マッキンゼーが4100億ドルと言うなら、製薬AIは本物かもしれない

みなさまお元気ですか。

すでにバンコクで平常運転を始めていますが、やっと疲れが取れました。今日はとある近代的な複合施設でリモートワークしていましたが、昼休みにオフィスから出てくる若いタイ人のハイキャリアな人々。本当にオサレで、活動的。女性はみんなヘソ出し普通。いやあ、日本のオフィス街で働いている女性がヘソ出しとか、ないですよね。またこれが、タイの良い感じなんです。

さて、そんなタイの自由でフレキシブルな空気に触れながら、ふと考えたのが「変化への適応力」について。日本は慎重で堅実、タイは柔軟でアグレッシブ。でも実は、今アメリカの製薬業界で起きていることは、まさにこの「タイ的な柔軟性」が求められている話なんです。

コロナ禍で世界中のサプライチェーンがガタガタになったとき、「え、マスクすら作れないの?薬も届かないの?」という現実に直面しました。あの時、多くの人が思ったはずです。「もっと柔軟で、もっと賢いシステムが必要だ」と。

そして今、アメリカの製薬業界が静かながらも大きな変革の波に乗っている。その中心にあるのが、AIを活用したサプライチェーンの劇的な進化だ。単なる効率化の話ではない。これは業界全体の価値創造モデルを根本から変える可能性を秘めた動きなのです。

サプライチェーンがね、結構大変ですよね。何気に。
特に、日本は大変です。何しろ、人材がいない。いなすぎる。

4100億ドルという巨大なインパクト

AIが製薬セクターにもたらす年間価値は、2025年までに3500億ドルから4100億ドルに達すると予測されています。

マジマジ?? マッキンゼー!!

この数字、ちょっと盛りすぎじゃないかと思わず疑いたくなるほどの規模です。アメリカの製薬業界全体の売上高が年間約5000億ドルなので、要するに「AIで業界の8割分の価値を生み出せる」と言っているわけです。

さすがコンサル、風呂敷の広げ方が豪快ですね。でも、その風呂敷の中身を見ると、意外にも説得力があるから困ります。85%以上のバイオファーマ企業の経営陣が、2025年にサプライチェーンの強靭性を構築するためにデータ、AI、デジタルツールに投資していると回答しています。つまり、業界のほぼ全員が「これはヤバい、乗り遅れたら終わる」と思っているということです。

なぜ今、サプライチェーンなのか

製薬業界のサプライチェーンは、他の業界とは比較にならないほど複雑です。まるで、スパゲティボンゴレです。

原薬の調達から製造、品質管理、流通まで、一つの薬が患者の手に届くまでには無数のステップがあります。そして、そのどこかで問題が起きれば、人命に関わる事態になりかねない。

まさに

「一寸の虫にも五分の魂」ならぬ

「一粒の錠剤にも五分の責任」です。

36%の経営陣がインフレや経済不況を心配し、37%がサプライチェーンの強靭性を最優先課題に挙げています。要するに、業界の7割以上が「今のままじゃヤバい」と思っているわけです。コロナ禍で「マスクすら作れない先進国」という笑えない現実を目の当たりにした後では、製薬会社も危機感を抱くのは当然でしょう。

地政学的リスクの高まりも拍車をかけています。「中国で作った薬に頼り続けて大丈夫?」という問いに、誰も自信を持って「Yes」とは言えない時代になりました。

AIが変える具体的な風景

では、AIは実際にサプライチェーンをどう変えているのでしょうか。

まず挙げるべきは、リアルタイム監視能力の革新です。AIはリアルタイムモニタリングを強化し、不規則性や潜在的リスクが発生した際にそれを検出することで、製薬サプライチェーンのセキュリティを確保します。

従来なら人間が気づかなかった微細な異常も、AIが瞬時にキャッチします。温度管理が必要な薬品の輸送中に、わずかな温度変化があれば即座にアラートが発せられ、品質劣化を未然に防ぐことができます。

さらに注目すべきは、スマートパッケージング技術の普及です。RFID(無線周波数識別)やNFC(近距離無線通信)などのスマートパッケージング技術が、ますます採用されています。これにより、薬品の製造から患者の手元に届くまでの全工程を、デジタルで完全にトレースできるようになります。

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McKinseyが描く運用革新の可能性

McKinseyは、バイオファーマ運用における生成AIの機会を、年間40億ドルから70億ドルと推定しています。

今度は控えめな数字を出してきましたが、これでも十分に巨額です。「さっきの4100億ドルはどこに行った?」と突っ込みたくなりますが、まあ、そこが、結構あたっちゃうのが、コンサルの凄いところです。

だからみんな、キメ顔でLinkedinに並んでいるのです。

でも、この数字の背景には深刻な現実があります。製薬業界は長年、R&Dに巨額の投資をしながらも、成功率の低さに悩まされてきました。新薬開発には平均10年以上の時間と数十億ドルの費用がかかる一方で、承認にたどり着くのは開発開始時の候補の10%以下。これを「宝くじより確率が悪い投資」と皮肉る業界関係者もいるほどです。

そんな業界にとって、AIは救世主に見えるのかもしれません。少なくとも、「今度こそ当たりそう」と思わせてくれる希望の光なのでしょう。

国際協力という新しい動き

個々の企業の取り組みを超えて、国家レベルでの動きも興味深いものがあります。少し前ですが、バイデン政権の時にパンデミック準備・対応室を設置し、米国、EU、インド、日本、韓国が協力してバイオファーマサプライチェーンの強靭性を強化することを目標としているのがありました。

これは、製薬業界のサプライチェーンがもはや一国だけでは管理できない、グローバルな課題になっていることを物語っています。同時に、AIによる最適化も国境を越えた協力なしには実現できないということでもあります。最近それがどうなったのか、よくわかりません。

Ken’s eye:変革の本質を見抜く

今後、ちょくちょく、このKen’s eyeというのを出していきます。

ノリ的には、週刊文春よりは優しいです。

この動きの本質は何でしょうか。表面的には「最新技術でサプライチェーンを効率化しました」という、よくある企業PR話に見えます。しかし、実態はもっと深刻で、同時にもっと面白い変革らしいです。

従来の製薬業界は「ブロックバスター」と呼ばれる大型薬品を軸に、規模の経済を追求してきました。要するに「みんな同じ薬を飲んでくれ」戦略です。

ていうか、ブロックバスターとかも、すでにもう昔の概念ですよね。すみません。

でも、個別化医療の時代を迎え、今や「あなた専用の薬を作ります」が求められています。これは工場のラインを根本から変えるレベルの話です。

さらに興味深いのは、これが製薬業界の「民主化」でもあることです。これまでは大手企業だけが持てた

高度なサプライチェーン管理能力を、AIによってスタートアップでも手にできるようになる。

まるで「YouTuberがテレビ局と同じことができるようになった」みたいな話です。結果として、業界の勢力図が大きく変わる可能性があります。「AIを制する者が製薬を制す」なんて言葉が生まれる日も、そう遠くないかもしれません。

この変革は始まったばかりです。2025年という近い将来に向けて、製薬業界のサプライチェーンは今まで見たことのない速度で進化し続けるでしょう。そして、その変化は単に効率性の向上だけでなく、新しい治療選択肢の創出、医療アクセスの改善、そして最終的には人類の健康向上に寄与する可能性を秘めています。

AIとサプライチェーンの融合。一見地味に見えるこの変革が、実は医療の未来を左右する重要なファクターになろうとしています。

まるで卓球のカットマンが勝つ試合みたいな。知らんよね。

出典: https://www.mckinsey.com/industries/life-sciences/our-insights/generative-ai-in-biopharma-operations-unlocking-value-across-the-value-chain https://www.biopharmadive.com/news/biopharma-supply-chain-resilience-priorities-2025/735892/ https://www.pharmaceutical-technology.com/comment/ai-pharmaceutical-supply-chains/