日本ではあまり話題にになっていないように思いますが、今年の2月26日、アメリカで大手製薬会社のCEO、最高経営責任者7人が、上院委員会の公聴会に呼び出されました。
こんな顔ぶれが、一同に集うなんて、まさに、
医薬品神セブン
です。
理由は、最近の高すぎる薬価について、一体どうなっているのかという質問をするためです。矢面に立った7人は、以下の通り。
Richard A. Gonzalez
Chairman And Chief Executive Officer
AbbVie Inc.
North Chicago , IL
Pascal Soriot
Executive Director And Chief Executive Officer
AstraZeneca
Wilmington , DE
Giovanni Caforio, M.D.
Chairman Of The Board And Chief Executive Officer
Bristol-Myers Squibb Co.
New York , NY
Jennifer Taubert
Executive Vice President, Worldwide Chairman, Janssen Pharmaceuticals
Johnson & Johnson
New Brunswick , NJ
Kenneth C. Frazier
Chairman And Chief Executive Officer
Merck & Co., Inc.
Kenilworth , NJ
Albert Bourla, DVM, Ph.D.
Chief Executive Office
Pfizer
New York , NY
Olivier Brandicourt, M.D.
Chief Executive Officer
Sanofi
Bridgewater , NJ
ここに至る経緯は、そもそもノバルティス(ここには出席していませんが)の新薬の多発性硬化症治療薬、「Mayzent」の薬価を巡るトランプ大統領との議論の渦中でのことです。
これが発端となり、火が付き、そもそも医療用医薬品が法外に高すぎるのではないかということに話がもりあがったのです。
動画をご覧ください。
https://www.finance.senate.gov/hearings/watch?hearingid=460E19F3-5056-A066-602B-23C8DE94DCF1
名だたる製薬会社を集めて、もろに、「あなた達のビジネスのやり方は、ありえない!!」と、斬りまくっているのは、この人、
Ron Wyden
https://en.wikipedia.org/wiki/Ron_Wyden
Ron Wyden(1949年5月3日-)は、カンザス州出身、スタンフォード大卒、オレゴン州選出の上院議員で、最近では、トランプ大統領が選出された大統領選挙時の、ロシアによる介入を徹底的に調べる必要があるとかみついたことで記憶に新しいです。
ビル・カシディへの反論もどこかやんわり
いささか白熱してくると、共和党の議員であり、MDでもある、ビル・カシディが、鋭く切り込みます。
しかしながら、若干ポイントレスかなと思います。ビル・カシディが2つの薬のボトルを見せながら、ジェネリックがあって、こんなに安くできるのに・・・みたいな例を持ち出してきたのですから、今回の薬価高とはちょっと一線を画した議論になっちゃいますよね。
腹の中では、「は?」みたいなことだったかもしれませんが、ここは権威ある上院委員会の場ですから、まずヤンセンのジェニファーが、やんわりと、
「おっしゃりたいことはわかりますが、今回の話の例にはならないのかと・・・・」
と、やんわりと、さらにメルクのケネスも、
「その2つの薬とはちがいます」
と。しかし、こんなやり取りを見れるって、不謹慎かもしれないですけど、showとしてもおもしろいですね。
こちらの動画では、なんだか出席者がきまずそうにしていませんか?
こうなると、神セブンというよりは、もう
荒野の七人
でしょうか。
一連の流れですが、Bloombergによると、結局ノバルティスの多発性硬化症の新薬Myzentは、先発の薬よりも安く販売さてることになったとのことです。
トランプ圧力、すごいですね。
「Mayzent」(一般名:siponimod)の米国での年間コストは約8万8500ドル(約980万円)で、約10年前に投入された「ジレニア」を約7.4%下回る。MSの新薬価格が従来品より低い水準に設定されたのは最近では2件目。ロシュ・ホールディングのMS抗体薬「オクレバス」は臨床試験で従来品に勝る結果を得たにもかかわらず、25%低い価格で2017年に投入された。
Bloombergは、新製品の価格が従来品を下回るのは、「異例」とくくっています。
この政治的な圧力と市場との背景の力学に変化が出始めたのは、この上院委員会ということなのです。
医薬品大手7社の最高経営責任者を公聴会に招待して、公開で薬価について質問・・・というか、斬りまくったのですから。
ぐいぐいくるロン・ワイデン
ロン・ワイデンの切り口は、まあ、パフォーマンスなのか、何なのかよくわかりませんが、特に、アッヴィのCEOに対して、
「ヒュミラによって何百万ドルのインセンティブが支給されているが、その根拠をはっきり説明しろ」・・・的なことを言ったりしています。
何を言っているのかは、ダウンロードできます。
全米、いや全世界に公開で怒られている7人。まさに荒野の7人でしょうか。
それにしても、この7つの企業の日本法人で働いている人にはあまり関係ないのかもしれませんが、自分の会社の社長が政府に怒られてる、しかも薬価が高い、さらにインセンティブが高いからって、なんだかすごいです。しかもその内容も公開されている。
さすがアメリカです。
日本でこれはできない。