みなさまお元気ですか。肥満薬の話題は尽きないですね。いやあ、あんまり日本には関係ないかもしれないですけど。
2025年6月、アムジェンが開発中の肥満治療薬「マリタイド(Maridebart cafraglutide)」に関する中間試験データが公開され、大きな注目を集めています。だがその内容は、歓迎一色というわけではありませんでした。
高い有効性と引き換えに、強い副作用と高い中止率──果たしてこの薬は“飲み薬が続々登場する時代”に戦えるのか?
現時点での状況、そしてアムジェンが描く勝ち筋を整理してみました。
✅ マリタイドの特徴:有効性は確か、だが忍容性に難
マリタイドは、GLP-1とGIPのデュアルアゴニストで、ゼップバウンド(リリー)やウゴービ(ノボ)と同様の作用メカニズムを持っています。
2025年6月に公表されたデータによると、
- 肥満患者で最大20%の体重減少(糖尿病ありでは最大17%)
- 高用量群では治療中止率29%
- 特に嘔吐などの消化器症状が高頻度
という結果でした。
しかも、漸増投与群では中止率は7.8%に抑えられたものの、初期段階での「副作用の強さ」が大きな懸念材料となっています。
🕊️ アムジェンが狙う“差別化ポイント”とは?
厳しい見方をすれば、既存のGLP-1製剤(ウゴービ、ゼップバウンドなど)と比べて「より良い」と言えるポイントは限られています。ただし、アムジェンは次の3つを逆転の切り札として提示しています。
① 月1回〜隔月投与の利便性
マリタイドは半減期が長く、月1回または隔月での投与が可能。これが実現すれば、週1注射が主流の中で、明確な利便性の差別化になります。医療現場でのアドヒアランス向上にも期待。
② 高い体重減少効果
ウゴービやゼップバウンドと同等か、条件によっては上回る可能性のある「20%の体重減少」。また、データ上は体重減少の「停滞」が見られなかった点も注目されています。
③ 肥満“以外”の適応拡大戦略
マリタイドは現在、心不全、心血管疾患、睡眠時無呼吸症候群などにも応用可能性を見据えた開発が進行中。単なる減量薬から「慢性疾患のトータルマネジメント薬」へのポジショニングを狙っています。

🔮 発売時期と今後の見通し
- 現在、**Phase 3(MARITIMEプログラム)**が進行中。
- データ公表は2027年初頭が見込まれています。
- 同年後半のローンチを想定し、準備が進められています。
Amgenは2024年に「Obesity Business Unit(肥満事業部)」を立ち上げ、すでにマーケットへの投資を始めています。ローンチ初期は慎重に展開しつつも、心疾患などの適応拡大に向け、数年単位での勝負に挑む構えです。
💊 飲み薬時代、どう立ち向かう?
ゼップバウンドやウゴービに加えて、現在開発が加速しているのが飲み薬型の肥満治療薬です。特にリリーやノボ、さらには中国・インド企業などが開発を進めており、「注射じゃない」ことが最大の利点になる時代が近づいています。
では、マリタイドはどう戦うのか?
答えは「確かな効果+長期投与+多疾患対応」の3点セット。
つまり、ただのダイエット薬ではなく、「生活習慣病の中長期コントロール薬」としての地位を確立できるかが、マリタイドの生き残りのカギとなります。
🧬 アムジェンという企業の強み
アムジェン(Amgen)は、米カリフォルニア州に本社を置くバイオ医薬の巨人。
- 年間売上:約300億ドル規模(2024年)
- 主力領域:がん、免疫、心血管疾患
- グローバルパイプラインにおいて、マリタイドを中核に据えた肥満領域への本格進出を明言
資本力・開発力・販売網を備えたアムジェンが、「肥満×慢性疾患」の複合市場でどう地位を築くか。2027年はその試金石となる年です。
「ただ痩せるだけの薬はもういらない」
そんな空気が漂う中、マリタイドの戦略は“長く効く、重症にも効く”を軸にしています。
2025年時点ではまだ競合に一歩遅れて見えるかもしれません。ですが、“ポストGLP-1”の次世代を考える上で、アムジェンの一手は注視する価値があります。
👉 長期投与が可能な高効果薬
👉 慢性疾患への波及効果
👉 そして、医療現場と患者の「負担軽減」
もしこれらが噛み合えば──月1回の注射が、“飲み薬以上に選ばれる”未来も、あり得るのです。

コメントを投稿するにはログインしてください。