💊 “誰も言わないけど…” その思いが医薬を動かしている話
みなさま、いかがお過ごしですか。
最近「ルッキズム」「見た目で判断しちゃダメ」なんて言葉、よく聞きますよね。アメリカのドラマではもう30年ほど前から、多様な人種・体型が“登場人物”として出てくる。でも、体型や人種については 絶対に触れない のが鉄則。言ったらゲームオーバーだから。
それでも、みんな 思ってる。 「あの人ちょっと…」「やっぱり見ちゃうよね」って。日本で育つと、ついポロッと言っちゃうこともある。でも向こうでは言わないけど、思ってる。本人もきっと一番思ってる。
――その、誰も口にしないけど “みんな思ってる” という力。
実は今、医薬品の世界を動かすほどのインパクトを持っています。
つまり、「痩せたい」という無言の願いが、世界中の製薬企業を本気にさせている。
📈 リリーのプレスによりますと
Eli Lillyは、2025年第3四半期(Q3)で世界売上高が 176 億ドル(前年比+54%) に達したと発表しています。
https://investor.lilly.com/news-releases/news-release-details/lilly-reports-third-quarter-2025-financial-results-highlights-rd
その成長を牽引したのが、肥満・糖尿病治療薬の Mounjaro と Zepbound。
Mounjaro:65.2億ドル(前年比+109%)
Zepbound:35.7〜35.9億ドル(前年比+184〜185%)
さらに、MounjaroとZepboundを合わせた売上が “10 + 十億ドル” に達し、従来の売上王者を脅かす水準にあるという報道も出ています。
――なんというか、小さな“思い”が大きな“ビジネス”になった瞬間です。
🍔 “痩せる薬”がトップに

がん薬でも、希少疾患薬でもなく、「食べる/太る」という毎日の出来事に訴える薬が、いまや製薬王国の中核に育ちつつあります。
“痩せたい”という欲望が、実は巨大な医療市場を作っている。
ただまあ、もちろん、肥満を病気と捉えての話であれば、それも深刻ではあります。
この流れ、我々転職支援・医薬業界の人間にとっても見逃せない変化です。
MRは「注射一本で世界を変える」薬剤を扱う時代へ変化し始めている。
MSLは「生活習慣病」だけでなく「美容/健康管理」という新しい概念を理解せねばならない。
製薬企業においては「がん」から「肥満・代謝」へ主戦場が移るかもしれない、という仮説。
🇯🇵 日本にも関係ある
「でもこれ、日本に関係あるの?」という声もあるかもしれません。
答え:十分あります。
ZepboundほかGLP‑1系肥満薬は日本でも承認・申請中/適応拡張中である可能性。
日本では高齢化+生活習慣病の医療費圧迫が深刻。肥満対策が国の医療経済に影響を与えるレベル。
“痩せる薬”が普及すれば、美容・健康・医療費の観点から大きな社会変化になる可能性。
つまり、海外で起きている“痩せ革命”は、いつか日本でも“波”となって押し寄せてくる。
その時、業界で働く我々が備えておくべき変化も明らかです。
🎭 そして次にセンターステージに立つのは Roche か
追随するメーカーの中でも特に注目を集めているのがスイスの Roche(ロシュ)です。
同社が開発中の CT-388 は、24週間で平均 18.8%の体重減少 を示したとの初期報告があります。
さらに、Roche はこの薬を 2025 年 9 月に 第Ⅲ相試験に進めることを発表。
「次世代 GLP-1+GIP 併用型」という設計で、現行の“痩せる薬”の壁を超える狙いです。
Roche 自身も、「2030 年までに肥満治療分野でトップ 3 に入る」と明言しています。
ステージの中央に立つスポットライトは、いまはまだリリーを照らしています。
けれど、その明かりのすぐ脇で、次の幕の準備をしているのが Roche です。
静かに、でも確実に――センターステージを奪いに来ている。
ただし注意点もあります。
まだ 初期〜中期段階 の段階で、実臨床・長期データ・保険適用など未知の領域が残っています。
既に市場をリードしている Eli Lilly/Novo Nordisk の勢い・ブランド力も強く、追い抜くには時間がかかるかもしれません。
それでも、「次のセンターステージ」は決して絵空事ではないのです。
太りすぎを治す薬が、がんを治す薬を超える。
ちょっと笑えるけど、よく考えると深い。
人類の最大の敵は、ウイルスでも老化でもなく、もしかしたら「食欲」なのかもしれません。でもそれを、科学の力でコントロールできる時代になったというのは、やっぱりすごい話ですね。
焦らず、でもアンテナは高く。
ゆるっと構えてても、時代の波にはちゃんと乗れる。
そんな“ゆるキャリア”で、今日も行きましょう。


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