FDA内部混乱と倫理問題の背景

皆さまいかがお過ごしですか。MLBも終わって、大谷翔平ロスに陥る人もいるのではないでしょうか。やっぱりドジャースはあのチームメイトの絆があってこそ、シナジー効果で世界一になったんですよね。つくづくそう思います。チームが良ければ、自然と良い仕事につながるものです。

逆に、組織がうまく機能しないとどうなるか…。最近のアメリカFDA(米国食品医薬品局)の人事・スキャンダルを見ていると、その怖さを痛感します。トップの人事や方針のちょっとしたズレが、組織全体の信頼や成果に大きな影響を与えてしまうのです。

で、久々にFDAネタ、今が旬のやつをやっていきたいと思います。

FDA(米国食品医薬品局)の新しい薬事トップが、特定の製薬会社を公に批判して訴えられ、倫理問題で辞任に追い込まれた事件 です。

以下にわかりやすく整理します👇


🧩 1️⃣ そもそも誰?

ジョージ・ティドマーシュ(George Tidmarsh)氏

https://www.linkedin.com/in/george-f-tidmarsh-972061b/

  • 元・バイオテック経営者、医師・PhD
  • 2025年7月、FDAの医薬品評価・研究センター(CDER)トップに就任
     👉つまり、米国で新薬を承認する最重要ポジションの一人です。

💬 2️⃣ 何をしたの?

彼は9月にLinkedIn(SNS)上で特定の製薬会社を名指しで批判しました。
会社名は Aurinia Pharmaceuticals
同社のループス腎炎薬「Lupkynis(voclosporin)」について、

「臨床的な有効性が示されていない」
「承認は誤りだった」

…と投稿したのです。

2025年11月、FDAの薬事評価部門(CDER)トップである ジョージ・ティドマーシュ氏 が、特定の製薬会社(Aurinia Pharmaceuticals)の薬をSNSで公に批判しました。この薬はループス腎炎治療薬「Lupkynis(voclosporin)」です。

ティドマーシュ氏は、薬の効果が十分ではないと投稿。これに対し、企業が訴訟を起こし、倫理的に問題があるとしてFDA内部で調査されることになりました。結果、ティドマーシュ氏は辞任することになりました。STATニュース記事はこちら


⚠️ 3️⃣ それの何が問題?

FDA幹部が特定企業の製品を公に批判するのは極めて異例
しかもこの薬はFDAが承認済み
「政府機関としての中立性を損なう」「市場に影響を与える」などの批判が殺到しました。


⚖️ 4️⃣ 訴訟と内部調査

  • Aurinia社が訴訟を提起(11月初め)
     👉「Tidmarsh氏は個人的な恨みで当社を攻撃した」と主張。
     👉 同社は、Tidmarsh氏と過去に対立関係があった投資家 Kevin Tang 氏(現Aurinia会長)との個人的因縁を指摘。
  • FDA・保健福祉省(HHS)は内部調査を開始。
     👉 倫理規定違反や「公的立場を私的目的に利用した疑い」が焦点。

🚪 5️⃣ 結果:辞任・混乱

  • 11月初旬、Tidmarsh氏は「行政休職」となり、そのまま辞任
  • FDA内部では、法的解釈や組織運営を巡って対立もあり、
     STATニュースは「FDAが混乱状態にある」と報道。
     信頼性の揺らぎが懸念されています。
Photo by Los Muertos Crew on Pexels.com

🧠 6️⃣ 背景にある構図

Tidmarsh氏は「自分はFDA内部の方針(特に迅速承認制度)に疑問を呈したために排除された」と主張しています。
つまり本人の言い分は👇

「内部改革を進めようとしたら、企業や政治的圧力で潰された」

一方、FDAや企業側の見方は👇

「個人的感情を持ち込み、職権を乱用した」

──という真っ向対立です。

プラサド
https://www.linkedin.com/in/vinay-prasad-md-mph-0a2640220/

マカリー
https://www.linkedin.com/in/martymakary/


📉 まとめると…

要点内容
問題の発端FDA薬事トップが特定製薬会社をSNSで批判
背景過去の人間関係と政策上の対立
企業の対応名誉毀損などで訴訟提起
政府の対応倫理調査・休職・辞任
現在FDAの信頼性と組織統制への懸念が広がっている

時系列では、こんな感じになります。

日付出来事コメント・背景
2025年春(4〜5月頃)ヴィナイ・プラサド氏がCBER(生物製剤部門)トップに就任学者肌で厳格な承認姿勢を持つ。内部摩擦や方針の違いが懸念されていた。
2025年7月30日プラサド氏が突然退任内部の対立や方針の食い違いが背景と報道。FDA内部に空席が生まれる。
2025年7月中旬〜末ジョージ・ティドマーシュ氏がCDER(薬事部門)トップに就任元バイオテックCEO。マカリー長官が任命。プラサド退任の空席を補う形で登用。
2025年8月9日プラサド氏がCBERトップに復帰辞任からわずか1週間ほどで復帰。組織の信頼回復・倫理安定化のための措置。サイドストーリーとして注目。 (Reuters)
2025年8〜10月FDA内部で組織再編や倫理監査が進行マカリー長官の指揮でCDER・CBER連携強化や人事再編が進む。
2025年11月ティドマーシュ氏がSNS批判・訴訟問題で辞任特定企業薬を批判したことが問題化。倫理調査・訴訟・辞任。FDA全体の信頼に影響。 (STATニュース)

この時系列でわかるように、プラサドの突然の辞任、その間に、マカリーがディドマーシュを選んだみたいな形、つまり、プラサドの影響が無い時期に、敢えて選んできた人、みたいになっているのです。

プラサド氏の突然の辞任で生まれた空白を、ティドマーシュ氏が埋めたものの、SNS批判によって組織の信頼が揺らぎました。

その後、プラサド氏が復帰することで、慎重で科学的な承認姿勢への回帰が意図されているのです。

さあ、このトップのドタバタ劇場はしばらく続くかと思います。