💊CEO退任後も製薬業界に影響を与え続けるリーダーたち──“第二のキャリア”を歩む元トップ3選

みなさん、お元気ですか。

日本の赤ちゃんの出生数が、とうとう70万人を下回ったそうです。
国の推計より14年も早いそうで、メディアは一斉に「社会保障制度に暗雲」「若者の経済不安が背景に」と報じています。

でも──ふと、こんなことを思ってしまいました。
この70万人の同級生たち、ちゃんとお友達できるのかな?
大人の事情よりも気になるのは、そんな素朴な不安です。
気がつけば、まわりは年配者ばかりで、同世代は数えるほど…そんな環境で育つ子たちの未来を想像すると、ちょっと胸がざわつきます。

さて、「次の世代」というキーワードでもう一つ。
製薬業界のトップに立つCEOという存在もまた、“世代交代”と“その後”が気になる立場です。
業界内外から注目されるリーダーである一方、その任を終えた後、彼らがどんな道を歩むのか──
そこまで知っている人は、意外と少ないのではないでしょうか。

今回は、製薬業界に名を刻んだ**3人の元CEOたちの「その後」**にフォーカスし、
彼らがどんな第二章を歩んでいるのかを追ってみたいと思います。

製薬業界でトップに立った人物たちは、退任後も驚くほどアクティブに動き続けています。彼らは単にキャリアを終えたわけではなく、むしろ“企業の枠を超えた医療への貢献”を始めているのです。

この記事では、製薬企業の元CEOたちの現在の活動を追いながら、「セカンドキャリアの可能性」について考えてみたいと思います。


👤 1. ケネス・C・フレイジャー(元Merck & Co. CEO)

  • 在任期間:2011〜2021年
  • 現在の活動
    • 社会正義団体「OneTen」の共同創設者(黒人雇用支援)
    • ベンチャーキャピタルGeneral Catalystのヘルスケア部門会長
    • Weill Cornell MedicineやNational Constitution Centerの理事

製薬の世界で成果を上げた後は、医療アクセスや人種間格差といった社会構造そのものの変革に取り組む姿勢が印象的。単なる慈善活動ではなく、戦略的かつ持続可能なモデルを目指している点が特徴です。

💬 現役時代の印象的なエピソード:

2017年、白人至上主義デモが起きた米バージニア州シャーロッツビル事件の際、
当時のトランプ大統領の対応に抗議し、自らホワイトハウスの経済諮問委員会を辞任

この時にフレイジャー氏はこう語りました:

「自分のような人間(=黒人)がこのポジションにいることの意味を、自分が一番よくわかっている」

彼の存在そのものが、当時まだ課題の多かった医療業界のダイバーシティの象徴となっていました。

👉 CEOとして業績も高めながら、社会的・倫理的メッセージを出し続けたリーダーです。

ベンチャーキャピタルGeneral Catalystの主な投資先

🏥 General Catalystの主なヘルスケア投資先一覧

企業名概要・特徴特記事項・備考
Commure医療データの統合・ワークフロー支援プラットフォーム。AI・AWSと連携。Copilot Suite、aiOS などを展開
Maven Clinic妊娠・不妊治療・女性の健康に特化したバーチャルケア。福利厚生として導入されるケース多数
Cityblock Healthメディケイド受給者・低所得層向け、地域密着型の統合医療。プライマリケア+行動医療
Livongo糖尿病・高血圧などの慢性疾患のデジタル管理。AIを活用。Teladocと合併(185億ドル)
Sword Healthリモートでの理学療法提供。AIで個別リハビリ計画を支援。物理的な通院を不要に
Hippocratic AI医療特化型LLM(大規模言語モデル)を開発。医師や看護師の業務支援を目指す
Transcarent医療費の透明性と意思決定支援を行う患者中心のケアプラットフォーム。雇用者向け医療コスト削減にも貢献
HarmonyCares高齢者・慢性疾患患者向けの在宅医療サービス。自宅での生活の質を重視
PB Health(インド)インド市場におけるミドルクラス向けの価値基盤型医療サービス。GCの新興国戦略の一環
Summa Healthオハイオ州の非営利病院。HATCo構想の実証拠点として買収。買収額:4.85億ドル

💡 General Catalystの投資戦略

戦略名内容
Health Assurance企業と医療機関をエコシステム化し、テクノロジー実装を迅速化。
HATCo医療機関の買収+再構築で、次世代型の医療提供モデルを試行。
AI戦略AWSと連携し、クラウド上でAIヘルスケア技術を展開。


ベンチャーキャピタルGeneral Catalystでの、ケネス・C・フレイジャーのプロフィール
https://www.generalcatalyst.com/team/ken-frazier


👤 2. アンドリュー・ウィティ(元GSK CEO → 現UnitedHealth Group CEO)

  • GSK在任:2008〜2017年
  • 現在の役職:UnitedHealth Group CEO(2021年〜)

GSK退任後、一時は非営利活動や大学の運営に携わったウィティ氏ですが、2021年より米国最大手のヘルスケア企業UnitedHealth GroupのCEOに就任。

製薬から保険・医療サービス業界へと舞台を移し、医療全体の最適化に挑んでいます。GSK時代のアクセス戦略(低所得国向け価格設定など)を思い出すと、その延長線にあるキャリアとも言えるでしょう。

💬 現役時代の印象的なエピソード:

アフリカ諸国向けに、GSKの新薬の価格を「最大75%引き」で提供する取り組みを主導。
また、自社の研究成果をオープンアクセスで公開するなど、知的財産よりもグローバルヘルスへの貢献を優先した姿勢が話題に。

「薬は“売る”ものだけでなく、“届ける”ものでもある」

と語り、製薬ビジネスの常識に風穴を開けました。

2024年2月、米国の医療保険大手ユナイテッドヘルス・グループ(UnitedHealth Group)の子会社であるチェンジ・ヘルスケア(Change Healthcare)が大規模なサイバー攻撃を受けました。この攻撃は、医療業界史上最大規模のデータ侵害とされ、約1億9,000万人の個人情報が流出した可能性があります。rocket-boys.co.jp+4scan.netsecurity.ne.jp+4jp.reuters.com+4note.com+1ssl.com+1


🛡️ 攻撃の概要


💰 財務的影響と対応

  • ランサム支払い:ユナイテッドヘルスは、攻撃者に2,200万ドルの身代金を支払ったと報じられています。
  • 損失額:2024年第1四半期だけで8億7,200万ドルの損失を計上し、年間の総損失は30億9,000万ドルに達したと報告されています。 moomoo.com
  • 支援策:影響を受けた医療提供者に対し、60億ドル以上の前払い資金や無利子融資を提供。 note.com

🧑‍⚖️ 経営への影響と規制対応

  • CEOの辞任:2025年5月、CEOのアンドリュー・ウィッティ氏が突然辞任し、前CEOのスティーブン・ヘムズリー氏が復帰しました。 reuters.com
  • 規制当局の対応:米国保健福祉省(HHS)は、影響を受けた医療機関への柔軟な財政支援を発表しましたが、アメリカ病院協会(AHA)はこれを不十分と批判しました。 en.wikipedia.org

🔒 教訓と今後の展望

この事件は、医療業界におけるサイバーセキュリティの脆弱性を浮き彫りにしました。特に、多要素認証の欠如やシステムのセキュリティ対策の不備が重大なリスクとなることが明らかになりました。今後、医療機関や関連企業は、より強固なセキュリティ対策の導入と、迅速なインシデント対応体制の構築が求められるでしょう。ssl.com+1note.com+1


Photo by Yau011fmur Berberou011flu on Pexels.com

👤 3. セルジュ・ワインバーグ(元Sanofi会長/CEO代行)

  • Sanofiでの経歴:会長、2014年に一時CEO代行も務める
  • 現在の活動:投資会社「Weinberg Capital Partners」代表

欧州製薬の重鎮として知られるワインバーグ氏は、現在ヘルスケア分野を含む様々な領域に投資を行っています。バイオテクノロジーやヘルスイノベーションにも深く関わっており、“資金と視点”で業界に影響を与える立場に。

彼のように、経営経験を元に裏方から業界を支える道も、セカンドキャリアのひとつの形です。

💬 現役時代の印象的なエピソード:

Sanofiがバイオベンチャー「Genzyme」を2011年に買収した際の陣頭指揮をとったのがワインバーグ氏。
この買収によりSanofiは、がん・希少疾患領域に一気に進出し、世界的な製薬企業へと変貌しました。

「製薬会社は、未来の“未解決問題”に投資すべきだ」

買収だけでなく、“何を次の柱にするか”という長期戦略を打ち出すスタイルが高く評価されました。

🏢 主な投資先一覧(分野別)

以下は、WCPの公式サイトに掲載されている主な投資先です:

企業名分野概要
Magellium Artal防衛・セキュリティ衛星画像処理とデジタル地図作成のリーダー企業。
Chesneau-Serret防衛・セキュリティ精密機械加工の専門企業。
Semip-Codechamp防衛・セキュリティ高性能角度位置センサーの欧州リーダー。
CosmogenLBO・共同投資美容業界向けの一次包装の専門企業。
Juliette has a gunLBOニッチな香水ブランド。
Groupe ProNetLBOスイス・フランス語圏でのファシリティマネジメントの主要企業。
Montpensier-ArbevelLBO独立系のアクティブ資産運用会社。
Groupe Marcel Villetteインパクト投資緑地開発とメンテナンスの地域リーダー。
Opalインパクト投資眼鏡フレームの設計・販売を行う企業。
Orion Énergiesインパクト投資太陽光発電の専門企業。
CINETIQ不動産フランス・ボワソン(ハイネケングループ)向けの物流プラットフォーム。
LEVA不動産ルヴァロワ=ペレに位置する本社ビル。

これらの企業は、WCPの各専門分野における代表的な投資先であり、同社の多様な投資戦略を反映しています。


🌱 ESGとインパクト投資への取り組み

WCPは、すべてのプライベートエクイティ投資先企業に対して、スコープ1・2・3の炭素排出量の測定を実施し、ESG(環境・社会・ガバナンス)アクションプランを策定しています。特にインパクト投資では、環境や社会への積極的な貢献を目指す企業への支援を強化しています。 weinbergcapital.com

🏥 Weinberg Capital Partnersの主なヘルスケア関連投資先

企業名投資年概要ステータス
Pharma Omnium2006年成熟した医薬品を専門とする製薬会社で、6つの主要製品を保有。生産と流通は外部パートナーに委託。感染症治療に関する研究も行い、欧米の研究プログラムに参加。WCPは買収戦略と研究開発の支援を実施。売却済み
Opal不明眼鏡フレームの設計・販売を行う企業で、視覚補助具市場に貢献。WCPのインパクト投資部門が支援。保有中
Vitale Assistance2017年火災や水害後の緊急支援および修復サービスを提供し、保険会社と連携。医療・福祉分野でのサービス提供を通じて、ヘルスケアセクターにも関与。保有中

これらの投資先は、WCPの多様な投資戦略とヘルスケア分野への関心を示しています。特に、Pharma Omniumへの投資は、成熟した医薬品の市場価値を再評価し、研究開発を支援することで、医療分野への貢献を果たしました。

詳細な情報や最新の投資先については、WCPの公式ウェブサイトをご覧ください。 weinbergcapital.com

WCPでのセルジュ・ワインバーグのプロフィール


製薬業界の頂を極めた彼らは、
引退という名の「終わり」ではなく、
自由という風を背に受けて、新たな航路を歩み始めていました。

肩書きがなくなっても、光が消えるわけではありません。
むしろ、その後こそが、静かに、そして力強く輝き出す時間なのかもしれません。

今、あなたがもし道に迷っていたとしても──
キャリアには、第ニ章という名の可能性が、
確かに用意されている。

次回はまた、新たな3人の足跡をたどりながら、
“終わりの先にある始まり”を、そっと照らしてみたいと思います。

どうぞ、また読みに来てください。