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患者は顧客?

ハインツから来た人が、ノバルティスのトップがつとまるか?

 

Can The Man From Heinz Keep Novartis On Top?

-Matthew Herper, Forbes

 

ノバルティスのglobalの本社のトップ人事でちょっとした面白い記事がありました。

 

医薬品業界でこの20年の辣腕経営者といえば、ノバルティスのダニエル・ヴァセラを置いて他に居ません。 

元々医師として活躍していたダニエルさんは、サンドとチバガイギーの1996年の合併以来、20年にわたって、第一線で活躍されました。なんといっても、その開発ストーリー本まで出しているグリベック、ゾメタ、ディオバンなどなどのヒット商品を生み続けました。また、循環器のみならず、呼吸器、オンコロジーへのスペシャル路線も定着し、着実に会社発展に貢献してきた経営者といえます。2004年にはタイムズ誌の「もっとも影響力のある100人」に選ばれているほか、アメリカ芸術科学アカデミーの会員に名を連ねるなど、ヨーロッパのみならず世界中で活躍しています。 

医薬品業界のみならず、すべての業界の経営者の中でも評価の高いダニエルさんですが、そろそろ将来の跡継ぎを探し始めました。そして今回の人事発表が若干物議を醸しております。 

なぜなら、その超有名経営者ダニエルさんが指名した男は、ノバルティス在籍3年と少しだけ、それ以前の彼のキャリアの大部分を過ごした会社は、ケチャップで有名なあのハインツなのですから。 

渦中の人、ジョセフ・ジメネスさんは、医薬品業界経験たった3年ちょっとで、グローバル・メガファーマのC-suite、しかもCEOになったのです。ちなみに日本法人においても、しっかりと取締役会長になっております 

この人事にはさすがにいろいろと異論があったようです。

 

ノバルティスの事に限りませんが、よく製薬会社の人事で大事なことは、第一にどれだけこの業界を知っているのか? という率直な議論です。 

ただし、その知識偏重型の人事が、医薬品業界の残念な側面の一つである閉鎖性を作り出しているような気がします。 

なんというか、他からの人材を受け入れにくい事です。医薬品業界では、知識の有無ということが、ほかの業界よりもプライオリティが高いのです。 とにかく専門的すぎるが故に、他から入れないという、学術的な要因があります。 その弊害としては、ただ単純に知識を獲得している者が、単純に知識が無い者よりも主要なポストについてしまうことがあります。 さらに、単純に知識がない者へのイジメ的な問題は、意外と多く存在するのです。 製薬会社はアカデミア集団ではなく、営利企業ですので、キーパースンに求められるのは、知識もさることながら、ビジネスのセンスやとっさの判断力などではないでしょうか。 

さて、ノバルティスに話を戻します。今回のジョセフさんの抜擢ですが、個人的に大絶賛するところであります。  

なぜかと申しますと、とにかく、変化が大切だと思うからです。この異文化というか、違った業界からの抜擢は必要なことだと思います。 

奇しくも医薬品業界は2011年が大型ジェネリックが始まる年、2012年は人員が流動する年とも言われ、大きな変革期にあります。 

最近のノバルティスのアクティビティを見ると、OTCに関連する事が多いことは関係ないでしょうか。世界第二位のマーケットであるここ日本でも、OTCで発売されている同成分の薬価削除などの議論が持ち上がっているところです。 

医療用医薬品は、エンドユーザーが患者ではあるものの、実際の営業の矛先は処方権のある医師です。医師相手のビジネスですから当然高い専門性が求められるでしょう。 

それに比べると、OTCは、まさに患者がダイレクトカスタマーになるのです。営業的には、専門性もさることながら、やはりセンスが問われるのではないでしょうか。 

特に、OTCの中でも最近議論になるのが、リピトールなどの所謂慢性疾患の製品ですよね。慢性疾患って、高血圧や高脂血症、糖尿病などですよね。 

慢性疾患の患者って、なんというか、普段、つまり日常生活は元気ですよね、比較的。 ですから、このマーケットを考えるときに、個人的には「患者 patient」、というよりも、「顧客 consumer」を意識したマーケティング、開発が必要な気がします。コンシューマー業界では、顧客第一主義です。 医薬品業界よりも、もっとユーザーオリエンテッドといえるでしょう。 

患者ではなく、消費者? 個人的に、OTCや予防医学、サプリがもっと増えてくると、医療用医薬品メーカーはこちらのウェイトが上がってくることは明らかです。 

そうなってくると、知識偏重でふんずり返っていたおじさんたちの出る幕はなくなってきますよね。彼らのプライドも破壊されます。そして大きく言えば、医療用医薬品業界の参入障壁も破壊されていくのではないでしょうか。 

もしこれらが、本当に進むなら、今回のダニエルさんによるジョセフさんの抜擢人事は、かなり先見の明がある改革と言えるのではないでしょうか。コンシューマー業界に長年居た人物ですから。 

2011年から、大きく変革している医薬品業界、そんな中での大胆人事。新しい時代の到来を告げているような気がしてなりません。

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OTC どうでしょう。

あけましておめでとうございます。仕事始めだ!と思ったら3連休ですね。

さて、昨年末から、このblogでは製薬業界における所謂2011年、2012年問題らしきネタを紹介させていただいておりました。何しろ世界一のリピトールだけに、話題が尽きません。

そのリピトールが世界一の座を明け渡すと、そこに追随している品目の一つがネクシウムですね。オメプラールに次ぐプロトン・ポンプ・インヒビター(PPI)でアストラゼネカが日本法人でも昨年売り出しましたね。

日本のマーケットにネクシウムを出すにあたって、AZが単独で売るのか、それともリピトールのように他社と組んで併売をするのか? ということが発売以前から注目されておりました。

結果的にはご存じのように併売という形をとりました。大型新薬ですから、それなりのプロモーションが要求されます。AZ一社ではなく、他社と組むことによってMRの実質的な数的メリットを狙ったことになります。日本のマーケットを攻略するうえで、多数のMRによる人海戦術が功を奏するという判断があったのかなと思います。

そのパートナーがまさに第一三共ですよね。 ただし、併売と言っても色々な手法があるのですが、AZがクレストールの時に塩野義と組んで色々と生じた諸般の課題をクリアすべく、マーケティングとプロモーションというすみわけをすることに落ち着いたわけです。 2社が痛みを分けて、けんかをして奪い合うような形ではなく、仲良くみんながハッピーになれるようなやり方をAZは選びましたよね。 いずれにしても、AZはブロックバスターを日本法人では単独で売るという選択をしなかったので、MRを単独で増員しなくて済んだのです。

そのパートナの第一三共は、ネクシウムを扱い、さらに今まで世界一だったリピトールのジェネリックを、子会社ランバクシーを通じて世界市場で売っている。 何だか、うまいことやっているように見えますね。 さらにランバクシーは、テバとの提携をして、テバの販売網に「ジェネリック・リピトール」を乗せようとしていますね。 まさに、日本でも大洋と興和テバを買収したテバですから、日本市場でも攻勢をかけてくるのでしょうか。それはわかりません。

またまた話がリピトールに戻ってしまいますが、高脂血症は慢性疾患ですから、動脈硬化の予防的に処方されている人も併せますと、相当長い間リピトールを飲み続けているという患者さんが多いです。リピトールの服用に慣れているご年配の方にとって、「同じ薬です」と言われても、「アトルバスタチン」という風に名前も色も変わると、何か違うものに変わった気がしてくる方も多いです。

ジェネリックでは、日本でも一般名が商品名というように統一されてきておりますので、名前が変わり、患者さんにとっては、なんか違うという感覚をぬぐいきれません。特にブランド好きな日本人にとってはなおさらのことだと思います。

「ジェネリックが良いのはわかるけど、先生、私は今までのリピトールで良いですよ…」という人も多いでしょう。さて、この日本人の変化が苦手、ブランド好きという特徴をマーケッティングに反映させると、どうなるか少し考えてみました。

実は先日こちらで取り上げました、OTC薬として存在する医療用医薬品の薬価収載削除の動きですが、実はこの日本人のメンタリティが大きな影響を及ぼしかねないと、密かに思っております。

だいぶ前から報道されていることですが、現在、米国でファイザーがFDAに打診中の案件の一つに、リピトールのスイッチOTCということがあります。

Pfizer May Market Own Over-the-Counter Lipitor Pill

こんな慢性疾患の医薬品のOTC化が可能なのかどうなのか、わかりません。が、もしも本当に可能であり、事実としてOTCになった時には、リピトールの薬価が削除されちゃうかもしれませんよね・・・・。

そして、「リピトール」というブランド名がOTCとして蘇るのです。ブランド好きで変化が苦手な日本人なら、なじみの深いこの名前のOTCは、「アトルバスタチン」よりも売れるかもしれません。もちろん、「リピトール」というブランド名を名づけることが許される企業は、ファイザーですよね。

世界第二位の医薬品マーケットの日本で、スイッチOTCは波紋を呼びそうですね。ただ、この実現性は未知数です。

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仕分け

先日、政府の行政刷新会議の「政策提言仕分け」で、ジェネリック医薬品の使用促進などについての提言がなされました。ジェネリックの促進…って、もう20年以上前から言われていることだけに、熱い反対議論などもないし、何らかの既得権限を守るような団体からの反論もないし、「まあ、そりゃそうだよね…。」というような雰囲気が大勢を占めておりました。

ついでに、「このほか、」という形で「市販類似医薬の自己負担割合の引き上げ試行を」という意見が取りまとめられたと報道されております。

ジェネリックの促進であれば、古ぼけた提言かもしれませんが、実は、この「このほか」で議論された市販類似薬の自己負担の引き上げというのは、かなり、かなり、重要なニュースで、大きなインパクトが実はあるのです。

市販薬というのは、いわゆる、薬局やドラッグストアで買える薬です。たとえば、ルルとか、キャベジンとか、色々ありますよね。 

自分で買い求めることができる市販薬の中には、医師から処方される処方薬と同じものがあります。

たとえば、何でも良いのですが、よくテレビのCMでやっている、僕自身も愛用している「ガスター10」を例にあげると、「ガスター」というのは商品名で、物質の名前(一般名)はファモチジンという物質です。 医療用医薬品(処方薬)では、先発品のガスターと、複数の企業から発売されているジェネリック品がそれぞれの商品名で存在します。つまり、ファモチジンという物質は、医療用医薬品と、OTC(市販薬)が存在するわけです。

では、値段を見てみましょう。医療用医薬品の先発品であるガスター錠10mgの薬価は1錠あたり31.1円です。同じく医療用医薬品ではありますが、数十社から出ているジェネリック品でおそらく一番低薬価であるブランドの一つは「ファモチジン錠10mg」(共和薬品)で、9.6円です。薬価は保険で請求しますので、実際には国が、もっと高い部分を負担していることになります。

そして市販薬(OTC)のガスター10ですが、たまたま見つけたものは、6錠包装で931円ですから、1錠当たりにすると155円です。

ガスター錠10mg  薬価 33.1円
ファモチジン錠10mg 薬価 9.6円
ガスター10  市販販売価格 155円
つまり、胃がムカムカして、すっきりしたい時に、ドラッグストアで「ガスター10」を購入することも、大変すばらしいことではありますが、医院でお医者さんに「ファモチジン錠10mg」を処方してもらえば・・・・ということになるわけです。

このほか、乳酸菌を摂取してプロバイオティクスをしたければ、OTCの乳酸菌製剤を購入する、あるいは毎日数百円かけてヨーグルトを食べるのも良いのですが、お医者さんにビフィズス菌製剤を処方してもらえば、1錠6円位ですみます。風邪の季節でレモン何個分のビタミンCの薬も、お医者さんでアスコルビン酸を処方してもらえばOK。仕事のし過ぎで過労、タウリン1000ミリグラム摂りたいなら、お医者さんでアミノエチルスルホン酸散を処方してもらえば、1000ミリグラム、つまり1グラム薬価10.2円です・・・・・・。

お医者さんに処方してもらえば、少ない負担で必要な医薬品が手に入り、あとは国が負担してくれる…これが、世界に誇る日本の保険薬価制度だと、思いませんか!? 納税者であれば、この恩恵を受けるべきだと、常日頃思っているのです。
今回の政策提言仕分けでは、このように市販薬で存在するものまで、ぶっちゃけ、国が面倒見なくても良いんじゃないの? ということかもしれません。市販薬で求められる同じ成分の医療用医薬品の、自己負担を上げようというのです。確かに、言う事はわかりますよね。市販薬で買えるし、実際に買っている人も居るわけだから、自己負担を引き上げても良いのでは?ということですよね。 上の例で言えば、ファモチジン錠10mgの自己負担を上げろということですよね、なぜならガスター10が存在するわけだから。。

じゃあ、この恩恵は受けられなくなる?? そうなるかもしれません。ビタミン、乳酸菌、タウリン、ロキソニン、ガスター、その他その他、薬価の恩恵を受けたい方は、今のうちにお医者さんにかかりましょう!? 的な風潮になるのでしょうか、そのうちに。。笑えません。
そしてさらに踏み込んだ議論。それは、OTCで存在する医薬品の、薬価削除です。 つまり、ドラッグストアで売っている薬は、保険薬価収載から削除するということですよ。

想像してください。

歯医者さんで、虫歯の治療をしました。「はい、では、一応痛み止めにロキソニンを処方しておきますね…」という会話が、「はい、ではドラッグストアでロキソニンSか、何か好きなのを勝手に買ってください…」になるかもしれません。 

風邪をひいて、内科で抗生剤を処方されました。「抗生剤を出しておきますので、胃を保護するために、ドラッグストアでビオフェルミンSを買って飲んでください

こんな時代がすぐそこまで来ているかもしれません。
・・・・そして、ここからが、もっと踏み込んだ話に。ドラッグメジャーがこの制度改革を実は注目しているのです。その理由は? またの機会に。