェアを持つか、どちらかじゃないとダメなんです。中途半端は死を意味するんですね。

次に、調剤事業を含む包括的なヘルスケアサービスを提供できること。単なる商品販売業から脱却して、地域の健康インフラとしての地位を確立する必要があります。

そして最後に、デジタル化への対応。オンライン診療、電子処方箋、アプリを使った顧客囲い込みなど、テクノロジーを活用した差別化が不可欠なんです。

終わりなき戦争

Rite Aidの二度目の破綻は、この業界の厳しさを象徴的に表してるんですね。一度つまずけば復活は困難で、市場は失敗者に二度目のチャンスを与えない。

日本でも、表面的には穏やかに見える業界再編の裏で、激しい生き残り競争が続いているんです。マツキヨとココカラファインの統合は、その序章に過ぎないかもしれません。

でも面白いのは、両国で異なる戦略が成功してることなんですね。アメリカは「規模かさもなくば死か」という世界で、日本は「地域密着でも生き残れる」という選択肢を示している。この違いから、お互いが学べることは多いはずです。

薬局戦争に終わりはないんですが、戦い方は一つじゃない。それが太平洋の両岸で繰り広げられる競争を見ていて感じることなんです。