皆様いかがお過ごしですか。僕は季節の変わり目で気温が落ちたためか、風邪気味です。とはいえ、バンコクですので、冬が来るわけではありませんが。相変わらず、だいたい日中は33度くらい、夜でも28度くらいまでしか下がらないのです。

そんな中、ヒートアップして、急に冷めそうな気配をGLP1に感じてしまいます。

新薬開発競争の現状と投資期待の高まり

先日リリーで開発中の新しいGLP1が効能効果など、色々な面で既存薬を上回るという発表があり、投資判断も上向きですし、患者さんからも期待されていると思います。特に、減量効果や安全性プロファイルにおいて従来薬を大幅に凌駕するデータが示され、市場関係者の注目を集めています。リリーとノボだけではなく、サードパーティによる開発競争も激化していることもご案内済みでございます。各社が独自の作用機序や投与方法を武器に、この巨大市場での覇権を狙っているのが現状です。まさにGLP1戦国時代、みんな血糖値下がりまくリリーの巻でございます。

2026年終息説:特許失効がもたらす業界激変

しかしながら、敢えて断言とかしちゃいますと、まるでバブル相場のように熱狂したGLP1の加熱競争は、2026年に終息します。これ、まじまじ薬丸。

なぜなら、2026年にリベルサス、オゼンピックOzempic(セマグルチドsemaglutide)の特許がブラジル、カナダ、インド、中国を含む複数の国で失効するからです。失効して、すぐにジェネリックが出てくるのかどうか、そういうのはわかりませんが、もうすでにインドのジェネリック供給大手が準備に入っています。製薬業界の常識として、主要国での特許失効は市場構造を根底から変える破壊力を持っているのです。特許切れって、まるで恋人に振られるみたいに突然やってくるんですよね〜、パテント・ハートブレイク症候群でございます。

経済性が支配する冷徹な現実

確かに、今ではリベルサスよりも効能効果、特に減量率などが優れたGLP1も多いですし、パイプラインも多いです。臨床試験では驚異的な結果を示す新薬が次々と登場し、医学界も沸いています。でも世界で見れば、これはもう経済的面で、みんなリベルサスのゾロを買い求めるかと思います。多少効能効果が劣っても、安い方が良いに決まっています。この時点で、この分野の競争は終わりです。

医療経済学の観点から見れば、保険制度や医療費抑制圧力が強い現代において、コストパフォーマンスこそが最終的な勝敗を決する要因となるのです。結局、お財布が一番正直ってことですね。これぞまさに「安かろう、良かろう、GLP1はコスパが一番ろう」でございます。

ジェネリック参入への現実的シナリオ

リベルサスのゾロが出た後に、どんなに優れたGLP1の新薬が出したとしても、予想通りに売り上げを上げるのは難しくなるかと思います。これは単なる推測ではありません。

すでに世界のAPI供給局、世界のAPI供給の80%を占めるインドと中国では大手ジェネリックAPIメーカーがセマグルチドのAPI生産の準備を始めています。まあ、他の薬と違って複雑な分子構造なので、ジェネリックを作るのも簡単では無いらしいですが、必ずジェネリックを出してくるかと思います。技術的ハードルは高いものの、これらの国々の製造技術力と価格競争力を考えれば、参入は時間の問題です。もちろん、インドでAPIができれば、世界のジェネリックメーカーが開発、発売をすることになります。インドの皆さま、もはやAPI界のマトンマサラ。スパイシーな価格競争、チャイ、ラッシー。

市場構造の根本的変化と保険制度への影響

低価格で爆発的に普及したら、先進国でも保険償還はジェネリックにシフトするでしょう。もしかしたら、アマゾンのRxPassにもリストアップされるかもしれません。保険者の立場から考えれば、同等の効果が期待できるのであれば、より安価な選択肢を優先するのは当然の判断です。

そうなってくると、新薬はniche(超肥満患者や併発疾患ありの層)に限定というような未来になります。つまり、現在の巨大な市場は消失し、特殊な症例に対する限定的な用途でのみ新薬が生き残ることになるのです。アマゾンで薬まで買う時代ですよ奥さん。次は「お急ぎ便でGLP1お届け、明日までに痩せたい方はプライム会員に」とかなりそうです。まさにワンクリック・ダイエットの到来ですよ奥さん。

各プレイヤーの運命は既に決定済み?

密室の中で、すべてが静かに決まりつつあります。各プレイヤーの運命は、2026年という運命の日へと、まるで見えない糸に操られるように導かれているのです。

まず、事件現場その1:イーライリリー。どれほど画期的な新薬という「証拠」を提出しようと、ジェネリックという「真犯人」の登場と同時に、すべての努力は水泡に帰します。現在の株価上昇? 投資家たちの熱狂? それらはすべて、真実を知らない者たちの一時的な錯覚に過ぎません。彼らはまだ、自分たちが巻き込まれた巨大な罠に気づいていないのです。

事件現場その2:ノボノルディスク。ここでは更なる悲劇が待ち受けています。リベルサスRybelsus 、ウゴービWegovyという「黄金の鍵」を失った瞬間、同社の利益構造という精巧に組み立てられた建物が、まるでトランプタワーのように一瞬で崩れ落ちるでしょう。その音は、きっと業界全体に響き渡るはずです。同社の収益構造を調べれば調べるほど、この結末の不可避性が見えてきます。まさに、完全犯罪の証拠が揃いつつあるのです。

事件現場その3:サードプレイヤーたち。彼らこそが、この物語で最も哀れな犠牲者かもしれません。巨額の研究開発費という「身代金」を支払い、満を持して市場という「現場」に足を踏み入れた瞬間、すでにそこはジェネリックという「犯人」によって荒らされ尽くした後なのです。投資回収の機会は完全に奪われ、残されるのは「勝者なき消耗戦」という謎めいた結末のみ。

そう、これは製薬業界版の密室事件なのです。犯人は既に決まっている。凶器も明らか。そして被害者たちも、運命の時を待つばかり。最後に現場に立っているのは、ジェネリックメーカーという冷徹な探偵だけでしょう。まるで製薬会社版のアガサ・クリスティー、「そして誰もいなくなった〜GLP1編〜」の開幕です。

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効能より経済性:製薬ビジネスの本質

そして忘れてはいけません。製薬ビジネスを動かすのは効能ではない。経済性です。保険制度に支配された世界で、高い薬は切り捨てられます。効果が多少劣ろうが、安い薬が勝つ。これは冷徹な事実です。

医学的価値と経済的価値は必ずしも一致しません。どれほど画期的な新薬であっても、保険償還価格の壁を越えられなければ、患者の手には届かないのです。

GLP1市場もまったく同じです。2026年を境に、効能競争は完全に終わり、価格競争だけが唯一のルールになります。その瞬間、この熱狂は一気に冷め、業界全体が現実に引き戻されるのです。結局、製薬業界も商売です。患者さんの健康も大事ですが、お金がなければ薬は作れません。これぞ「健康第一、でもお金が一番」という、なんとも切ないリアル製薬物語でございます。ああもう、カネカネ、カネカネ言うなこのタコ!って感じなのであります。

投資家への提言:次の成長分野を求めて

投資家の皆さまにおかれましては、お早めに次の成長分野を探した方が良いかもしれないですね。GLP1バブルの終焉を見越した戦略的な投資判断が求められる時期に来ています。

バイオは広い。再生医療、細胞治療、希少疾患、新興バイオベンチャー――GLP1の陰で静かに芽吹いている分野はいくらでもあります。特に、特許保護期間が長く、ジェネリック参入が困難な領域や、個別化医療のようなニッチでありながら高付加価値な分野こそが、次の投資機会を提供するでしょう。賢明な投資家は、既に視線を次の成長ストーリーに向け始めているはずです。思えば、かつてのゲノム株、抗体医薬ブーム…みんな美しい思い出となり、今また新たな物語が始まろうとしています。バイオ投資の世界は、まさに諸行無常の響きあり。盛者必衰の理をあらわしております。GLP1の栄華も夢のまた夢、されど次なる希望を胸に歩き続けるのでございます。