別業界の夫に、転勤辞令が出た。A子は29歳。
横浜出身だが新卒でMRとして入社した外資系製薬企業で、縁も所縁もない地方都市に配属されて7年が経過した。
明るくコミュニケーション能力の高いA子は、文系で新人ながら縁も所縁もない都市で、基幹病院を担当し、オンコロジーMRとして成績を伸ばしていった。
7年が経過し、同じ都市で出会った外資系医療機器メーカーの4歳上の彼氏と結婚、出産。
産休、育休がまだまだ明けていないが、夫に転勤辞令が出た。転勤先はまたまた、縁も所縁もない都市。
A子は自分の会社に、夫の転勤先への転勤を願い出たが、認められなかった。
A子は仕事大好き。成績も良い。会社からの評価も良いし、上司とも良い関係なので、心のどこかで「あの上司なら自分の願い入れは認めてくれるだろう」と、何処かでタカを括っていたので、認められなかった事に、結構ショックを受けていた。
産休、育休の間に、評判の良かったA子の存在感は社内で薄れ他のだろうか。会社というのは薄情なものだ。。
「仕事辞めても良いよ。子育てに専念してくれ。」
子供ができてから、夫は何度となく、A子に話していたが、知らない土地で専業主婦をして子育てに専念するという感覚が、A子にはどうしてもピンとこなかったのである。
A子は転職活動をした。夫の勤務地でMRとしての就業を模索した。
ピンポイントでの勤務地限定というのがなかなか難しく、うまくいかなかった。
夫は良いと言ってくれているものの、A子の給料は900万円を超える。「仕事をしたい」ということだけではなく、将来のことを考えても、なかなか退職には踏み切れない。
結局A子はその土地に残留を決意して、転勤して行く旦那と別れて住むことになった。
産休、育休が開けて、子供を保育園に預けながら働く日々。ところが、どこか以前とは違っていた。可愛がってもらった上司もどこかよそよそしい。病院の先生との会話も以前ほど盛り上がりに欠ける。
会議、研修の日に限って子供が熱を出して保育園からお迎え要請の連絡があったり。偉い先生とアポイントのあるときに限って子供が愚図ったり。
以前とは環境が全く違って、ほとほと疲れ果てたA子。女子MRとママさんMRとの違いを痛感することになった。
心身ともにボロボロになり、子供にとっても良くないと思ったA子は、会社を辞めて夫のもとで専業主婦になることを決意した。
ある日、夫に話した。というより、助けを求めるに近かった。
ところが、夫の反応は予想外だった。
「会社に申請した社宅が一人用で、すぐに変更できない。」
「子育てがそんなに大変なら、実家に預けて働けば良い。」
「将来のためにお金は必要だ。」
たった数ヶ月離れて住んでいた夫の違い様に、ショックを受けたA子。
どうしたら良いの?