アストラゼネカは、新しいCEO人事を発表しました。 その方の名はパスカル・ソリオ! 考える人みたいで恰好いいですね。
http://www.astrazeneca.co.jp/activity/press/2012/12_8_28.html
パスカルさんも相当優秀な方だと思いますが、アストラゼネカが、ロッシュの社長を採ったところに、なにかアストラゼネカの希望というか、期待というところを見て取って良いのでしょうか。例えば最近ヤフーがグーグルの重役を採用したのと似ているような感じがします。
パスカルさんはロッシュのCOOです。ロッシュと言えば、現在最も注目されている製薬会社と言ってよいのではないでしょうか。注目されている理由は何と言っても最大のバイオ医薬品メーカーだからです。これからの医薬品業界は、遺伝子、個別化医療に乗らないと、生き残りは難しいですよね。そしてその主役となるのは抗体医薬です。ロッシュは「ジェネンテック」を2009年に完全子会社化した後、バイオ医薬品を中心とする分子標的治療薬の開発がさらに加速していますよね。現状のパイプラインで、抗体を用いて使用する医薬品が最も多い会社の一つです。その、ジェンティック買収、さらにロッシュのバイオファーマ化を先導し、売り上げを伸ばし続けてきた張本人が、パスカル・ソリオさんです。
ロッシュはパスカルさんが就任してから取ってきた方向性により、現状最もホットなファーマになっているのです。抗体医薬、オーファンに不可欠な試薬は、ロッシュ・ダイアグノスティクが重要な役割を果たしています。特にアジアパシフィックでの成長は顕著ですよね。このパイプライン見てもすごいです。http://www.roche.com/roche_pharma_pipeline.htm
最近のアストラゼネカはどうだったのでしょうか。実は今年の4月に新しく会長が就任しました。新会長は元ボルボの社長であり、ヨーロッパ版経団連と申しましょうか、ヨーロッパの経済団体であるERT(European Round Table of Industrialists)の会長でもあるリーフ・ヨハンソン氏です。最近流行の異業界からのボードメンバーと言う感じでしょうか。その新会長が就任後4ヶ月たった先日の8月28日に、ウォールストリートジャーナルのインタビューに答えて言いました。
“There’s a number of medicines going off patent, We need to replenish them.” (http://online.wsj.com/article/BT-CO-20120828-709362.html)
彼が言っているのは、こういうことです。
①「たくさんの薬が特許切れになる」②「我々はそれら(製品)を補充する必要が有る」
特許切れとはなんでしょうか・・・日本で言えば、ネクシウムやクレストールでしょうか。ネクシウムは今のところ効果を全面的に押し出すことで功を奏しているようです。つまりオメプラールのジェネリックという経済性よりも、より良い効果という新規性がメリットを上回っているということでしょう。しかしながら、これもジェネリックが7掛けの日本だけかもしれません。もし他のPPIのジェネリックがもっと安くなれば、どんなにネクシウムが優秀でも新規性よりPPIジェネリックの経済性が上回ってしまうでしょう。クレストールに至ってはスタチンのマーケットそのものがジェネリックに取って代わるところです。アボットやファイザーの様にプライマリー領域、長期収載品には、別のストラテジーが必要になるのかもしれません。
補充する必要があるとはなんでしょうか・・・言葉の通りです。とにかく製品、パイプラインを補充する必要が有るのです。アストラゼネカの会長は、はっきりとインタビューに答えています。つまり、裏を返せば、製品、パイプラインが手薄だと、いうことに他なりません。
なんと言うか、やっぱり、異業界の雰囲気がします。新しい風は良いことだと思います。由緒ある経済紙に自分が会長をしている会社のパイプラインが良くないと言っている訳ですから。なかなか医薬叩き上げの人はこう言えないかもしれません。株主や他の経済団体向けには、とてもわかりやすくて、良いのです。私もそう思います。そういえば、ノバルティスのトップも、ハインツから来た方ですし、最近日本のアストラゼネカに、P&Gから部長が来ましたよね。すばらしい流れですね。私のようなリクルーターとしては、こういう動き大歓迎ですね!(笑)
日本で言えば、トヨタの豊田社長が、武田の社長になっちゃったとか?? ありえなーい! だけどもありえるー。(笑)
ヨハンソンさんの発言は、今まで製薬会社の閉鎖性と言うか、排他的な感じと言うか、他からの参入を嫌うようなカルチャー、その参入障壁のフラストレーションを取っ払ってくれているような気がします。
奇しくも、彼が、WSJのこのインタビューに答えたのは、彼が関与した人事異動、つまり彼がロッシュから辣腕社長を連れてきて、プレスリリースがあった直後でした。すなわち、リーフ・ヨハンソンさんがパスカルさんに期待していることは、火を見るよりあきらかです。それは、古巣のロッシュでパスカルさんがやってきたように、アストラゼネカに置いても例えばジェネンティックのような会社とのコラボレーション、M&Aをして、抗体医薬、オンコロジー、ワクチン、オーファンドラッグなどなどを補充してほしいと言うことです。
アストラゼネカがこれから活況になりそうです。
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