外資系製薬企業では転職に英語力を求められることが多いです。MRには求められませんが、マーケティングや本社のポジション、臨床開発の仕事などにはかならず英語力が問われます。なぜでしょうか。
よく外資系企業の戦略の上の、その上の方に外資系コンサルティングファームが関わっています。ビッグフォーと呼ばれるファームなどなど、製薬企業の戦略の骨子を担うところに、マッキンゼーやKPMGなどなどが関わっていることが多いですよね。私もその外資系のコンサルティングファームの転職サポートもさせていただいているのですが、外資系コンサルティングファームの採用に関しては、英語はさほど重要視されませんが、むしろ、日本語力をかならず問われます。「ビジネスで使う敬語、お客様とのコミュニケーションに必要な正しい日本語が話せる人・・・」などと、概要に書いてあったりします。なぜでしょうか。
製薬業界で生きていくためには内部の上下関係や内政が意外と重要で、コンサルティングファームでは内政はさほど重要ではなくむしろ顧客との関係や個人の実績が重要なのかもしれませんね。
平たく言えば、製薬業会では、上司やグローバルの上司とのコミュニケーションがより重要で、実績に関しては厳しいながらも、意外となんとかなる。
一方でコンサルティングファームではお客様とのやりとりや実際の実績が最も重要で、上司に怒られようがグローバルに嫌われようがさほどダメージはないのではないかと。
製薬業会では、個人の責任の範囲はさほど広くなくて会社が意外とサポートがあるかわりに、上司を怒らせたら大変なことになる。
コンサルティングファームでは個人の責任、アカウントが非常に大きく、会社のサポートはあるものの、個人の裁量が大きいということなのかと。
つまり、外資系製薬会社では、レポートすることが重要。レポートラインの上司は外国人、そのまた上のapacやグローバルは当然海外なので英語、そして彼らによく見せるためには、とにかく英語力が必要です。例えば外資の製薬会社の本国の本社にいる日本担当者が日本語なんてできないだろうし、また外国人の日本にいるエキスパットも日本語なんてできないでしょう。だからその人たちとのコミュニケーションには英語力が重視されるということだと思います。つまり、外資系製薬企業で英語が重要な理由は、社内で立ち回るためなのかもしれません。それが重要なのかなと。これにより、外資系製薬企業には、特段製薬会社に関わる臨床開発やマーケティングのスキルが無い人でも、英語がとくいで、むしろ英語しかでない人が良いポジションにいたりしますよね。外資系製薬企業に勤めていて、英語が得意な人は、さぞかし英語自慢であることでしょう。
一方でコンサルティングファームで日本語が重要な理由は、外資系コンサルティングファームの日本法人の顧客の多くは日本企業だからではないでしょうか。お客様の日本企業は書類も決済も日本語ですし、帰国子女のように英語をペラペラ話す人はあまりいないでしょう。また、そのような顧客の日本企業への文書やメールや電話では、当然コテコテの日本語ビジネス敬語が求められます。日本で実績を上げるためには、英語なんかより正しい日本語の方がよほど重要なのです。別に本国の外人上司への報告内容が薄くても、実績を上げていることが大事なのです。外資系コンサルティングファームで、英語自慢をすると、おそらくなんとも思われないか、嘲笑されるかどちらかでしょう。英語ができる人は実はたくさん居て珍しくもなんともないですし、むしろ仕事ができる人が重宝される社会です。
つまり、製薬会社の社員で会社の重要なポストに関わっている人は、仕事のスキルも去ることながら、英語力が大事で、しかしながらさらにその上の戦略や、トップ戦略などは自分たちでやらずに外注し、その外注先のコンサルティングファームの人々はむしろ英語なんかに興味がないのです。
コンサルティングファームも、もちろんパーフェクトではないでしょうから歪みはあると思います。しかしながら、英語よりも日本語、英語よりも仕事を重視しているのは自然だと思います。
外資系コンサルティングファーム:
英語は必要だけど重要じゃない。
仕事力は必要で重要である。
社内コミュニケーションは必要だけど重要ではない。
日本語力はとても重宝される。
外資系製薬会社:
英語は必要で重要である。
仕事力は必要だが重要ではない。
社内コミュニケーションは必要であり重要である。
日本語力は特段重宝はされない。
これによって、外資系製薬企業では英語がイマイチなために優秀な人がどんどんポストを失っていますね。また英語しかできない普通の人が実能力以上のポジションに居たりしますね。そろそろこの辺が改善されると良いと思います。