Over reachなCopayカードsign upに見え隠れする、これからの製薬企業の戦略としての「情報」

前述のようにアメリカには国民皆保険はありませんと、言いました。厳密に言えば、オバマケアがうまく機能していれば皆保険らしきものはあることはありますよね。オバマケアの話をし始めるとこれで終わってしまうので置いておきます。

さてアメリカにはCopay-cardというのがあります。これは保険会社と製薬会社が連携して医療用医薬品のブランドごとに保険加入者を支援するという仕組みです。たとえばギリアドのCopayカードはこれです(http://www.gileadcopay.com/)。よくあるのは保険の掛け金ごとにその決まりがカードに書いていあります。たとえば、「ソバルディで100ドル以上は払いません」とか、この場合は100ドル以上になった場合は保険会社がカバーすると言った具合です。これがブランドごとにあるわけですから、すごいですよね。アメリカではこのように保険会社と製薬会社が協力しあって個人保険の商品を細かく作っているのですね。

それは良いのですが 今回のこのメガブロックバスターになるかもしれないというアムジェンのレパサですが、Co-payカード作成に関してちょっとした物議を醸しています。なぜかといえば、通常よりもサインアップに関しての質問が多いというか、同意しなければならないことが多いというのがその理由です。人にはそれぞれ個人情報がありますよね。中には、あまり表に出したくない情報や、あるいは表に出すと不利になるので出したくない情報などがあると思うのです。アムジェンは今回、患者にCopayカードを発行する代わりにたくさんの個人情報を得ようとしています。この薬を必要とする患者の立場になれば、まあその情報を提供することも無理はないかと思うかもしれませんが、ちょっとした物議はアムジェンのプライバシーポリシーにもあります。このように明らかにオーバーリーチだという識者もいます。Copayカードを発行するためにかなり踏み込んだ質問をするのですね。で、その情報は「自分たちで使うよ」ということです。

なんでそんなことをするのか。わかりませんが、なんとなくこれから訪れるであろう個別化医療のさらなる発展、オーダーメイド、そして再生医療に欠かせない個別の個人情報に関係があるような気がしてなりません。アメリカ人の、へたしたら3人に1人が興味をもつわけで、7000万人もの個別の健康状況がわかったら、すごくビジネスにアドバンテージを持てます。アムジェンのパイプラインを見ても当然オンコロジーや個別化医療に関係あることがほとんどですし、さらに今後の開発領域にもこのまさにビッグデータはかなり有用です。そうだとすると戦略的な意図も伺えます。

広く使われるようなコレステロールや糖尿病の開発から手を引いてトレンドの専門領域やオーファンの開発に着手してきた製薬企業ですが、実はそれらの専門領域やトレンドのオーファンに着手するためにプライマリー製品のビッグデータを使うということがあり得るかもしれません。医薬品は情報を持った化学物質と言われてきて、その情報部分が値段、薬価を決めてきました。今までの「情報」とは、その物質そのものの毒性や安全性、副作用情報や用法用量などなどでした。今後その「情報」部分が個人個人のデータ、これからニーズがあるであろう潜在的なマーケットのneedsとwantsの掘り起こし、ひいては今後の開発重点エリア策定への重要なデータとして使われるのでしょうか。

Copayカードにサインアップすることにやたらとアグリーメントが多いこの現状、そしてプライマリー領域でたくさんの人々が持つかもしれないこのデータは、今後製薬企業間での「情報戦」?につながっていくのでしょうか。成り行きが注目されますね。

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