全米視聴率50%のスーパーボウルで流れたクスリのCMに、文句をつけた州知事

バーモント州はアメリカ北東部に位置しています。アメリカ東部はニューイングランド地方と呼ばれ、西海岸の明るい雰囲気とは一味違い、美しい紅葉などで有名ですね。5大湖に次ぐ6番目の湖と呼ばれるシャンプレイン湖のほとりは今頃雪景色でしょうか。スノーボードのバートン、アイスクリームのベンアンドジェリー、ドレミの歌のトラップファミリーの家などなど、旅情あふれる地域です。フランス語圏のカナダのケベックに近いので、そもそもバーモントとはフランス語で緑の山という意味ですね。湖の名前のシャンプレインもフレンチサウンドですね。

前置き長くなりましたが、先日、その風光明媚なバーモント州において、州知事であるピーター・シュムリンさんが突然製薬会社2社にクレームをつけました。しかも内容がこの製薬2社が全米での社会問題である麻薬中毒者を助長しているというのです。バーモントらしからぬ、穏やかなことではありません。

全米のテレビ視聴率がほぼ50%に近いという番組があります。それはスーパーボウルのテレビ中継です。今年、2016年は、デンバー・ブロンコス 対 カロライナ・パンサーズが戦い、2月8日にカリフォルニア州サンタクララにあるリーバイス・スタジアムから全米中継されたのです。この全米が熱狂するお祭りのハーフタイムショーにはコールドプレイ、そして名だたるビッグスターがゲスト競演しました。

そんななか、当然テレビCMのスポットも、効果覿面でしょう。なにしろ視聴率は主催者の発表で49%なのですから、アメリカ人の半数が見ているのですよ。すごいです。そしてCM権利料もこの世のものとも思えない高額なのですが、各社こぞってCMの権利を買うわけです。

今回、2016年、このスーパーボウル中継の飛び抜けて破格のテレビCMを出した製薬会社がありました。なんとアストラゼネカと第一三共が全米で展開している薬についてのCMです。その動画はこちら!!

これは、モバンティックのCMです。モバンティックは、去年アメリカで発売された新規作用機序の便秘薬です。オピオイド系のペインリリーバーの副作用で生じる便秘を治す薬で、第一三共の米国子会社「第一三共インク」とアストラゼネカ(AZ)が米国を対象とした共同商業化契約を結んだのです。そしてまさに、今年初めの全米1のイベントのテレビCMの権利を購入したのでした。なんか、アメリカの薬のCMって、派手ですね。

そこまではよかったのですが、このCMに対して文句を言っているのがバーモント州知事のピーター・シュムリンさんなのです。なぜでしょうか。意外にもその理由は、アメリカ社会が抱える闇に関係ありました。ピーターさんは民主党で3選の知事です。就任当初から麻薬対策には力を入れてきました。なんか、この話題旬ですね。まあ、それはさておき、ここ数年、東海岸、つまりバーモント州を含むペンシルバニア州、メリーランド州ほか東海岸全域で、フェンタニル(ヘロインと同じオピオイド系の強力な合成麻薬)を混ぜたヘロインが流通しているということが問題になっていました。闇ですね。当然州知事も対策しなければ選挙にも勝てないわけで、この点、常に対策しているということをアピールしているのです。

モバンティックは便秘薬ですが、OIC(Opioid-Induced Constipation)つまり、オピオイド誘発性便秘の治療薬なのです。テレビCMもオピオイドの副作用の便秘で悩む人が登場します。さて、このオピオイドなのですが、前述のヘロインと言ったように、習慣性や常習性など、ちょっと問題がありまして、全米では危険な使用も多いです。確かマイケルジャクソンが主治医に頼んで注射したのもそうですよね。依存してしまうわけです。これがアメリカの闇です。

オピオイドの種類(http://precise-mind.com/mississippi-psychiatrist/suboxone-clinic-opiate-help-ms/)

opioid list
オピオイドを使って、便秘になっても、この薬を服用すれば大丈夫!? つまり、ピーター・シュムリンさんが言っているのは、この製薬会社はスーパーボウルのCM放映権を馬鹿高い金額で購入し、それを全米のオピオイド危険使用者を助長するようなミスリードをしているのか?それは不適切ではないか?と、言いたかったらしいのです。その記事はこちらです。

もちろん、AZも第一三共インクも当然ですがオピオイドの適正使用に関しての副作用の便秘が対象で、危険使用者など全く対象外なのは言うまでもないのですが。。
さてその後ですが、知事の発言をこの両社ともになんとなく様子を見て、なんとなく無視というか、スルーしているようです。

ただこのCMたしかにインパクトありますよね。なにしろopioidを使っている人口は、おそらく日本の比にならないでしょうから。詳しくは知りませんが。これは売れそうですね。一体いくら売れるのでしょうか。成り行きが注目されますね。

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