みなさまお元気ですか。世の中、混沌としていますね。薬の世界も、混沌としています。一寸先は闇であったり、一寸先は光だったりします。
キャリアもそれぞれ、みなさん、理想通りには行かないものです。良い時もあれば、悪い時もあります。しょっちゅう悪い時ばかりだったら、問題です。そんな方は、ぜひ、ご相談いただければと存じます。きっとお役に立てるかと思っております。
さて、そんななか──
アメリカでも、まさに“薬の世界”をめぐって、大きな波が立っています。
CDC、つまり疾病対策センター。そのなかでも、ワクチン政策を決める要の組織「ACIP」の全メンバーが一斉に解任された、というニュースをご存じでしょうか。
もちろん、このブログでも取り上げております。
新たに任命されたのは、たった8人。しかも、いずれも「既存のワクチン政策に一石を投じてきた人物たち」ばかり。
この人事は、当然ながら大きな波紋を呼んでいます。
ワクチン行政の信頼を揺るがす──
それとも、これまで語られてこなかった“別の真実”に光を当てる転換点となるのか。
この急な総入れ替えが、どのように受け止められているのか。
いま、アメリカではどんな議論が巻き起こっているのか──
その主要な論点を整理してみましょう。
従来のACIPは、医療界の中心を担う専門家たちで構成されてきました。大学病院の小児科医、公衆衛生の教授、感染症の研究者など、どのメンバーも豊富な実務経験と学術的なバックグラウンドを持ち、ワクチンの安全性や有効性に関する最新のエビデンスをもとに推奨を行っていました。
🧾 ACIPとは?
ACIPは、
Advisory Committee on Immunization Practices(予防接種実施諮問委員会)
の略です。
米疾病対策センター(CDC)に設置されている外部の専門家委員会で、どのワクチンを、誰に、どのタイミングで接種すべきかを検討・勧告する役割を持っています。
このACIPの推奨は非常に強い影響力を持ち、以下のような場面に反映されます:
- 医師の診療ガイドライン
- 学校や職場での接種要件
- 保険適用の可否(米国ではACIP推奨が公的保険カバーの基準)
- 州ごとの義務化政策の参考
つまり、アメリカにおける「接種すべきワクチンのリスト」を決める重要な委員会なのです。
ではそのACIPの大再編が、どんな波紋を呼んでいるのか──「何が問題視されているのか?」に進みます。
一方、今回任命された8名は、そのバックグラウンドや立ち位置が大きく異なります。中には、ワクチン政策の“推進一辺倒”に疑問を呈してきた人物や、mRNAワクチンに対して慎重な立場をとってきた研究者も含まれています。
| 項目 | 旧メンバー(17名) | 新メンバー(8名) |
|---|---|---|
| 主な専門領域 | 小児科、公衆衛生、感染症、疫学 | 統計学、倫理学、神経栄養、救急医学など多様 |
| 所属 | 大学病院、CDC、州の保健局など | 一部は民間研究機関や独立系シンクタンク |
| ワクチンに対する立場 | 安全性と集団免疫の観点から接種を推奨 | ワクチンの“過剰推奨”への疑問を唱える声も |
| 政策への関与スタイル | 既存の枠組みに基づく合意形成 | 規制や枠組みそのものへの批判的視点もあり |
| 利益相反の懸念 | 製薬企業との関係性が定期的に精査されていたが、批判もあった | 任命直後から「偏りがあるのでは」との指摘も |
こうして見ると、単なる顔ぶれの変化ではなく、価値観の交代とも言える構造的な違いが浮かび上がってきます。
旧メンバーが「制度の中で最適解を出す」タイプの専門家だったのに対し、新メンバーには「そもそも制度設計に問題があるのでは?」と疑問を投げかけてきた人物が含まれている──この変化は、CDCの発する“推奨”そのものの意味を変えてしまうかもしれません。
🌟 注目の新メンバーたち──CDCの“顔”はこう変わった
では、具体的に新たに任命されたメンバーにはどんな人物がいるのか?
ここでは特に注目度の高い3名をピックアップし、その背景や考え方を見てみましょう。

念の為にお伝えしますが、写真と本文とは、全く関係ありません。じゃあ載せるなよ? そうですね、検討します。
▶︎ Martin Kulldorff(マーティン・クルドーフ)
疫学者・統計学者/元ハーバード大学医学部教授
感染症のアウトブレイク予測やワクチンの有効性分析などで知られる生物統計の第一人者。
2020年に世界的に注目された「グレート・バリントン宣言(Great Barrington Declaration)」の共同起草者であり、ロックダウンや集団ワクチン戦略に対して懐疑的な立場を取っていたことで賛否を呼びました。
彼の参加は「より多様な疫学的視点の導入」として歓迎する声がある一方、「公衆衛生のコンセンサスを崩す存在」として警戒する声も少なくありません。
▶︎ Robert Malone(ロバート・マローン)
医師・ワクチン研究者/mRNA技術の初期研究者
mRNAワクチン技術の“創始者のひとり”とされる人物。
COVID-19ワクチンが普及する中で、自身が開発に関わったmRNA技術に対して、安全性の懸念を公に発信したことで一躍“論争の人”となりました。
SNSやメディアでの発言が過激と見なされることもありますが、科学者としての実績は確か。
ケネディ政権が彼を選んだことは、「体制外からのチェック機能」を重視した人選であると見ることもできます。
▶︎ Retsef Levi(レトセフ・レビ)
MITスローン・スクール教授/リスク分析・ヘルスケアアルゴリズムの専門家
医療データ解析やサプライチェーンの最適化で世界的に知られるMIT教授。
COVID-19以降は「ワクチン接種後の有害事象データの解析」にも取り組み、特に若年層へのmRNA接種に慎重な立場をとってきました。
現場主導ではなく、「数字から政策を組み立てる」タイプの専門家として、CDC委員としては異色の存在とも言えます。
これら3名に共通しているのは、「現在の制度に対する問題提起」という姿勢。
ワクチンそのものを否定しているわけではないものの、リスクの説明責任や政策の柔軟性を強く求めるスタンスが際立っています。
このような人物たちがCDC諮問委員に加わるということは、「ワクチン=絶対善」だった従来の語り方が、今後はより相対化されていくことを意味しているのかもしれません。
⚠️ 何が問題視されているのか?──議論のポイント整理
今回のACIP人事刷新に対して、医療界からは賛否が割れています。
特に以下の3つの論点が、現在のアメリカで大きく議論されています。
■ ① 専門性の“偏り”の懸念
新たな8名のメンバーは、それぞれ実績ある専門家ではありますが、必ずしも感染症・小児医療・公衆衛生の第一線にいる人物ばかりではありません。
また、「ワクチンの安全性への懐疑的な立場」を共有する人物が複数選ばれており、「あえて似た傾向の人を選んだのではないか」という指摘も出ています。
■ ② ワクチン行政の“中立性”は維持されるのか
ACIPは政府の一機関ではなく、あくまで「外部の専門家による中立的助言機関」として運営されてきました。
今回のように政権が全員を解任し、自ら選んだ新しい専門家で構成し直すというのは、「科学的根拠」よりも「政権の意向」が前面に出てしまうリスクをはらんでいます。
アメリカ小児科学会(AAP)などはすでに、ACIPとは別に独自の接種推奨を行う準備を進めていると報じられています。
■ ③ CDCの“信頼”そのものが揺らぐ可能性
ワクチンに限らず、CDCは感染症対策や公衆衛生に関する国の「司令塔」です。
その中核であるACIPのあり方が急激に変わったことで、「今後CDCが出す推奨やガイドラインは、どの程度信頼できるのか?」という問いが、医療現場にも一般市民にも突きつけられています。
ただ一方で、今回の変化を「科学の再検証」と前向きにとらえる声もあります。
ワクチンの副反応、データ公開の不透明性、政治と製薬の距離──パンデミックで可視化されたこれらの問題に、ようやくメスが入ったのではないかという見方です。

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