みなさんこんにちは。お元気ですか?
バンコクでは今日も午後になると、もれなく夕立。
タイに来たばかりの頃は、スコールがザッと降って、空がケロッと晴れる——まさに南国って感じだったんですが、ここ数年はというと、なんだかしとしとと長引く雨。
気づけば、東南アジアなのに梅雨みたいな空模様。
アイスコーヒーを飲みながら、ふと日本の6月を思い出したりします。
そんな空模様の中、昨日書いた「dapiglutide」の記事が意外と読まれていてびっくりしました。特にアメリカからのアクセスが日本より多かったんですよ。日本語なのに。
やっぱり「GLP-1」とか「GLP-2」とかって、見出しに入れまくると、AIが拾ってくれるんでしょうかね。ということで、今日もGLP-1ネタ、いってみましょう。
🧪注射だけがGLP-1じゃない時代に
GLP-1製剤っていうと、やっぱり最初に思い浮かぶのは注射。オゼンピック(semaglutide)とか、マンジャロ(tirzepatide)とか、みんな週1回注射ってやつ。
注射の課題って何?
だけど、注射ってやっぱり面倒なんですよね。結構昔からありますけどね。僕の親戚も結構昔から打っている人、居ます。
物理的な問題:
- 注射への恐怖感(トリプタノフォビア)
- 冷蔵保存の制約(2-8℃)
- 注射手技の学習コスト
- 針刺し事故のリスク
- 廃棄物処理の問題
心理的・社会的な問題:
- 「注射=病気」というイメージ
- 外出時の携帯の困難さ
- 人前での投与への抵抗感
- 長期継続への心理的ハードル
実際、糖尿病治療でも「インスリン導入の遅れ」って問題があって、患者さんが注射を嫌がって治療が後手に回るケースが多いんです。GLP-1も同じ壁にぶつかっていますねこれは。
そこに現れた救世主「リベルサス」
そこに現れたのが「リベルサス」(Rybelsus)。同じくセマグルチド(semaglutide)だけど、なんと飲み薬。
「え?GLP-1ってペプチドでしょ?飲んでも胃酸で分解されるんじゃないの?」
って思った方、正解です。だから画期的なのかもしれないです。
「SNAC(sodium N-[8-(2-hydroxybenzoyl)amino]caprylate)」っていう吸収促進剤と一緒に、セマグルチドを腸じゃなくて胃の中から直接吸収させるという、ちょっと強引な技術で突破したんです。
SNACの仕組みをもう少し詳しく
SNACって何者かというと:
- 胃のpHを局所的に上げる:胃酸による分解を防ぐ
- 胃粘膜の透過性を一時的に高める:ペプチドが通り抜けやすくなる
- プロテアーゼ阻害:酵素による分解も防ぐ
- カプリル酸由来の脂肪酸:細胞膜との親和性を高める
つまり、胃の中に「一時的なペプチド吸収専用ルート」を作り出すイメージ。めちゃくちゃ巧妙です。
🚪でも、リベルサスには限界がある
リベルサス、たしかに「飲めるGLP-1」としてすごいんですが、弱点もあります。
服薬の制約が厳しすぎる
- 朝起きてすぐ、空腹で飲まないといけない
- 飲んだら30分は飲食禁止(水もダメ)
- 他の薬との併用タイミングも制限
これ、実際の患者さんには結構きついんですよ。朝のコーヒーすら30分待たないといけない。「薬を飲むために生活を変える」感が強すぎる。
無意識に、水とか飲んじゃいますよね。
効果と副作用の問題
- 効き目は注射よりやや劣る:バイオアベイラビリティが0.4-1%程度
- 副作用(吐き気など)もやっぱりある:むしろ胃への直接作用で強く出ることも
- 個人差が大きい:胃の状態や胃酸分泌能力で効果にバラつき
コストの壁
リベルサス、日本では3mg錠で1錠約500円、14mg錠で1錠約1,600円。月額だと15,000円〜50,000円くらい。注射薬よりは安いけど、まだまだ高い。
ということで、「これでGLP-1の飲み薬は完璧だ!」とは、ちょっと言えない。でも、この分野、着実に進化してます。
🌱次世代の経口GLP-1製剤、来てます
最近、各社が注目しているのが
**「小分子GLP-1受容体作動薬」**
つまり、飲んでも壊れない、ペプチドじゃないGLP-1風の物質を作ろうという動きです。
🔬例:ペプチドじゃないGLP-1作動薬
Pfizer – danuglipron
- 2022年に第2相試験開始
- 効果はあるけど、やや副作用が重かったらしく、現在開発中断中🛑
- でも「proof of concept」は示せた
vTv Therapeutics – TTP273
- 小分子のGLP-1受容体アゴニスト
- まだ初期段階だけど、経口投与可能
- だけどだけど、、vTv TherapeuticsはTTP273の開発を優先プログラムから外し、2021年には主要プログラムをTTP399(Cadisegliatin)に絞るための事業再編を発表
Oramed Pharmaceuticals
- 特殊なカプセル技術で胃酸から薬を保護
- インスリンの経口化でも実績あり
- 直近の動きとしては、2025年2月11日(発表日)に、Oramed PharmaceuticalsはHefei Tianhui Biotech Co., Ltd. (HTIT) との合弁会社であるOraTech Pharmaceuticals Inc. の設立を発表しました。
Rani Therapeutics
- 「RaniPill」という革新的デバイス
- カプセルが腸で開いて、針なし注射のように薬剤を投与
- 「飲む注射」という新コンセプト
- いくつかの重要な進捗と今後の予定は以下の通りです。
- RT-114(肥満症治療薬):
- GLP-1/GLP-2二重アゴニストであり、経口セマグルチド(RT-116)と同様に肥満症治療への応用が期待されています。
- 2025年半ばに第1相臨床試験を開始する予定です。これは、Rani Therapeuticsにとって肥満症分野での最初の臨床検証となる重要なステップです。
- 前臨床データでは、皮下投与と同等のバイオアベイラビリティを示しており、有望視されています。
- RT-111(経口抗IL-12/23抗体):
- 乾癬などの自己免疫疾患の治療薬として開発されています。
- すでに第1相臨床試験で良好な結果(高いバイオアベイラビリティと良好な忍容性)を発表しています。
- Celltrionとの提携により、第1相試験の結果が良好であれば、CelltrionがRT-111の全世界での権利を取得する交渉権を有しています。
- RT-102(骨粗鬆症治療薬):
まあ、まだ数年かかりそうですね。
デバイス系の新技術
IntelliCap(Medimetrics)
- pH感応性の放出制御
- 腸の特定部位で薬剤放出
- IntelliCap(インテリキャップ)は、Medimetrics Personalized Drug Delivery B.V. という企業によって開発された、経口投与型のスマートカプセル(インテリジェントカプセル)システムです。
- これは、通常の薬のカプセルとは異なり、体内で薬を放出するタイミングや場所を制御できるという点で画期的な技術でした。
- 主な特徴と機能は以下の通りです。
- 体内環境のモニタリング: カプセル内部にセンサーが搭載されており、消化管内のpH(酸性度)や温度などをリアルタイムで測定できます。
- 薬物放出の精密制御: 測定した体内環境データに基づいて、カプセルが薬物を放出するタイミングや量を正確に制御できます。これにより、薬物が最も吸収されやすい場所で、最適な時間に放出されるように設計することが可能です。
- 個別化医療への貢献: 患者さんの消化管の動きや個々の薬物動態に合わせて薬の放出を調整することで、薬の有効性を最大化し、副作用を最小限に抑える「個別化された薬物送達」を実現することを目指していました。
- データ収集: 体内のデータを収集し、薬の研究開発や臨床試験に役立てることもできました。
- 用途(想定されていたもの):
- バイオアベイラビリティの向上: 吸収されにくい薬でも、最適な場所で放出することで吸収効率を高める。
- 副作用の軽減: 特定の場所でのみ作用させたい薬を、その場所でのみ放出することで全身的な副作用を抑える。
- 定時放出: 特定の時間に薬を放出する必要がある場合(例:夜間の喘息薬など)に利用。
- 臨床研究: 薬物の吸収経路や放出特性を詳細に調べるためのツール。
- 現状について:
- Medimetricsは過去にIntelliCapの開発で注目を集め、様々な賞も受賞していました。しかし、2025年6月現在、Medimetricsに関する新しい情報やIntelliCapの商業化に関する具体的な進展は、残念ながらあまり見られません。企業のウェブサイトや最新のニュースリリースが見当たらない状況です。
- これは、新薬の開発と同様に、革新的な医療機器の開発と市場投入には非常に長い時間と莫大な費用、そして規制当局の承認が必要であるため、プロジェクトが中断されたり、再編されたりするケースも少なくないためと考えられます。
- したがって、IntelliCap自体は非常に革新的なコンセプトでしたが、現時点でこの技術が広く医療現場で利用されているという情報はありません。

EnteraGel(3D Matrix)
- ゲル化技術で薬剤を保護しながら吸収促進
- EnteraGel(エンテラゲル)は、3D Matrix株式会社が開発を進めていた製品の一つです。
- 3D Matrixは、米国マサチューセッツ工科大学(MIT)発の「自己組織化ペプチド」技術をプラットフォームとして、様々な医療分野での応用を目指している企業です。この自己組織化ペプチドは、特定の条件下でナノ構造を形成し、ゲル状になる特性を持っています。
- EnteraGelは、この自己組織化ペプチド技術を応用した製品で、主に消化器系の疾患への応用が想定されていました。具体的な用途としては、放射線性直腸炎(RP)や炎症性腸疾患(IBD) など、消化管の炎症や損傷の治療・保護を目的として開発が進められていたようです。
- 自己組織化ペプチドの特性により、EnteraGelは以下の機能を持つと考えられます。
- 保護層の形成: 消化管の内壁にバリアを形成し、刺激物や炎症から保護する。
- 組織再生の促進: 損傷した組織の修復や再生を助ける。
- ドラッグデリバリーシステム(DDS): 薬物を徐々に放出したり、特定の場所に届けたりするキャリアとしての応用。
- ただし、2025年6月現在、3D Matrixの公式サイトを確認すると、EnteraGelという名前での具体的な製品情報や、その臨床試験の進捗に関する最新の情報は、以前ほど明確には掲載されていないようです。同社のパイプラインには、「組織再生」の項目で放射線性直腸炎(RP)や炎症性腸疾患(IBD)向けの「自己組織化ペプチドによる開発」が引き続き記載されており、この技術がこれらの疾患に応用されていることは示唆されていますが、EnteraGelという特定の製品名での詳細なアップデートは確認できませんでした。
- したがって、EnteraGelは3D Matrixの自己組織化ペプチド技術を基盤とした、消化器系疾患向けの製品概念または開発プロジェクトであったと言えます。
これらの技術、GLP-1だけじゃなくて、GIPやGCGRとのトリプル作動薬も、将来的には飲み薬になるかもしれません。
バイオテック企業の挑戦
Zealand Pharma
- dasiglucagon(グルカゴン受容体拮抗薬)の経口化研究
- GLP-1との合剤も視野
- 昨日の記事です!!!
Peptron(韓国)
- ペプチド安定化技術に特化
- 様々なペプチドホルモンの経口化を狙う
- Peptron(ペプトロン)は、韓国に拠点を置くバイオ医薬品企業です。特にペプチド医薬品の開発に強みを持っています。
- 会社概要と特徴
- 設立: 1990年代後半に設立され、韓国のKOSDAQ市場に上場しています。
- 専門分野: ペプチド合成技術と徐放性製剤技術を基盤とした医薬品開発に特化しています。
- ビジョン: 革新的なペプチド医薬品を通じて、患者さんの生活の質向上に貢献することを目指しています。
- 主要な技術プラットフォーム
- Peptronの強みは、以下の2つの主要な技術プラットフォームにあります。
- 高純度ペプチド合成技術:
- 医薬品として使用する高純度のペプチドを効率的かつ安定的に合成する技術を持っています。これにより、研究から製造まで一貫した品質管理が可能です。
- ペプチドは、タンパク質よりも小さく、低分子化合物よりも特異性が高いという特性を持ち、様々な疾患に対する新しい治療薬として注目されています。
- SmartDepot™ 技術(徐放性製剤技術):
- これは、薬物を体内で長時間にわたって安定的に放出させることを可能にするドラッグデリバリーシステム(DDS)です。
- この技術を用いることで、注射頻度を減らし、患者さんの負担を軽減することができます(例:毎日注射が必要な薬を週に1回や月に1回に減らすなど)。
- この技術は、特に慢性疾患の治療薬において、服薬遵守率の向上や治療効果の安定化に大きく貢献すると期待されています。
- 主なパイプライン(開発中の薬剤)
- Peptronは、上記の技術プラットフォームを活用し、糖尿病、パーキンソン病、がんなど、幅広い疾患領域で複数のパイプラインを開発しています。
- GLP-1受容体作動薬(糖尿病/肥満症):
- 特に注目されているのが、GLP-1受容体作動薬の徐放性製剤です。これは、肥満症や2型糖尿病の治療薬として世界的に需要が高まっている分野です。
- 週1回投与型やそれ以上の期間にわたる徐放性製剤の開発を進めており、市場競争力を持つことを目指しています。
- 例として、PT320(パーキンソン病治療薬としても開発中)が挙げられます。
- パーキンソン病治療薬:
- 神経保護作用を持つペプチドを用いた治療薬の開発も積極的に行っています。特に、GLP-1受容体作動薬がパーキンソン病の神経変性抑制に効果がある可能性が示唆されており、この分野での研究開発を進めています。
- PT320は、この領域でも期待されています。
- がん治療薬:
- がん細胞の増殖を抑制したり、がん免疫応答を活性化したりするペプチドを用いた治療薬の研究開発も行っています。
- 今後の展望
- Peptronは、独自の技術プラットフォームと多様なパイプラインを通じて、ペプチド医薬品市場でのプレゼンスを高めようとしています。特に、徐放性製剤技術は、患者さんの利便性を向上させるだけでなく、薬の有効性を安定させる上でも重要であり、グローバルなパートナーシップの獲得にも繋がる可能性があります。
- 新薬の開発は長いプロセスであり、各パイプラインの臨床試験の進捗や承認状況が今後のPeptronの成長を左右する主要な要因となります。
Emisphere Technologies
- Eligen技術:薬剤キャリアシステム
- バイオ医薬品の経口化に特化
- Emisphere Technologies(エミスフィア・テクノロジーズ)は、かつて存在した米国のバイオ医薬品企業で、特に経口ドラッグデリバリー技術の開発に特化していました。
- 主な技術:Eligen® SNAC技術
- Emisphere Technologiesの主要な技術プラットフォームは、Eligen® SNAC(Sodium N-(8-[2-hydroxybenzoyl]amino)caprylate)技術と呼ばれるものでした。この技術の目的は、通常は経口投与が困難な薬物(特にタンパク質、ペプチド、ヘパリンなどのバイオ医薬品)の消化管からの吸収を促進することにありました。
- 通常、これらの大きな分子は消化酵素によって分解されたり、消化管の壁を通過できなかったりするため、注射による投与が必要とされていました。しかし、Eligen® SNAC技術は、以下のようなメカニズムでこの課題を克服しようとしました。
- 吸収促進剤としての機能: SNACは、薬物と複合体を形成し、消化管の細胞膜の透過性を一時的に高めることで、薬物が吸収されやすくすると考えられていました。
- 酵素分解からの保護: SNACが薬物を包み込むことで、消化酵素による分解から薬物を保護する効果も期待されていました。
- この技術が成功すれば、患者は注射の代わりに薬を飲むだけで済み、利便性の向上と医療費の削減に大きく貢献すると期待されていました。
- 注目された製品:リベルサス® (Rybelsus®)
- Emisphere TechnologiesのEligen® SNAC技術が最も成功した例として、リベルサス® (Rybelsus®) が挙げられます。これは、ノボ・ノルディスク(Novo Nordisk)が開発・販売している経口GLP-1受容体作動薬で、2型糖尿病の治療に用いられます。
- リベルサス®は、GLP-1アナログであるセマグルチドをSNACと共に配合することで、経口での吸収を可能にした画期的な薬剤です。それまでGLP-1受容体作動薬は全て注射剤でしたが、リベルサス®の登場により、経口薬の選択肢が生まれました。
- 企業買収による終焉
- Emisphere Technologiesは、このEligen® SNAC技術の価値を認められ、2020年にデンマークの製薬大手ノボ・ノルディスク(Novo Nordisk)によって買収されました。 買収額は約18億ドルと報じられています。
- この買収により、Emisphere Technologiesは独立した企業としての存在を終え、その技術プラットフォームはノボ・ノルディスクに統合されました。ノボ・ノルディスクは、リベルサス®の成功に加えて、この吸収促進技術を将来の経口薬開発に活用していく意向です。
- Emisphere Technologiesは、経口ドラッグデリバリー技術であるEligen® SNAC技術の開発に注力した企業でした。その技術は、特に「飲むGLP-1受容体作動薬」であるリベルサス®の成功に大きく貢献しました。2020年にノボ・ノルディスクに買収されたため、現在は独立した企業としては存在しませんが、その技術は引き続き世界の医薬品開発に貢献しています。
🧬さらなる未来:遺伝子治療という選択肢
もっと先の話ですが、「薬を飲み続ける」んじゃなくて、**「一回の治療で体がGLP-1を作り続ける」**という発想も出てきています。
Gene therapy approaches:
- AAV(アデノ随伴ウイルス)ベクターでGLP-1産生細胞を作る
- 筋肉注射一回で数年効果が続く可能性
- でも安全性の検証はこれから
Cell therapy:
- iPS細胞からGLP-1産生細胞を作って移植
- 理論的には半永続的な効果
- でもまだまだ研究段階
🍽️患者が望むのは「飲んで、痩せるだけ」
「痩せる薬」というキャッチーさで火がついたGLP-1ブームですが、結局、みんなが望んでいるのはシンプルです。
理想の「痩せる薬」の条件
- 注射じゃなくて飲めること
- 食事制限しなくてもいいこと
- 副作用が少ないこと
- 安いこと
- 毎日飲まなくてもいいこと(週1回とか)
- 飲み忘れても大丈夫なこと
- 他の薬と一緒に飲めること
現実的な目標設定
でも、正直なところ、この全部を満たす薬ってすぐには出てこないと思います。
短期的(2-3年):
- リベルサスの改良版(服薬制約の緩和)
- 小分子GLP-1の実用化
中期的(5-10年):
- デバイス系技術の成熟
- 複合作用薬(GLP-1+GIP+GCGR)の経口化
- 個別化医療(遺伝子検査に基づく薬剤選択)
長期的(10年以上):
- 遺伝子・細胞治療の実用化
- 完全に新しいメカニズムの発見
💰経済的インパクトも無視できない
GLP-1市場、2023年で約200億ドル、2030年には1,000億ドル市場になるとも言われています。
飲み薬化のインパクト
患者数の拡大:
- 注射への恐怖で諦めていた層が参入
- より軽症の段階での早期介入
- 予防医学への展開
医療費の変化:
- 初期コストは高くても、長期的には糖尿病合併症の予防で医療費削減
- でも薬剤費の膨張は社会問題化する可能性
社会的な変化:
- 「痩せる薬」の一般化
- 肥満に対する社会認識の変化
- 美容・アンチエイジング市場への拡大
🌏地域別の開発動向
アメリカ
- FDA承認が最も早い
- バイオテック投資が活発
- 肥満治療への保険適用拡大
ヨーロッパ
- EMAの慎重な審査姿勢
- 糖尿病治療中心のアプローチ
- 薬価抑制政策の影響
アジア
- 韓国:Peptronなど技術開発企業
- 韓国には、Peptronをはじめとする多くのバイオテック企業がGLP-1関連薬剤の開発に積極的に取り組んでいます。
- Peptronの強み:
- 徐放性製剤技術 (SmartDepot™): Peptronの大きな特徴は、薬物を体内で長時間安定して放出させる徐放性製剤技術です。これにより、注射頻度を減らし、患者の利便性を高めることを目指しています。週1回、あるいはそれ以上の期間持続するGLP-1受容体作動薬の開発に注力しています。
- パイプライン: 2型糖尿病や肥満症向けのGLP-1アナログに加え、GLP-1受容体作動薬の神経保護作用に注目し、パーキンソン病治療薬としての開発(例: PT320)も進めています。これは、GLP-1受容体作動薬の新たな適応症開拓という点で注目されます。
- 市場競争力: ノボ・ノルディスクやイーライリリーといった大手製薬会社の製品が市場を席巻する中で、Peptronは、より利便性の高い製剤や、新たな作用機序・適応症を持つ薬剤で差別化を図ろうとしています。特に、肥満症治療薬としての市場ポテンシャルは非常に高く、Peptronもこの分野での開発を強化しています。2023年時点では、セマグルチドやチルゼパチドの4週製剤の開発にも取り組んでいるとの報道がありました。
- 韓国のGLP-1開発全体: Peptron以外にも、ProGen、GI Biome、Olix Pharma、Inventage Lab、Glaceumなど、多くの韓国企業がGLP-1関連の肥満症治療薬の開発を進めています。グローバル市場での競争力を持つために、技術革新と差別化に注力しています。
- 中国:巨大市場だが規制が複雑
- 中国は2型糖尿病患者数が世界最多であり、肥満人口も増加しているため、GLP-1受容体作動薬にとって非常に大きな市場ポテンシャルを秘めています。
- 市場の現状:
- ノボ・ノルディスクのオゼンピック(セマグルチド注射剤)は2021年に中国で承認され、売上を大きく伸ばしています。
- イーライリリーのチルゼパチド(Mounjaro/Zepbound)も2024年に2型糖尿病治療薬として中国で承認されました。
- ノボ・ノルディスクは、肥満症治療薬Wegovy(セマグルチド注射剤)の中国での承認を2025年中に目指しており、限定的な発売を計画していると報じられています。
- 中国国内企業もGLP-1受容体作動薬の開発に積極的であり、イーライリリーは中国のパートナーであるイノベント・バイオロジクス社と別の肥満治療薬であるマズドゥチドを共同開発しています。
- 規制の複雑さ:
- 日本:慎重な承認プロセス、でも市場ポテンシャルは大きい
- 日本も、糖尿病患者数や肥満人口が多く、GLP-1受容体作動薬の市場ポテンシャルは非常に大きい国です。しかし、承認プロセスは慎重に進められる傾向があります。
- 市場の現状とポテンシャル:
- 日本では、ノボ・ノルディスクのオゼンピック(注射剤)、リベルサス(経口剤)、イーライリリーのトルリシティ(注射剤)などが既に承認・販売されています。肥満症治療薬としては、サクセンダ(リラグルチド注射剤)が使用可能です。
- GLP-1受容体作動薬の市場は拡大傾向にあり、特に体重減少効果への注目が高まる中で、今後さらなる成長が見込まれます。米国糖尿病学会のガイドラインでも、心不全や慢性腎臓病を併発する患者へのGLP-1受容体作動薬の早期投与が強く推奨されており、日本の診療ガイドラインにも影響を与える可能性があります。
- 中外製薬が創製し、イーライリリーに導出した経口GLP-1受容体作動薬「OWL833」(低分子化合物)は、2025年~2026年のグローバル申請が見込まれており、日本市場での登場も期待されています。これは食事・水分摂取の制限がないという点で、既存の経口GLP-1製剤(リベルサス)との差別化が図られています。
- 慎重な承認プロセス:
新興国
- ジェネリック展開への期待
- アクセス問題の解決が課題
- 医療インフラとのマッチング
GLP-1製剤は「注射→飲み薬→?」の時代へ
ということで、GLP-1製剤、今はまだ「注射メイン」だけど、飲み薬もどんどん出てきています。
リベルサスだけじゃない。次は小分子かもしれないし、遺伝子治療かもしれないし、あるいは、GLP-1じゃない別の道が出てくるかも?
今後の注目ポイント
- Pfizerのdanuglipronが復活するか
- Rani Therapeuticsの「飲む注射」が実用化するか
- リベルサスの服薬制約を解決する新技術が出るか
- GLP-1以外の新しいターゲットが見つかるか
- 遺伝子治療が現実的なオプションになるか
どのみち、飲んで痩せる未来は、確実に近づいています。
個人的には、「完璧な薬」を待つより、今ある選択肢をうまく使いながら、新しい技術の登場を楽しみに待つのがいいんじゃないかと思います。
また何か面白いGLP-1系ニュースがあれば、ゆるっと書きますね。それでは、今日はこのへんで。
参考情報
- リベルサス添付文書
- ClinicalTrials.gov
- 各社IR資料
- バンコクの夜更けに書いたので、間違いがあったらすみません🙏
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