規制と文化がコストを押し上げる:日米欧韓・治験コスト徹底比較
皆様いかがお過ごしですか。しかしまあ、日本は何しろ円安、しかも物価も世界から見たら安い。こりゃみんな、日本に行きたくなりますよね。
で、まあ、物価も安ければ、給料も安い。でもですね、日米欧で見たら、治験にかかる費用が、高いんですよね。なんでだろう。普通は、安くなりますよね。
日本は物価が安いのに治験が高い5つの理由
先に、リストアップします。
① 病院の間接費が異常に高い
治験に伴う管理部門・事務部門の人件費や設備維持費が上乗せされ、間接費が膨らみます。
結果として製薬企業への請求額が高額になり、治験コスト全体を押し上げています。
② 書類文化・コンプライアンス過剰
日本では同意書や手順書などの文書要求が非常に多く、確認や保管にも時間と費用がかかります。リスク回避のために過剰な手続きを積み重ねる傾向があり、効率が低下します。
③ PMDA要求が厳格
安全性確保を重視するPMDAはデータ品質や手順遵守に厳しい基準を求めます。
その対応のため追加試験や手続きが必要になり、期間とコストが増える原因となります。
④ 治験で稼ぐ病院の収益構造
病院は診療報酬中心の収益モデルで、治験は手間の割に利益が出にくい領域です。
そのため治験への投資や効率化が進みにくく、結果的にコストが高止まりします。
⑤ 患者リクルートが難しい
治験参加への心理的抵抗や紹介体制の未整備により、対象患者を集めるのに時間がかかります。
募集に広告やコーディネーターの労力が必要となり、1症例あたりのコストが上昇します。に整っておらず、治験ごとに集患活動を一から行う必要があります。
欧米ではどうなの?
① 病院の間接費が低く透明性が高い
欧米では治験関連費用が明確に区分され、間接費率も標準化され契約時に透明化されています。
結果として病院側の上乗せが少なく、治験コストが合理的に抑えられています。
② 手続きが簡素でデジタル化が進む
電子同意や電子文書管理が普及し、必要書類もリスクベースで最小限に設計されています。
事務作業が減り、スタートアップ期間や運営コストが大幅に短縮されています。
③ 規制は厳格だが柔軟な運用が可能
FDAやEMAは安全性基準は高いものの、リスクに応じて要求を調整し迅速な判断が可能です。
追加試験や手続きが最小限で済み、開発スピードとコスト効率が向上します。
④ 病院は治験を主要な収益源として確立
治験を事業として運営し、専任チームやCRCを常設することで高い効率と利益を確保しています。
そのため追加費用を請求する必要が少なく、スケールによるコスト削減が可能です。
⑤ 患者リクルートが体系化・効率化
患者登録データベース、紹介ネットワーク、広告活用が一般化し迅速に症例を集められます。
募集期間が短く、1症例あたりのコストも低く抑えられます。
まあつまり、
日本:治験は負担で非効率
欧米:治験はビジネスとして最適化
という対比が非常にクリアになりますよね。。。

🌏 おまけ:中韓・東南アジアでは?
① 病院の間接費が低い/柔軟
中国・韓国では病院が治験誘致による収益獲得を重視し、費用が競争的に設定されています。
東南アジアでは設備投資が少ない分コストが低く、交渉も比較的柔軟です。
② 手続きが簡素でスピード重視
書類要求が少なく、審査や契約手続きが迅速に進む国が多いです。
規制より実行を優先する文化が、スタートアップにとっては追い風になります。
③ 規制がまだ発展途上
安全性や品質基準が欧米ほど厳格ではなく、要求も変動しやすい傾向があります。
その分スピードは出るものの、国際承認に直結しにくい課題があります。
④ 病院が治験で積極的に稼ぐ
中国・韓国では治験が病院の大きな収益源として確立しており、専任スタッフも充実。
東南アジアでも外国企業誘致目的で治験に前向きな施設が増えています。
⑤ 患者リクルートが早い
人口規模の大きさや治験への心理的ハードルの低さから症例集積が迅速です。
短期間で症例を揃えられるため、国際治験で採用されやすくなっています。
✅ 結論:日本からバイオベンチャーが育ちにくい理由
日本の治験は、高コスト・複雑な手続き・期間の長期化という構造が重なり、
資金力の弱いバイオベンチャーにとって大きすぎるハードルになっています。
欧米では治験が「企業価値を高める成長エンジン」として機能するのに対し、
日本では治験が「資金が尽きる関門」と化してしまう逆転現象が起きています。
その結果、多くの日本発バイオは臨床に入る前に失速したり、
海外へ拠点を移したり、早期にライセンスアウトしてしまう構造が生まれています。
✅ 一言でまとめると
日本の治験環境そのものが、バイオベンチャーの成長を阻む“見えない壁”になっている。
▶ 次回予告
ではなぜ——
日本の創薬ベンチャーはExitがライセンスアウト中心なのか?
そこには、資金調達、投資家文化、治験環境、製薬企業の戦略が複雑に絡み合った
“日本特有のメカニズム”があります。
次回、「日本の創薬ベンチャーはなぜ上場しても自社販売まで行けないのか?」
お楽しみに〜😄

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