米国中間選挙が日本の製薬会社と医療に与える3つの影

皆様いかがお過ごしですか。

さてまあ、アメリカ中間選挙が制約業界に及ぼす影響ということで、その日本への影響についてです。

前回の記事では、アメリカの中間選挙がFDAの審査姿勢や米国の薬価政策(ドラッグ・プライシング)、そして製薬株にどう影響を与えるかを整理しました。

今回はその続きとして、「で、これが日本の僕たちにどう跳ね返ってくるのか?」という点について、海外のレポートや国内の医療政策分析をいくつか読んで分かったことをまとめてみます。

結論から言うと、まったく他人事ではありませんでした。

日本の大手製薬会社は「アメリカ市場」が最大の稼ぎ頭だから

武田薬品工業、第一三共、アステラス製薬といった日本の大手製薬企業(メガファーマ)の決算を読むと分かりますが、各社とも売上高の半分以上を北米(アメリカ)市場で稼いでいます。

日本国内は公的保険による「毎年改定の薬価引き下げ」が続いており、新薬を開発しても利益を出しにくい構造になっています。そのため、日本の製薬会社も「アメリカで新薬を高値で買ってもらうことで、何千億円という巨額のR&D(研究開発)費用を回収する」というビジネスモデルに依存しています。

中間選挙の結果によってアメリカの薬価抑制策が一段と強まると、日本の製薬会社の業績や株価にダイレクトに打撃を与えることになります。

「最恵国待遇(MFN)薬価」で日本がさらに後回しに?

今回、海外アナリストのレポートを読んでいて最もゾッとしたのが「最恵国待遇(MFN)薬価政策」に関する議論です。

これは「米国内の薬価を、日本や欧州などの薬価が安い国の価格に連動させて強制的に引き下げる」という政策アイデアです。もしこれが強化・法制化された場合、グローバル製薬会社は次のように動きます。

「薬価がもともと低い日本で新薬を発売してしまうと、その安い価格がアメリカでの販売価格の引き下げ基準に使われてしまう……。それなら、日本での新薬の発売(承認申請)を後回しにするか、最悪見送ろう」

結果として、「欧米では使える革新的ながん治療薬やバイオ医薬品が、日本だけ届かない」というドラッグ・ロス(Drug Loss)がさらに加速するリスクが指摘されています。

FDAの審査停滞が日本の「ドラッグ・ラグ」に直結する

日本の厚生労働省やPMDA(医薬品医療機器総合機構)の審査プロセスは、世界最高峰の規制機関であるFDAの承認データや審査結果を重要な参考指標としています。

中間選挙の余波で上院の人事承認が滞りFDAの体制構築が遅れたり、議会からの追及を恐れたFDAが審査プロセスに対して極端に慎重になったりすると、その遅れがそのまま日本の承認審査の遅れ(ドラッグ・ラグ)にタイムラグとして反映されてしまいます。

アメリカの政治は「日本の医療の未来」に直結している

一見すると遠い国の政治ショウに見えるアメリカの中間選挙ですが、

  1. 米国中間選挙による政策変更・関税・薬価規制
  2. 日本企業を含む製薬各社の北米での収益悪化&戦略変更
  3. 日本市場への新薬投入の見送り(ドラッグ・ロス・ラグの悪化)

というルートで、僕たちが将来受けられる医療の質や、日本企業の稼ぐ力に直結しています。

ビジネスや投資の視点だけでなく、自分たちの「医療の安心」を守るためにも、米国の政治動向とFDAの動きからは目が離せません。

【参考・関連レポート】

本記事の作成にあたり、以下の海外・国内のヘルスケア政策および製薬・ライフサイエンス業界に関する各種インサイト・レポートを参考にしています。