仕分け

先日、政府の行政刷新会議の「政策提言仕分け」で、ジェネリック医薬品の使用促進などについての提言がなされました。ジェネリックの促進…って、もう20年以上前から言われていることだけに、熱い反対議論などもないし、何らかの既得権限を守るような団体からの反論もないし、「まあ、そりゃそうだよね…。」というような雰囲気が大勢を占めておりました。

ついでに、「このほか、」という形で「市販類似医薬の自己負担割合の引き上げ試行を」という意見が取りまとめられたと報道されております。

ジェネリックの促進であれば、古ぼけた提言かもしれませんが、実は、この「このほか」で議論された市販類似薬の自己負担の引き上げというのは、かなり、かなり、重要なニュースで、大きなインパクトが実はあるのです。

市販薬というのは、いわゆる、薬局やドラッグストアで買える薬です。たとえば、ルルとか、キャベジンとか、色々ありますよね。 

自分で買い求めることができる市販薬の中には、医師から処方される処方薬と同じものがあります。

たとえば、何でも良いのですが、よくテレビのCMでやっている、僕自身も愛用している「ガスター10」を例にあげると、「ガスター」というのは商品名で、物質の名前(一般名)はファモチジンという物質です。 医療用医薬品(処方薬)では、先発品のガスターと、複数の企業から発売されているジェネリック品がそれぞれの商品名で存在します。つまり、ファモチジンという物質は、医療用医薬品と、OTC(市販薬)が存在するわけです。

では、値段を見てみましょう。医療用医薬品の先発品であるガスター錠10mgの薬価は1錠あたり31.1円です。同じく医療用医薬品ではありますが、数十社から出ているジェネリック品でおそらく一番低薬価であるブランドの一つは「ファモチジン錠10mg」(共和薬品)で、9.6円です。薬価は保険で請求しますので、実際には国が、もっと高い部分を負担していることになります。

そして市販薬(OTC)のガスター10ですが、たまたま見つけたものは、6錠包装で931円ですから、1錠当たりにすると155円です。

ガスター錠10mg  薬価 33.1円
ファモチジン錠10mg 薬価 9.6円
ガスター10  市販販売価格 155円
つまり、胃がムカムカして、すっきりしたい時に、ドラッグストアで「ガスター10」を購入することも、大変すばらしいことではありますが、医院でお医者さんに「ファモチジン錠10mg」を処方してもらえば・・・・ということになるわけです。

このほか、乳酸菌を摂取してプロバイオティクスをしたければ、OTCの乳酸菌製剤を購入する、あるいは毎日数百円かけてヨーグルトを食べるのも良いのですが、お医者さんにビフィズス菌製剤を処方してもらえば、1錠6円位ですみます。風邪の季節でレモン何個分のビタミンCの薬も、お医者さんでアスコルビン酸を処方してもらえばOK。仕事のし過ぎで過労、タウリン1000ミリグラム摂りたいなら、お医者さんでアミノエチルスルホン酸散を処方してもらえば、1000ミリグラム、つまり1グラム薬価10.2円です・・・・・・。

お医者さんに処方してもらえば、少ない負担で必要な医薬品が手に入り、あとは国が負担してくれる…これが、世界に誇る日本の保険薬価制度だと、思いませんか!? 納税者であれば、この恩恵を受けるべきだと、常日頃思っているのです。
今回の政策提言仕分けでは、このように市販薬で存在するものまで、ぶっちゃけ、国が面倒見なくても良いんじゃないの? ということかもしれません。市販薬で求められる同じ成分の医療用医薬品の、自己負担を上げようというのです。確かに、言う事はわかりますよね。市販薬で買えるし、実際に買っている人も居るわけだから、自己負担を引き上げても良いのでは?ということですよね。 上の例で言えば、ファモチジン錠10mgの自己負担を上げろということですよね、なぜならガスター10が存在するわけだから。。

じゃあ、この恩恵は受けられなくなる?? そうなるかもしれません。ビタミン、乳酸菌、タウリン、ロキソニン、ガスター、その他その他、薬価の恩恵を受けたい方は、今のうちにお医者さんにかかりましょう!? 的な風潮になるのでしょうか、そのうちに。。笑えません。
そしてさらに踏み込んだ議論。それは、OTCで存在する医薬品の、薬価削除です。 つまり、ドラッグストアで売っている薬は、保険薬価収載から削除するということですよ。

想像してください。

歯医者さんで、虫歯の治療をしました。「はい、では、一応痛み止めにロキソニンを処方しておきますね…」という会話が、「はい、ではドラッグストアでロキソニンSか、何か好きなのを勝手に買ってください…」になるかもしれません。 

風邪をひいて、内科で抗生剤を処方されました。「抗生剤を出しておきますので、胃を保護するために、ドラッグストアでビオフェルミンSを買って飲んでください

こんな時代がすぐそこまで来ているかもしれません。
・・・・そして、ここからが、もっと踏み込んだ話に。ドラッグメジャーがこの制度改革を実は注目しているのです。その理由は? またの機会に。

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ノルバスク、アムロジン、そして麦とホップ

ジェネリック医薬品はカニバリゼーションか?

新規事業が既存事業を食いつぶすことを、マーケティングの世界ではカニバリゼーションと呼びますよね。たとえばレコード会社はダウンロード販売を手がけていますが、既存のCDの売り上げが頭打ちになり、ついにバージンメガストアはその存在意義を失い、日本ではTSUTAYAに吸収されて解散しました。 歴史的に言えば、いわゆるレコード盤の時代もあったわけですから、時の流れには逆らえないということでしょうか。

ビールにおいても、その高い税率と戦うことなく、メーカーによる強かな戦略で登場した発泡酒は、今やビール市場を侵食し、さらには麦芽以外の原料を使った第三世代のビールが登場しております。

いずれにしても消費者側からは何らかのメリットがある、生産者側としては製品自体にユーティリティ、つまり効用が付帯していることが条件になっているかと思います。消費者目線では、安い、便利、おしゃれ・・・などなど、生産者側からは、「売れる」ということにほかなりません。

ただし売れる製品を開発することが必ずしも成功とは限りません。なぜなら既存の築き上げたマーケットを食いつぶし、単価の安い製品がシェアを伸ばす訳ですから、生産者としては、更なる大量な売り上げを達成しなければ、利益率でカバーできなくなるというわけです。 この点がいわゆる、カニバリゼーションによる企業のジレンマでしょうか。

若干前置きが長くなりましたが、ジェネリック医薬品はカニバリゼーションでしょうか。効能・効果、安全性などは先発品と同等で安価であれば、当然先発品マーケットは食いつぶされる可能性が高いですよね。

ところが、つい最近までは、カニバリゼーションとは言えなかったと思います。なぜなら、先発品メーカーはジェネリック医薬品を扱っていなかったからです。扱っていたとしても、自社先発品のジェネリックはなかったと思います。

つまり、医薬品業界は、ビール業界とは違ったのです。当たり前といえば当たり前すぎますが・・・。

例えばサッポロビールのラインアップを見ると、エビス(プレミアムビール)、黒ラベル(ビール)、生搾り(発泡酒)、麦とホップ(第三のビール)、プレミアム アルコールフリー(ビール風飲料)…等等となっていて、結局のところ、単価の高いビールを、価格の安いカテゴリーの製品が侵食しているようにも見えます。単価の安い製品で利益を伸ばすには、物量をさらにアップさせなければならなくなり、辛いところです。

一方で医薬品をみると、例えば昨年満を持して登場したアムロジンです。先発品はファイザーのノルバスクで、ジェネリックは30社以上のジェネリックメーカーから発売されましたが、ファイザーからは発売されていません。 先発品とジェネリックでは業界が違うので、同じ製品が別会社から出てくるということになります。 つまり、カニバリゼーションではないかもしれないということです。

要するに医薬品業界においては、特許が切れた先発品は、別のジェネリックメーカーによって市場が縮小するばかりということになります。
先発品メーカーはこのような状況をただただ眺めているだけでしょうか。もちろん、違います。それは、先発品メーカーによるジェネリック医薬品マーケットへの進出によって、業界地図が激変しようとしていることから明白です。

ファイザーによるエスタブリッシュ医薬品事業部、サノフィによる日医工との提携、それよりだいぶ前のエルメッドエーザイ、田辺販売・・・そしてアボットが予定している分社化…などなどがその地図の激変です。

今まで、医薬品業界はセラピューティイクエリアでカテゴライズされてきました。つまり、オンコロジー、CNS、イミュノロジー、プライマリーなどなど、ファンクショナルなセグメントでした。もしかしてこれからは、新薬・長期収載品・ジェネリックなどなど、クロノロジカルなセグメント、タイムユーティリティに戦略をシフトしてくるかもしれません。 (カタカナが多くてすみません。日本語でなんと言うのか調べるのが大変なので…。)

では、その医療用医薬品におけるタイムユーティリティに関する個人的な考察は、別の機会にこちらに書かせていただきます。