旅するように働く日々
皆さま、お元気でお過ごしでしょうか?
僕は年末に台湾を旅しながら仕事をしていました。高雄から台南、そして台北へ。ところが、台湾の冬は思いのほか寒く、しかも暖房がほぼ普及していないため、体力を消耗する日々。未だにその疲れが抜けきらない気がします。
年が明けてからは、1月にパタヤ、2月の初めはプノンペンで9日間仕事。今日はバンコクの自宅近くのカフェに朝から15時まで居座って仕事をしていました。気がつけば6時間以上。でも、まったく気になりません。こういうの、日本とは違うところですね。
2024年ノーベル化学賞の衝撃
さて、本題です。昨年、2024年のノーベル化学賞は、まさに「創薬の未来」を象徴する研究に贈られました。
- ワシントン大学のデイビッド・ベイカー氏
→ コンピュータで新たなタンパク質を設計し、合成する技術 を開発。 - グーグル・ディープマインドのデミス・ハサビス氏 & ジョン・M. ジャンパー氏
→ タンパク質の立体構造を予測する画期的なAIモデル を開発。
これ、何がすごいかというと… 「AIがタンパク質を設計する時代になった」 ということです。
創薬AIの時代へ

これまで、「AI × 医療」といえば、患者向けの診断支援や医師の業務効率化が中心でした。
でも、AIがタンパク質を設計し、そこから新しい創薬が生まれる。これは、もはや「創薬の元の元」をAIが担う時代が来た、ということ。
成功すれば、バイオベンチャーとして世に出て、巨額の投資を得ることができる。これって、AIの活用でビジネスを誕生させる、地味に見えますが、超夢のような出来事なのです、
まさに 「創薬ドリーム」 の時代が、もう既に始まっているのです。
AIタンパク質設計の最前線:創薬を加速するスタートアップ競争
ということで、もちろん、そんな創薬ドリームを実現したくて、もう既にAI技術の進化により、新薬の開発スピードが劇的に向上しています。
特にAIを活用したタンパク質設計の分野では、多くのスタートアップが資金を集め、し烈な競争を繰り広げています。
世界の主要AI創薬スタートアップ
さて、いろいろなニュース、情報サイトをサーチすると、現在、シリーズAで大規模な資金調達を行ったスタートアップはたくさんありますが、まあ、3つくらいピックアップしますと、こんな感じです。
| Xaira Therapeutics | >$1B |
| EvolutionaryScale | $142M |
| Generate:Biomedicines | $50M |
実は、もっともっとたくさんあるのです。ヘルスケア以外も入れると、相当数のAIスタートアップが既に投資を受けています。これって、やったもの勝ちですよね。
この中でも、Xaira TherapeuticsはシリーズAで10億ドル以上を調達し、群を抜いた存在となっています。資金調達額が多いほど、新薬の開発やAI技術の研究に積極的に投資できるため、今後の展開が注目されます。
Xaira Therapeutics
またまた、シリコンバレーからです。
AI は、新薬の発見がもはや職人的なプロセスではなく、より確実で成功率の高い工学分野となる新しい時代の到来を告げるのに役立つと私たちは信じています。私たちはこの変革の最前線にいられることを嬉しく思っています。私たちは、科学の病気治療力を拡大するために、計算方法とモデル、データセット、プラットフォーム、プロセスを作成しています。これらのアプローチを活用して、必要としている患者のために新しい治療法を生み出しています。
それにしても、すごいメンバーの数ですね。
https://www.xaira.com/our-team
Xaira Therapeuticsのアプローチは、AIを活用した革新的な創薬プロセスの構築に焦点を当てています。ウェブから抜粋すると、こんな感じになります。
- AI研究の推進:基礎的な計算手法の開発から、生物学的発見、分子設計、臨床開発への応用まで、AI技術を幅広く活用しています。共同創設者でありノーベル賞受賞者のデイビッド・ベイカー博士の研究に基づき、AIを用いて新しいタンパク質をゼロから設計し、従来の手法では標的化が難しかった分子ターゲットに対する医薬品の創出を目指しています。
- データ生成の強化:AIの学習には適切なデータが不可欠です。Xairaは、分子レベルから人間のスケールに至るまで、多次元のデータセットを生成、統合、学習できる堅牢なデータプラットフォームを構築しています。機能ゲノミクスやプロテオミクスの専門家チームが、新しいアプローチを開拓し、疾患の原因となる因果関係について前例のない洞察を得ることを目指しています。
- 治療製品の開発:経験豊富な薬剤開発チームが、計算およびデータプラットフォームを活用し、複数のモダリティにわたる差別化された治療薬のパイプラインを構築しています。また、創薬プロセスを経験的な科学から精密な工学的手法へと転換することを目指しています。すべての実験や臨床試験は豊富なデータ生成の機会と捉え、薬剤開発プロセス自体が新しいモデルの開発と改良に継続的に貢献するよう努めています。
これらのアプローチにより、Xaira TherapeuticsはAIを駆使して創薬の新しい時代を切り開こうとしています。
AIタンパク質設計の競争ポイント
従来の創薬は、膨大な時間とコストを要するものでしたが、AIの進化によって以下のような変化が起きています。
✅ 設計スピードの向上:AIが短期間で最適なタンパク質構造を予測し、試行錯誤の回数を減らせる。
✅ コスト削減:従来の創薬プロセスと比べ、実験コストを大幅に抑えられる。
✅ 成功率の向上:AIがシミュレーションを行い、有望な候補のみをスクリーニング可能。
この技術を巡って、多くの企業が独自のアルゴリズムやデータ解析手法を武器にしながら競争しています。
あれ? 日本は?
ここで気になるのが、日本企業の立ち位置です。結論から言うと、日本は今回も出遅れる可能性が高いでしょう。
なぜなら、
- 資金調達の規模が違う:日本のAI創薬スタートアップがシリーズAで数百億円規模の資金を集めるのは極めて難しい。
- 意思決定のスピードが遅い:欧米のスタートアップは迅速にリスクを取りながら成長するが、日本企業は慎重すぎる傾向がある。
- 技術を買う側に回りがち:日本の製薬企業はAI創薬の技術を自社開発するより、欧米のスタートアップと提携したりライセンスを購入したりするケースが多い。
例えば、Xaira Therapeuticsのような企業が日本市場に進出し、最終的に日本の大手製薬企業がその技術を高額で導入する、という流れが想像できます。
それでも日本にはチャンスがある
とはいえ、日本の製薬企業が完全にこの分野で勝負できないわけではありません。日本には、
- 膨大な創薬データの蓄積
- 高品質な製造技術と管理体制
- 政府の研究助成や国立研究機関との連携
といった強みがあります!
なにしろ、医薬品の巨大なマーケットが日本な訳ですから、つまり、マーケットとしてのデータ蓄積は半端ないわけです。
日本の強みを活かすのは今! という感じですよ。これ、世界に出れます。かつて、任天堂がロックフェラーセンターのオーナーになったように、80年代後半の、Japan as No.1が、今すぐ、目の前にあると言っても良いです。
こ欧米のAI創薬企業と戦略的に提携することで、日本の製薬業界もこの分野で活路を見いだせるかもしれません。
だいたい、AIなので、AIにやって貰えば、成立するとは思いますが、問題は、その設計とビジョンかと思います。どんなゴールを描いているのか? が、重要なのです。
ただ、まあ、日本は、遅れています。
日本においては、、
AIタンパク質設計の競争は、今後さらに激化すると予想されます。日本企業は、単に「出遅れた」と嘆くのではなく、
✅ 欧米のAI創薬企業と積極的に提携
✅ 独自の創薬データを活用して競争力を強化
✅ 資金調達や意思決定のスピードを上げる
といった動きを取ることが求められます。
今後、日本の製薬業界がこのAI創薬競争にどこまで食い込めるのか、注目していきたいですね。
では、また。
∞∞━━━━━━━━━━━━━━━━━━━∞∞
∞∞━━━━━━━━━━━━━━━━━━━∞∞
∞∞━━━━━━━━━━━━━━━━━━━∞∞
CSOにて、コンサルの仕事
https://mrpatio.blogspot.com/2025/02/1300.html
∞∞━━━━━━━━━━━━━━━━━━━∞∞

コメントを投稿するにはログインしてください。