なぜ糖尿病マーケット?

新薬のマーケットは基本的に先進国であるということが前提になっています。例えば、発展途上国において、抗がん剤や低用量ピルをプロモーションしようと思っても、難しいですよね。

ある程度国が豊かになってくると、まず初めに普及するのが抗生物質でしょうか。日本でもペニシリンに始まる抗生物質が戦後製薬企業を成長させた歴史がありますよね。

アメリカに次ぐマーケットが日本、そしてその次がヨーロッパ…長年にわたり、グローバルでこの順番のマーケット規模で医療用医薬品は動いてきました。

そんな中、やはり見逃せないのが中国市場の目覚しい発展です。なにしろ、富裕層と言われている人々が1億人を突破しているらしいですから。当然のことながら、富裕層は、ヘルスケアにおいてもより良いものを求めているわけです。1億人と言えば、まるで日本そのものです。

世界第二位のマーケットである日本と同等規模のマーケット、しかも更なる急速成長を続けている、一種そら恐ろしいマーケットが突如現れているわけですから、ドラッグメジャーが熱い視線を浴びさせていることは周知の事ですし、当然のなりゆきです。

中国市場は問題がないわけではありません、むしろ問題満載でしょうか。法整備、インフラ整備、カルチャーの面でまだまだ成熟することが必要なのです。富裕層は一億人居るが、ソフト面もハード面も成熟が必要。

そんな中国市場に、現況で勝負できるものはあるのか? あるなら、どの疾患の医薬品で先に勝負するのか? それとも、インフラ整備を待つのか?

市場規模は大きいかもしれないけれど、とても難しいターゲッティングにドラッグメジャーは直面してきました。簡単においしい話は、なかなかありませんよね。

製薬メジャーが先に目をつけたのか、はたまたニーズが先に発生したのかはわかりませんが、答えは、糖尿病マーケットです!

昨年の資料で中国の糖尿病患者数は9240万人で患者数世界一と言われているインドをも抜き、グローバルナンバーワンに躍り出ました。(誇るものではないかもしれませんが…。)

「New England Journal of Medicine」によると、2007年6月から2008年5月にかけて行われた調査で、中国人の成人の糖尿病有病率は9.7%ですから、ほぼ10人に1人。さらに予備軍は15.5%だそうですから、日本の有病率7.3%を軽々抜いてしまっているのです。

インフラはそれほどまでは必要としない、急性期に重篤にはならないがコントロールが必要、重症化するととても怖い、薬物療法、運動療法で改善する・・・・。こんな状況が、実は中国の現在の状況にも偶然マッチしてしまい、ほぼ糖尿病の市場として完成されていると言ってよいのです

突然、とてつもなく大きな患者群が、もう今まさに口をあけて医療用医薬品を求めている・・・。

この一連の現状は、実はドラッグメジャーにおいて、中国戦略だけでなく、グローバル全体の開発戦略にも影響を及ぼしているのです。

糖尿病の治験に積極的になっているメジャーは、その理由を、現代人のQOL、生活習慣改善、合併症の早期予防…などなどと位置づけてはいます。しかしながら、大方のアナリストは中国マーケットの存在が、ドラッグメジャーを、グローバルで糖尿病マーケット重視に走らせていると考えています

グローバルで動くからには、ドラッグメジャーは競争に勝たなくてはなりません。もはや中国一国に関連する話ではなく、世界戦略として失敗が許されなくなってしまったのです。

ドラッグメジャー各社は、人材面でも、グローバルで優秀な人材を中国に集め始めました。事実、私が懇意にしていた某企業のやり手の外国人の営業本部長は、先日中国法人の社長に就任し、日本を後にしました

ドラッグメジャー各社は今、水面下ではありますが、勝ち抜くために失敗の許されない中国マーケットの攻略合戦に火花を散らしているのです。

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