Off-Label、Off-Label useで、適応外使用という意味です。
その昔、植物由来製剤の排尿障害治療薬がありました。実は、この手の成分は男性のEDにわずかながら効果があり、もともとはそちらの効能で開発が始まったという、経緯があります。EDでは、優位な効果が見られなかったものの、副作用・・・というか、服効能というべきか、排尿障害の治療で適応を取ることができた・・・。そんな医薬品です。プロパー時代のMRは、当然のことながら、その辺のエピソードを、面白おかしくドクターに話したものでした。「先生、この薬ですが、実は、あっちの方も元気になりまして・・・・」みたいな。
ある程度、効き目も副作用もマイルドな植物製剤なら、いざ知らず、重篤な副作用を有する医薬品になると、話が一気にシリアスになります。医薬品業界の悲しい歴史の最たるものとして、営業数字に追われたMRが、ドクターに適応外であっても処方を促して接待攻勢をかけて、それにつられてドクターが大量に処方した結果、患者に重篤な副作用、時には薬害を来たしてしまったということがあります。皆さんも、記憶しているところじゃないでしょうか。
MR資格が日本で制度化したのも、実はこのような出来事が毎日のように新聞紙上で踊っていた、製薬企業の倫理遵守が社会的に叫ばれていた1997年でした。 プロパーと呼ばれていた製薬企業の営業マンは、MRと正式に呼ばれ、倫理・プロモーションコードに則った活動をしている・・・時代的に、製薬業界が、社会全体に「倫理遵守の業界である」ということをアピールすることが必要だったのです。したがって、MRの実際の誕生は、”Off-Label”・・・・営業数字を追求するあまりに、MRがドクターに対して適応外処方を促してしまった出来事と、濃いリンクがあるといえます。
海外でその手のhotな話題としては、低用量ピルの”Off-Label use”があります。 低用量ピルはもともと避妊目的ですが、たくさんの副作用、副効果が認められる医薬品でもあります。 副効能のひとつとして子宮内膜症が良くなることが有ります。子宮内膜症の適応を開発段階から目的としている低容量ピルがあることも、周知のことでしょう。 副作用としては、心筋梗塞などがあります。
問題になっているのは、当然子宮内膜症が良くなれば、ニキビも改善するので、「ニキビ」への適応外処方が広まってしまったことです。製薬会社も、ドクターも、数多くの患者もニキビが改善されれば、それで良かったのでしょう。
ところが、避妊治療のポテンシャルと、ニキビ治療のポテンシャルでは、母集団が違いすぎます。 予想よりもはるかに多くの物量が、ニキビ治療狙いでで処方されてしまったのです。 当然、副作用の数も、予想以上に増えました。 特に、心筋梗塞など重篤な副作用を起こした患者が、欧米にたくさん居ます。 そんな患者が、製薬会社を相手取って起こした裁判が、”Yasmin Lawsuite” ヤスミン訴訟です。
さらに、アメリカでは弁護士が、yasminで副作用を起こした患者をターゲットに、訴訟を煽っています。 何しろ、大体の裁判では患者が勝つので、弁護士にとっては、収入源になってしまっているのです。最たるものとしては、こんなwebです。(http://www.yaz-yasmin-lawsuit.com/) こんなドメインまでとって、キャンペーンを行ってしまう弁護士、日本ではちょっとありえないと思いますが、アメリカでは、アリなんでしょうね。 なにしろ、裁判を起こせば、make moneyできるわけですから・・・。
この薬は、日本では認可されていませんし、また、日本では97年以降、相当にコンプライアンス、プロモーションコードが厳しくなっているので、この手の事件が頻発することは考えにくいです。
このような訴訟のリスクを限りなく軽減化するためにも、実は、MR資格は役に立っているのかもしれません。医薬品業界にとってMR資格は、内外団体への「生命倫理遵守業界」であるということのアピールと、万が一起こりうる患者からの訴訟対策に多大な力を発揮しているのではないでしょうか。