リピトール四方山話

最近、ファイザーがワーナー・ランバート時代にリピトールを開発した化学者をレイオフして、話題になりました。
(Lipitor Pioneer Is Out At Doomed Pfizer Lab; A Blockbuster Drought
Wall street journal, http://online.wsj.com/article/SB119733600536720234.html
As Drug Industry Struggles, Chemists Face Layoff Wave )

世界で最も売れている医薬品のひとつ…といえば、ここ数年はリピトール(アトルバスタチン)が1位を連続で占めていました。元々ワーナー・ランバートの化学者が開発して2000年に世の中に出た薬です。その後ファイザーがワーナーランバートを買収し、日本ではファイザーとアステラスと一緒に売っていますよね。

ところで、当事のファイザーによるワーナー・ランバートの買収劇は、890億ドルという金額で、いまだに世界の巨額M&Aの第4位になっています。因みに、1位から3位は下記のとおりです。

  1. ボーダフォンとマンネスマンの2028億ドル
  2. AOLによるタイムワーナーで1820億ドル
  3. RFSホールディングズによるABNアムロで982億ドル

さて、当事そんな巨額なM&Aをファイザーが決断した理由も、ずばり、リピトールに他なりません。

リピトールはその後2004年に世界の売り上げNo.1に躍り出て、売り上げのピークが過ぎた現在においても120億ドル近く売れていて、2010年時点で1位(セジデム・ストラテジックデータ株式会社の調査による:http://www.utobrain.co.jp/news/20110801.shtml)、さらにアメリカにおいても2009年まで1位(ちなみに、2010年はネクシウム:http://www.drugs.com/top200.html)なのですから、ファイザーにとっては、むしろワーナー・ランバートは安い買い物だったのかもしれませんよね。

さて、リピトールは一般名のアトルバスタチンでわかるように、いわゆる“スタチン”で、HMG-CoA還元酵素阻害薬。いわゆる高脂血症、高コレステロールの薬ですよね。

この、“ほにゃららスタチン”とか、“高脂血症”とか、“HMG-CoA還元酵素阻害薬”とかいう言葉は、1990年代に製薬会社でMRを経験した者にとっては、メバロチンを連想させます。

メバロチンといえば、日本発で初めて世界に通用するような薬だと、先輩方々から教えられたものです。昔、某国内中堅製薬会社に勤務していたとき、仲間同士で蔵王にスキーに行ったのですが、途中で三共製薬の超豪華な保養所施設があり、みんなで「メバロチン御殿」と呼んでいました(笑)。

さてさて、そんなスタチン、リピトールですが売り上げ減と特許切れで様々な影響をもたらしています。

さて、冒頭に紹介させていただいた化学者ですが、ファイザー社が別に彼を狙ってレイオフしたわけではないでしょう。そこにある研究所2100人のレイオフですから、世界的なレイオフの一環というわけです。

ファイザーは90年代にM&Aによる研究開発、パイプラインの増強をする、いわゆるファイザーモデルで製薬業界を牽引してきました。研究開発には毎年9000億円近くが使われていていました。9000億円って、1社のしかもR&Dだけにかけている金額としては、すごいですよね。

ところが、実際にはファイザー本体からの新薬は1998年のバイアグラ以来、登場していない(wikipediaによる)とのことですから、レイオフというのは当然のことなのかもしれません。日本では、名古屋にあった研究所は2008年にスピンオフして今年上場ましたね(ラクオリア創薬http://www.raqualia.co.jp/)。

驚くことではありませんが、MRにも影響しています。ファイザーはリピトールの特許切れの前にアメリカで大規模なsales rep(MR)のレイオフを計画しています。とにかくリピトールがあけた穴を、コーポレートとして相殺しなければなりませんので。その穴に関しては新たに1000億円のコストカットが迫られているようです(wall street journal: http://online.wsj.com/article/SB10001424052702304906004576371561284585844.html)。そのアメリカのMRのレイオフの具体的な数字や時期などの詳細については、ファイザーの広報は名言を避けている(http://www.pharmalot.com/2011/08/pfizer-cuts-reps-before-lipitor-patent-expires/)とのことです。

それにしても、ブロックバスター一品目が、何万人もの人生を左右しているような気がして、医薬品ビジネスって恐ろしくもなりますね。さて、レイオフや、コストカットなど、暗いトーンばかりではありません。“特許切れ”といえば、当然のことながら、hotになってくるのはジェネリックメーカーです。

この11月の薬価収載でリピトールの後発品が5社から発売されます。まさに未曾有のジェネリック市場の更なる拡大につながる事は間違いありません。ただでさえ、この11月の収載はアリセプトなど大型ブランドのジェネリックが収載されるのです。引き続きジェネリック市場の活況は続くのかなと思います。

リピトールの話はこれからもつづきそうですね。

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米アボット、製薬事業を分割 2012年末めど

Breakup or  Buildup?

各メディアが一斉にアボットの事業分割計画について報じています。
http://blogs.wsj.com/deals/2011/10/19/abbott-breakup-a-glimpse-into-the-future/

「米アボット・ラボラトリーズは19日、2012年末をめどに後発薬を除く製薬事業を分割し、新会社として上場すると発表した。医療・診断器具や栄養事業など、製薬以外の事業は本体に残り、アボットの社名を引き継ぐ。成長ペースや主力市場の異なる製薬事業を分離することで経営効率を高め、株主価値を高める狙い。(日本経済新聞)」

考えてみれば、まったく不思議な話ではありません。前から思っていましたが、アボットに酷似している会社がジョンソン・アンド・ジョンソンかもしれませんアメリカの企業でR&DにフォーカスしてM&Aをして成長を遂げたメガ・ヘルスケアカンパニー。J&Jの現在のオペレーションを見れば、5社から成っていますよね(メディカル、コンシューマー、ビジョンケア、ダイアグノスティック、ヤンセンファーマ)。

また、同じアメリカ系のブリストルマイヤーズ・スクイブも医療機器のコンバテックや粉ミルクの企業をかつて分離しましたし、ファイザーに至っては過去に農薬や食品その他を分離してきました。また、アボットにおいては、バスキュラーやAMOなど、別オペレーションがくっつきましたよね。企業、特に外資なので、この辺が活発なのは頷けるところです。

医療機器と医薬品では、商習慣もコンプライアンスも全く違いますよね。ですから、同じ会社でやるというのは、どこか無理があったりします。より効率的なオペレーションということで考えれば、今回のABBOTTのニュースはbreakupというよりは、未来に向けたbuildupではないでしょうか。記事によるとアボットの場合は分離した新会社の社名も新しくして米国で上場するらしいので、J&Jのようなファミリーというよりは、もしかしたらファイザーのように分社化していくのかもしれません。

分社化、上場ということにフォーカスすると、資本の分散によって、投資家からの買いも入りやすくなることや、何より節税につながると思います。特にリウマチ、クローン病のヒュミラにおいては更なる売り上げ増を望む一方、バスキュラー、ビジョン系のデバイスは競合へのシェアアップが必須になっている関係上、この分割が及ぼす波及効果への期待は納得ができるものと言えます。

日本における医薬品業界という観点から考えれば、そもそもダイナボットからアボットになり、エンシュア・リキッドやクラリシッドを売っていた会社。さらに北陸製薬買収でホクナリンテープが来て、シナジス、セボフレンが別部隊になったという印象はありますが、元々薬屋たちにとっては、機械屋との接点が無かったので、特段大きな変化があるようには見えないでしょう。

今回のニュースは、breakupやsplitというよりは、それぞれの分野が分離して発展するというbuildupにほかなりません。歓迎すべきものだと思います。

特に特殊な業界である医薬品においては、なおさら歓迎すべきニュースではないでしょうか。

しょうがない話

先週の土曜日にわき腹に腹痛を覚え、不覚にも救急外来に搬送されました。原因は薄々わかっていましたが、腎結石です。2回目ですから。綺麗な女性の看護士さんにボルタレンの座薬を挿入されました。痛みは落ち着き、エコーにもレントゲンにも結石らしき物が映っていたので、ほぼ確定診断され、ラクテックを1リットル射って家に帰されました。茶髪に金のネックレスがまぶしい若いイケメンの救命の先生に、「ほぼ診断もついたので、痛みが落ち着いているなら、どうぞご帰宅ください。月曜日には泌尿器科を受診してください。」と促され、自力で家路につきました。まあ、救命救急だから、僕みたいに腎結石で歩ける患者にはかまっていられないでしょう。

週があけて月曜日に泌尿器科を受診しました。まあ、地域で一番大きな基幹病院ですから仕方がないのですが、とにかく待てど暮らせど順番が回ってこない。朝から受付して、外来で3時間以上待って、やっと自分の番。

先生:レントゲンを見ながら「ここにありますね。6ミリくらいです。」
先生:「とにかく、水をいっぱい飲んでください。これを出さないと。出たら拾って持ってきてください。」
先生:「あとは、結石ができないような生活をしないと・・・。」
先生:「そうですねー。石を溶かす薬と、尿が出やすい薬を出しておきましょうか・・・」

と、いいながら先生はパソコンにハルナールと入力。

僕:「あの、僕、前立腺肥大はないと思いますのでハルナールは無効ではないでしょうか・・・」

先生:「まあ、これは、大丈夫ですから。 また2週間後に来てくださいね。」

まあ、大病院が抱える問題ですよね。3時間待ちの5分診療。それは、仕方のないことだと思います。いろいろと、昔から対策も打たれているようですが、一朝一夕には解決できないことですよね。結局ハルナールを出されましたが、MRの時に研修で習ったα1-cだか何かのレセプターは、排尿障害が無ければnon responseのはずだと思うのです。そうであっても、それ以上外来診療中に先生と議論してもショウガナイし、そんなことしたら嫌な患者になっちゃうし、時間もないし、逆に先生からもっと難しい反論とかされたらわからないし、結局素直に処方されることになりました。

朝から午後1時半まで病院の外来で過ごし、これから調剤薬局へ。そこには、忙しそうな40代半ばと見られる女性薬剤師が居ました。。

薬剤師:「ジェネリックがありますが、ジェネリックにしますか」
僕:「うーん、じゃあお願いします」
薬剤師:「えっと、おしっこが出にくいんですか?」
僕:「え、いいや。」
薬剤師:「おしっこは大分出るようになりましたか?」
僕:「え、いや、それは前から普通に・・・」
薬剤師:「じゃあ、今日はおしっこが出やすくなる薬が出ていますので、どうぞぉお大事に。」

この会話は、無駄であるります。一々結石で石を早く出すために先生が・・・と説明するのも大変だし、それよりも人の話を聞く風ではないですし。ただ、これが薬局で服薬指導の点数になるわけでしょうから、この会話が成されることは、仕方が無いことかもしれません。仕方が無い。。服薬指導が何点なのか、知りませんが(明細見ればわかるけど)、その医療費が国庫から出ていると思うと、納税者としては不条理かもしれません。プリントアウトされた薬の説明には、「タムスロシン」のジェネリックの写真と、「尿が出やすくなる薬です」と書かれていました。

ほんとに、痛くてしょうがないし、待ってて疲れてしょうもない。望んでいない薬を出されて、しょうもない話でした。