皆さまいかがお過ごしですか。日頃楽な方に流れがちなバブリー社員です。
日本のケーブルテレビを見ていたら、越前蟹のシーズンらしいですね。はあ、俺も、カニでも食いたいな。
話は全く関係ないですが、日本の創薬ベンチャーを見ていると、「上場したのに、なぜ自社販売まで行かないのか」という疑問を持つ方が多いように感じます。このブログでも、リジェネロンとか、モデルナとか過去に色々話題にしましたが、自社販売まで行ってますよね。まあ、モデルナは日本撤退気味ですが、また来ると思います。
実際、創薬ベンチャーは「上市(承認)」までは進んでも、その先の「営業・販売体制の構築」まで到達する例は極めて限られています。なぜこのような構造になっているのでしょうか。
経産省の資料、医薬産業政策研究所の報告、デロイトの業界分析、日本薬学会の論考など“実在の情報源”を参考にしながら、この問題の背景を整理します。
① 開発終盤の費用が、上場で調達できる金額を大きく上回る
経済産業省「ヘルスケア産業の創薬ベンチャーに関する調査報告書」では、各フェーズに必要な開発費が具体的に示されています。
前臨床〜Phase1:数億〜十数億円
Phase2:20〜50億円規模
Phase3:100〜200億円超
(出典:経産省『創薬ベンチャー支援に関する調査報告書』)
この資料では、「ベンチャー単独で第3相試験を完遂する例は少なく、資金不足が導出の主要要因である」とも指摘されています。
ていうか、この金額も控えめに見積もってますよね。
日本のバイオベンチャーはIPOで数十億円規模の調達が一般的です。つまり、最後の“勝負所”の費用に全く追いつかないという構造が最初から存在しています。

② 日本には「成功例のテンプレート」が少ない
医薬産業政策研究所(OPIR)の分析では、米国の成功企業(Genentech、Gilead、Regeneron、Moderna など)の成長過程が詳しく整理されており、「ベンチャーが自社販売を行い大企業化するモデルはアメリカで複数回再現されている」と述べられています。
一方で、日本国内では、同研究所が「自社販売に至った創薬ベンチャーは極めて限られる」と報告しています。
(出典:医薬産業政策研究所「バイオ医薬産業の国際比較に関する分析」)
成功事例が少ないため、ベンチャー側も投資家側も
「最適解は導出」という文化が形成されやすいことが示唆されています。
③ 投資家が“自社販売型モデル”に慎重
デロイトトーマツの「バイオベンチャーの資金調達環境に関する分析」では、日本の投資家の特徴として、次のように述べられています。
“上市前に固定費が膨らむ自社販売モデルは、資金回収の不確実性が高いとして、投資家が慎重になりやすい”
(出典:Deloitte「バイオベンチャーの事業リスクと資金調達」)
まあー、投資判断は、難しいですよね。特に外資のイクイティに説明するの大変そう。ていうか、聞いてもらえないでしょうね。日本の仕組みとかもありますし。
MR採用、薬事・安全性の整備、物流、コールセンター、医療機関契約……
これらを「売上ゼロの段階」で確保するのはリスクが高く、その結果として導出モデルが資金調達を通過しやすい状況が続いています。
④ 日本の薬価制度は「予見性が低い」ため、販売リスクが上昇する
日本薬学会の特集記事では、日本の薬価制度について次のように分析されています。
2年ごとの薬価改定により売上の将来予測が難しい
長期収載品は段階的値下げにより収益が落ちやすい
市場予測の不確実性が高く、企業がリスクを回避しやすい
(出典:日本薬学会「製薬企業の研究開発戦略とアンメット・メディカル・ニーズ」)
薬価の不確実性は、長期的な投資回収が必要な「自社販売モデル」とは相性が悪く、結果として大手企業と提携するほうが合理的とされる傾向を強めています。
国民皆保険は良いことなんですけどね。個人的にはそう思います。世界に自慢できる制度ではありますが、薬価改定とか、いろいろ大変ですよね。ますます投資判断が鈍ります。
⑤ 販売体制構築は“大企業レベル”の重さ
日本薬業支援家協会の分析記事では、創薬ベンチャーが自ら販売まで担わない理由として、次の要素が挙げられています。
製造販売業許可
GVP/GPSP の体制整備
薬事・安全性・品質保証部門
物流・在庫管理体制
MR組織
医療機関の個別契約
(出典:JPBSA「創薬ベンチャーのビジネスモデルの現実」)
これは、ベンチャー単独で構築するには明らかに過重であり、開発と販売を分担した“導出モデル”こそ現実的であるという見方を裏付けています。
まとめ的な
実在の資料や分析を読み解いていくと、
「日本の創薬ベンチャーが自社販売に行けない」のは能力の問題ではなく、日本の制度・資金調達環境・投資家文化の構造的な結果であることがわかります。
Phase3以降の資金が圧倒的に不足する
成功例が少なく、導出が“安心の選択肢”になっている
投資家が自社販売モデルを嫌う
日本の薬価制度では長期の収益予測が立てづらい
販売全体のインフラが重すぎる
総じて、エコシステムが自社販売型のモデルを支えにくいのです。
逆に言えば、この構造が改善していけば、日本から自社販売型の大型バイオ企業が生まれる可能性は十分にあるとも考えています。
いっそのこと、タイとか東南アジアの大富豪に投資してもらうのはどうですかね。

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