ノルバスク、アムロジン、そして麦とホップ

ジェネリック医薬品はカニバリゼーションか?

新規事業が既存事業を食いつぶすことを、マーケティングの世界ではカニバリゼーションと呼びますよね。たとえばレコード会社はダウンロード販売を手がけていますが、既存のCDの売り上げが頭打ちになり、ついにバージンメガストアはその存在意義を失い、日本ではTSUTAYAに吸収されて解散しました。 歴史的に言えば、いわゆるレコード盤の時代もあったわけですから、時の流れには逆らえないということでしょうか。

ビールにおいても、その高い税率と戦うことなく、メーカーによる強かな戦略で登場した発泡酒は、今やビール市場を侵食し、さらには麦芽以外の原料を使った第三世代のビールが登場しております。

いずれにしても消費者側からは何らかのメリットがある、生産者側としては製品自体にユーティリティ、つまり効用が付帯していることが条件になっているかと思います。消費者目線では、安い、便利、おしゃれ・・・などなど、生産者側からは、「売れる」ということにほかなりません。

ただし売れる製品を開発することが必ずしも成功とは限りません。なぜなら既存の築き上げたマーケットを食いつぶし、単価の安い製品がシェアを伸ばす訳ですから、生産者としては、更なる大量な売り上げを達成しなければ、利益率でカバーできなくなるというわけです。 この点がいわゆる、カニバリゼーションによる企業のジレンマでしょうか。

若干前置きが長くなりましたが、ジェネリック医薬品はカニバリゼーションでしょうか。効能・効果、安全性などは先発品と同等で安価であれば、当然先発品マーケットは食いつぶされる可能性が高いですよね。

ところが、つい最近までは、カニバリゼーションとは言えなかったと思います。なぜなら、先発品メーカーはジェネリック医薬品を扱っていなかったからです。扱っていたとしても、自社先発品のジェネリックはなかったと思います。

つまり、医薬品業界は、ビール業界とは違ったのです。当たり前といえば当たり前すぎますが・・・。

例えばサッポロビールのラインアップを見ると、エビス(プレミアムビール)、黒ラベル(ビール)、生搾り(発泡酒)、麦とホップ(第三のビール)、プレミアム アルコールフリー(ビール風飲料)…等等となっていて、結局のところ、単価の高いビールを、価格の安いカテゴリーの製品が侵食しているようにも見えます。単価の安い製品で利益を伸ばすには、物量をさらにアップさせなければならなくなり、辛いところです。

一方で医薬品をみると、例えば昨年満を持して登場したアムロジンです。先発品はファイザーのノルバスクで、ジェネリックは30社以上のジェネリックメーカーから発売されましたが、ファイザーからは発売されていません。 先発品とジェネリックでは業界が違うので、同じ製品が別会社から出てくるということになります。 つまり、カニバリゼーションではないかもしれないということです。

要するに医薬品業界においては、特許が切れた先発品は、別のジェネリックメーカーによって市場が縮小するばかりということになります。
先発品メーカーはこのような状況をただただ眺めているだけでしょうか。もちろん、違います。それは、先発品メーカーによるジェネリック医薬品マーケットへの進出によって、業界地図が激変しようとしていることから明白です。

ファイザーによるエスタブリッシュ医薬品事業部、サノフィによる日医工との提携、それよりだいぶ前のエルメッドエーザイ、田辺販売・・・そしてアボットが予定している分社化…などなどがその地図の激変です。

今まで、医薬品業界はセラピューティイクエリアでカテゴライズされてきました。つまり、オンコロジー、CNS、イミュノロジー、プライマリーなどなど、ファンクショナルなセグメントでした。もしかしてこれからは、新薬・長期収載品・ジェネリックなどなど、クロノロジカルなセグメント、タイムユーティリティに戦略をシフトしてくるかもしれません。 (カタカナが多くてすみません。日本語でなんと言うのか調べるのが大変なので…。)

では、その医療用医薬品におけるタイムユーティリティに関する個人的な考察は、別の機会にこちらに書かせていただきます。

広告

コメントを残す

コメントを投稿するには、以下のいずれかでログインしてください。

WordPress.com ロゴ

WordPress.com アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

Facebook の写真

Facebook アカウントを使ってコメントしています。 ログアウト /  変更 )

%s と連携中