みなさまご機嫌いかがですか。僕は2度の日本出張と、諸々、こちらの役所関連の手続きなどで、全く本調子ではないです。が、そろそろギアを上げなければならない感じです。さて、僕が停滞していても、世の中は動いています。今回は、FDAが承認した“希少疾患RRP向け初の免疫療法”について。 久々のFDAネタです。
再発性呼吸器乳頭腫症(RRP)とは?
RRPは「Recurrent Respiratory Papillomatosis」の略で、ヒトパピローマウイルス(HPV)が原因で気道に良性の腫瘍ができる病気です。
一見“良性”と聞くと軽そうに聞こえるかもしれませんが、実際はかなり厄介です。
- 声帯にできれば声がかすれる
- 気管にできれば呼吸が苦しくなる
- 繰り返し増殖するため、何度も外科的に切除しなければならない
米国では年間およそ1,000件の新規症例が報告される希少疾患であり、患者さんにとっては「治療してもまた戻る」の繰り返し。これまで承認された薬による治療法は存在せず、外科手術だけが唯一の選択肢でした。
今回の承認のポイント
FDAが承認したのは PAPZIMEOS(ペプジメオス)。
これはRRPに対して初めて承認された免疫療法です。
承認の背景にはいくつか注目すべきポイントがあります。
- 米国で初めてのRRP治療薬承認
これまで外科手術しかなかった領域に薬が登場したこと自体が歴史的です。 - オーファンドラッグ(希少疾病用医薬品)指定
患者数が少ない疾患に対して、研究開発を後押しする制度。 - ブレークスルーセラピー(画期的治療薬)指定
臨床的に大きな改善を示す可能性がある薬に与えられる指定。 - ランダム化比較試験を経ずに承認
CBER所長のヴィナイ・プラサド博士が強調した通り、
「医薬品承認に必ずしもRCTが必要ではない」という理念を体現する承認。
プラサド博士!! キーター!!!!!!
さらに、CBER治療製品局長代理のビジェイ・クマール博士は、
「繰り返しの外科手術を余儀なくされてきた患者に、永続的な救済をもたらす可能性がある」と述べています。
PAPZIMEOSとは?
今回承認された PAPZIMEOS(ペプジメオス) は、免疫療法の一種です。
仕組みをざっくりいうと:
- 体の免疫細胞(T細胞)を刺激し、HPV由来の異常な細胞を攻撃する
- 外科的に腫瘍を切り取るのではなく、体の免疫を利用して病気を抑え込む
- 再発を繰り返すRRPに対して「根本的な解決」を期待できる
Precigen社が開発した薬で、同社は遺伝子・細胞治療の分野に強みを持っています。今回の承認は、同社にとっても初の大きな成果となります。
Precigen
会社名:Precigen, Inc.(プレシゲン株式会社)
設立年:1998年(旧社名:Intrexon Corporation)
本社所在地:アメリカ合衆国 メリーランド州 ガーマンタウン
従業員数:約600人
上場市場:NASDAQ(ティッカーシンボル:PGEN)Wikipedia+5Stockrow+5PR Newswire+5
事業内容
Precigenは、遺伝子および細胞治療に特化したバイオ医薬品企業であり、免疫腫瘍学、自己免疫疾患、感染症などの難治性疾患に対する精密医療を開発しています。
同社は、遺伝子編集技術や細胞治療技術を活用し、患者の未充足医療ニーズに応える革新的な治療法の発見、開発、商業化を目指しています。
主な製品と技術
- PAPZIMEOS(zopapogene imadenovec-drba):成人の再発性呼吸器乳頭腫症(RRP)に対する初の承認治療薬。2025年8月にFDAから承認されました。
- AdenoVerseプラットフォーム:遺伝子治療および細胞治療の開発に使用される同社の技術基盤。
経営陣
- CEO(最高経営責任者):Helen Sabzevari 博士
- COO(最高執行責任者):Rutul R. Shah 氏
- CFO(最高財務責任者):Harry Thomasian Jr. 氏
- 研究担当SVP:Douglas E. Brough 博士
- CMC担当SVP:Bryan T. Butman 博士
- 臨床および規制担当SVP:Amy R. Lankford 博士Precigen+2Precigen+2Precigen+1
沿革
- 1998年:Intrexonとして設立。
- 2019年:Precigenを設立し、ヒト向け遺伝子治療に特化。
- 2020年:社名をPrecigenに変更し、ヒト向け遺伝子編集に注力。
- 2025年8月:PAPZIMEOSがFDAから成人RRPの治療薬として初めて承認。Wikipedia
Precigenは、遺伝子編集技術や細胞治療技術を活用し、難治性疾患に対する革新的な治療法の開発に取り組んでいます。
日本においても、今後の治験や承認の動向に注目が集まる企業です。
株価も、こんな感じです。ナスダックに上場していますので、みなさん、注目です。

承認の根拠
この承認には、いくつかの大きな意味があります。前述の通り、
- 米国初のRRP治療薬承認
これまで外科手術しかなかった領域に、初めて薬が登場しました。 - オーファンドラッグ指定
患者数が少ない疾患に対して研究開発を後押しする仕組み。 - ブレークスルーセラピー指定
臨床的に大きな改善が期待できる薬に与えられる制度。
そして、最も注目すべきは 承認の根拠 です。
「医薬品の承認には必ずしもランダム化比較試験(RCT)が必要ではない」
― FDA生物製剤評価研究センター(CBER)所長 ヴィナイ・プラサド医学博士
電撃復帰を果たしたプラサド博士の、このコメントはインパクト大です。
従来“新薬承認の王道”とされてきたRCTに対し、FDAが別のルートを明確に示したことになります。
さらにCBER治療製品局長代理のビジェイ・クマール博士も、こう述べています。
「これまで繰り返し手術を受けざるを得なかった患者に、永続的な救済の可能性をもたらす」
患者さんにとっては、単なる新薬承認を超えて「生活を変える可能性」を意味する一歩となりました。

Helen Sabzevari 博士のコメント:歴史的瞬間と“AdenoVerse”への自信
PrecigenのCEOである Helen Sabzevari 博士 は、FDA承認を受けて以下のように述べています:
「RRPが病気として認識されて以来100年以上、患者は繰り返し手術に頼らざるを得ませんでした。今日(FDA承認)は歴史的な転換点です。広範な適応を伴うPAPZIMEOS承認により、すべての成人RRP患者が根本原因にアプローチする初めての治療を使えるようになりました。この成果は、私たちのAdenoVerseプラットフォームと、業界標準を上回るスピードで全く新しい治療を“発見から承認まで”迅速に進めたチームの能力を証明するものです。NIHの臨床医、FDA、そして何よりこのブレークスルーを可能にしてくれた患者・家族に深く感謝します。今後すぐに、RRPコミュニティへPAPZIMEOSを届け、症状の“対症療法”ではなく“原因療法”の時代を開きたいと思います。」
このコメントにはいくつか注目点があります:
- “100年以上”という歴史認識から、いかにRRP治療に革新がなかったかを強調。
- **“AdenoVerseプラットフォーム”**という自社技術への自信を明示。
- **“発見から承認までのスピード”**に触れることで、Precigenの開発力・機動力をアピール。
- NIHや患者・家族への謝辞を通して、社会的貢献と倫理的立場を重視。PR NewswireCGTlive™Contract Pharma
ヘレンという人、僕の知っているヘレンが数人いますが、なんかみんな似ている気がする。なんでだろう?
日本での治験や承認には時間がかかると予想されますが、今後の動向に注目したいところです。それにしても、プラサド劇場はまだ終わらないですね。


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