クライアントの外資系メガファーマの日本法人の薬事部のトップをサーチしていました。少し前のことです。
有力な候補としてコンタクトをした、国内準大手製薬企業の薬事課長。長年、その日本企業で勤務してきた方です。留学経験などはありませんが、ご自分で勉強されて、英語も話す方。まあ、優秀な方です。ポジションには、興味を持っていただき、面接も進んだものの、やはり外資のカルチャーとは違うということで、採用にはいたりませんでした。残念な結果ではありましたが、ご本人にも納得していただきました。
しばらくして、その人から電話が。
「ウチの海外オフィスに、人を探しているんだけど・・・」
要は、その方が勤務している国内準大手製薬会社の欧米にあるオフィス向けにポジションがあるとのこと。そこまでは、良かったのですが、そのポジションの内容がいまいちよくわからない。
「欧米にあるオフィスには、現地で採用した人がそれぞれ10人くらいすでに居るんだけど・・・」
ここまで言うと、彼は間をおいて、次の言葉を考えているように見えたので、
「そうですか、それで、今回は、現地の人の増員ですか。どのようなロールですか。」
と、こちらから聞くと、
「いや、実は、欲しいのは日本人で・・・その、ロールは、特に決まっているわけではないんですけど。」
特に役割の決まっていない、日本人の、欧米勤務での採用。。??
「何をするポジションですか。」
僕の問いかけに、彼の答えは意外なものでした。まず背景から言うと、欧米のオフィスに勤務する現地人たちが、とてもアグレッシブであるそうです。そして、次々に案件を先に進めるとのことです。ここまで聞いて、僕は言いました。
「それ、とてもすばらしいじゃないですか。良いですね。」
ところが、問題は、彼ら(欧米オフィスの現地人たち)が彼らだけの判断でどんどん物事を進めてしまうということらしいのです。結果的にすべて良いことだったので、今まで問題は生じなかったのですが、ヘッドクウォーターは、日本なので、できれば物事を進めるときには、日本からの指示を待ってほしいということだそうです。その会社の場合、日本で物事を進めるかどうかを決定するには、10人以上のハンコと10回以上の会議が必要なので、社内のスケジューリングだけでも数ヶ月かかるそうで、欧米法人の現地人たちがそれを待ちきれずに進めてしまうということです。
「なるほど、では、今回のポジションは、欧米から、日本の決定をもっとスピーディにさせるように働きかける役目ですね。」
という、僕の問いかけに対して、彼は言いました。
「違います。彼らを止めて、日本の決定を待たせるように働きかける役目です。」
難しい。微妙。このポジションにどういうモチベーションを持たせればよいのだろう・・・。しかも、彼らのやっていることが結果的にすべて良い方向になっているということであれば、それで良いのに。いったいなぜ彼らを止める必要があるのでしょうか。
理由は、こうでした。日本側に居る、偉い人の中に、事態を把握できずに物事が進むことを嫌がっている人がいる。そこで、その偉い人を納得させるためには、今までどおり、きちっとした会議を開かなければならず、さらに、その会議の結果、その偉い人が納得できなければならないと・・・・。内容を知らないで、知らないところで物事が進むなんて、もっての他だそうです。
結局、その日本の製薬会社は、僕のクライアントにはなりませんでした。
いやいやー。日本の製薬会社は、海外に活路を見出している昨今です。これからは、嫌でも、グローバライズが必要なのですが。しかも、その会社はそこそこ大きな会社です。大丈夫かなと思ってしまいます。