週の真ん中過ぎまして、皆様いかがお過ごしでしょうか。何やら政治系のニュースも忙しくなっていますね。でもまあ、あの政党とあの政党がくっついて新党結成とか、いやあ、いくらなんでも、それは無いよね、みたいな雰囲気を醸し出しております。
そう。それは無いよね、ということが、起こってもおかしくない、今日この頃なのであります。もう、常識も次々と覆されるのです。
一昔前、いや、ふた昔前ですかね?? オーファンドラッグの開発は各製薬会社から敬遠されておりました。なぜなら、患者数が少なければ、採算後取れないと、思われていたからです。
ところが、昨年はFDAが承認した薬が46あるそうですが、その
半数がオーファンドラッグだったとのことですよ。
2026年1月、RAPS(Regulatory Affairs Professionals Society)はこう報じた。
2025年にFDA(CDER)が承認した新薬は46品目。そのうち約半分がオーファンドラッグだった。
要因は、いろいろありますよね。
「高薬価が取れるからだ」
「ROIが合うようになったからだ」
「だから製薬会社は、オーファンに向かったのだ」
こんな声が、ウォール・ストリートや兜町あたりから聞こえてきそうです。まあ、一見すると、理由もあるし、分析もできるし、淡々とした統計データに過ぎないように思えます。
しかしながら、
製薬業界に長く身を置いてきた人間にとって、この「半分」という数字は、簡単には読み流せないですね。
なにしろ、隔世の感がありますよね。希少疾病の医薬品は、どの製薬会社も敬遠してましたよね。
かつてオーファンが敬遠された理由(昔の常識)
一昔前、製薬会社がオーファンを嫌った理由はかなりシンプルでした。
患者数が少ない → 売上が立たない
臨床試験が難しい → 開発リスクが高い
医師・患者への浸透に時間がかかる
大手製薬の評価軸は「ブロックバスター」
要するに
ROIが合わない
これに尽きます。
MRを大量に投入して、数十万人〜数百万人市場を取る、というモデルでしたから。
今は「オーファンの方が合理的」になった理由
薬価と価格決定力の変化
オーファンは今や、
- 超高薬価が許容される
- 比較薬が存在しない or 少ない
- 医療経済的にも「代替がない」
- → 患者数が少なくても
1人あたりのLTVが異常に高い
結果として
「患者数 × 単価」
が、意外とブロックバスター並み、あるいはそれ以上になるケースも珍しくないですよね。
規制当局が“味方”になった
FDA(CDER)をはじめ、
- オーファンドラッグ指定
- Fast Track
- Breakthrough Therapy
- Priority Review
など、
開発リスクを制度的に下げる仕組みが整いました。
今回の46品目中、半分がオーファンという数字は、FDA自身が「ここを伸ばしたい」と明確に舵を切っている証拠でもあります。
サイエンスの進化
まあ、これは最も決定的な理由かと思います。
昔は:
- 病気の定義が曖昧
- 分子標的が不明
- バイオマーカーもない
今は:
- 遺伝子変異レベルで疾患を定義
- 患者を“精密に切り出せる”
- 小規模試験でもエビデンスが作れる
つまり
「患者が少ない」=「試験ができない」ではなくなったのですよね。これが、隔世の感の正体だと思います。
ビジネスモデルの変化
これは、サイエンスの進化に連動して、ビジネスモデルも変化したということですね。
オーファンは:
- MR大量投入不要
- KOL・専門医中心
- Medical主導(MSL主役)
- グローバルで横断展開しやすい
結果として固定費が小さく、組織がスリムということが実現しました。確かに、今の希少疾病の会社って、組織は大きくは無いですね。
→ スタートアップ、バイオベンチャー、ミッドサイズファーマに最適であるので、今の業界構造と、めちゃくちゃ相性が良いのかと思います。
大手ファーマの“防衛戦”という側面
これも重要ですよね。バイオベンチャーだけでなくて、大手も、防衛という意味でオーファンを開発したりしているのですよね。
- 既存大型製品は特許切れ
- ジェネリック/バイオシミラーの波
- 大規模パイプラインは失敗確率が高い
- その中でオーファンは、
- 競合が少ない
- 知財が強い
- 買収もしやすい
→ M&A前提の戦略として極めて使いやすい
昔と今
昔:「患者が少ないから儲からない」
今:「患者が少ないから儲かる」
という、
価値観の180度転換が起きています。
しかもこれは一時的なブームではなく、
- 規制
- サイエンス
- 医療経済
- 企業構造
すべてが同じ方向を向いています。少し怖いくらいですよね。
ただ、理由は、本当にそうなんでしょうか????????
それだけでは説明がつかない気がするのです。気がするというか、信じたいというか。もし本当に「効率」や「ROI」だけが理由なら、もっと早く、この流れは来ていたはずですよね。
制度も、科学も、別に、10年以上前から芽は普通にありましたよね。
それでも業界は、長い間、オーファンを“主戦場”にはしなかったのは、前述のとおりなのですが、ここにきてのオーファンを主流にする戦略。
オーファンは、疲弊した業界人たちが見つけた「生き残り策」なのか。
——違う。
僕が信じる理由ですが、
ただ、目覚めたのだと思うのです。
ただ、目覚めたのですよ。自分たちが、本来なすべきことに。
治療法のない、数は少ないが、確かに存在する患者さんに、手を差し伸べることこそ、製薬業界のミッション。
これまで、忙しさや合理性の名の下に、どこかで見て見ぬふりをしてきた大切なミッションに。
製薬業界のパッションは、ここにある
なんてな。なんだか知らないけど。
オーファンドラッグの潮流は、単なる市場戦略の転換ではない。
それは、
「誰のために薬を作るのか」
「我々は何者なのか」
という、
製薬業界が本来向き合うべき問いへの回帰だと思っています。
効率やROIは重要で、否定する気はありません。
だが、
それだけでは、人は動かないじゃないですか。
少数でも、声が小さくても、確かに苦しんでいる患者さんが、治療法を待っています。
多数の製薬会社が、そこに向き合うことを選び始めた。それだけの話ではないでしょうか。
半数がオーファンだった、という事実は、
製薬業界が少しだけ、
自分たちの原点を思い出した証なのかもしれません。
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