【目的】欧米よりも先に



びっくり 実は攻めに出ていた厚労省

先駆け審査指定制度

「先駆け審査指定制度」によって、画期的な薬を優先的に治験して、それを早く世の中に出そうという制度は素晴らしいです。

沢井製薬の高橋英樹さんではありませんが、何よりも患者さんのためには、とても良いことですよね。

日本が開発をリードしているといわれている再生医療の分野ですが、これもさきがけ審査指定制度の適応になりましたよね。その制度が功を奏しています。もちろん優れた研究開発の結果ですが。

で、それはもちろん優秀な研究者の努力によってこぎつけているのかと思いますが、ふと見てみると、意外と言ってはナンですが、厚労省による、世界を意識した制度がありました。


ドラッグ・ラグの解消

そもそも、ドラッグラグに関して、昔からかなり言われていましたよね。よくあることで、
「アメリカから遅れて○○年、やっと日本でも承認された」
みたいなことを言っている人が結構居たと思います。

実際、ドラッグラグはありました。その薬を待ち望んでいる人にとってはドラッグラグの解消は必要でした。

一方で、欧米で先に承認されていても、日本では慎重に審査しても別に良いじゃんと言う声もありました。

慎重に審査しているのか、ただ遅れているだけなのかわかりませんが、とにかく、ドラッグラグに関しては批判も多かったのです。

たとえば、低用量ピルとか、結構よく例に出して言われたりしましたよね。ちょっと古いですけど。

で、ドラッグラグはそれはそれでいつもどおり存在していたのかと思うのですが、少し前の平成26年6月17日に、厚労省がとある戦略を発表していました。


先駆けパッケージ戦略

先駆けパッケージ戦略~革新的医薬品等の実用化促進~

厚生労働省では、「世界に先駆けて革新的医薬品等の実用化を促進するための省内プロジェクトチーム」において、「先駆けパッケージ戦略」を取りまとめました(平成26年6月17日発表)。
本プロジェクトチームは、我が国の大学、研究機関等の基礎研究の成果を迅速に実用化につなげるよう、医薬品等の研究・開発から実用化までの一連の過程について、厚生労働省関係部局が連携し、一体となって取り組むため、設置したものです。
「先駆けパッケージ戦略」は、世界に先駆けて医薬品等の実用化を図るため、基礎研究から臨床研究・治験、承認審査、保険適用、国際展開までの対策を一貫して取り組むものであり、

世界に先駆けて日本で開発され、早期の治験段階で著明な有効性が見込まれる革新的な医薬品について、優先審査し、早期の承認を目指す:「先駆け審査指定制度」
これまで「未承認薬・適応外薬検討会議」で、ドラッグ・ラグ解消のため、欧米で既承認の薬を国内企業に開発要請してきましたが、既承認薬だけでなく、欧米で未承認の薬まで拡大することで、国内での実用化を加速する:「未承認薬迅速実用化スキーム」
などの施策を盛り込んでいます。
医薬品等の研究・開発から実用化までの各ステージでの対策を一貫して行うことで、医療関連イノベーションの推進に貢献するよう、平成27年度の予算要求過程などにおいて、施策の具体化に取り組んでいきます。

厚労省
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当時は多分、またよくあるお役所的なことを発表しているのだろと思ったのか、それかまったく気づかなかったのか、とにかくこんな戦略をはっぴょうしていることに、最近気づきました。


「優秀な薬を早く出す」?
「欧米より早く出す」?

ここで、特筆すべき事は、わざわざ「欧米」を意識しているところです。

これまで「未承認薬・適応外薬検討会議」で、ドラッグ・ラグ解消のため、欧米で既承認の薬を国内企業に開発要請してきましたが、既承認薬だけでなく、欧米で未承認の薬まで拡大することで、国内での実用化を加速する

厚労省



そもそも患者さんにとっては、欧米だろうと、日本だろうと、画期的な薬なら、それを加速すればよいだけの話だと思いませんか。

それをなにか、「欧米より早く」としているところがめっちゃ攻めています。

ドラッグ・ラグ解消じゃなくて、欧米よりも先に出したいっていう意味ですよねこれ。

結構見落としがちですが、わざわざ戦略化しているって、個人的にすごいなと思いました。

そして、その国内での実用化を促進するための施策としているのが、「未承認薬迅速実用化スキーム」です。


「未承認薬迅速実用化スキーム」

平成25年8月1日
(平成27年7月1日更新)
厚生労働省医政局研究開発振興課
医薬生活・衛生局審査管理課

これまで、欧米等では使用が認められているものの、国内では承認されていない医薬品及び適応については、開発要望を募集し(第I回:平成21年6月18日から8月17日、第II回:平成23年8月2日から平成23年9月30日、第III回:平成25年8月1日から平成27年6月30日)、寄せられた要望について「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」(以下「検討会議」という。)において、医療上の必要性を評価するとともに、承認申請のために実施が必要な試験の妥当性や公知申請への該当性を確認すること等により、製薬企業による未承認薬・適応外薬の開発を促しているところです。

厚労省
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「さきがけパッケージ戦略」を、「未承認薬迅速実用化スキーム」をおこなうことによって具現化しようとしているのです。

「未承認薬迅速実用化スキーム」って、名前がそもそもすごいです。とてもじゃありませんが、お役所が作ったようなふうに思えません。


もしかしたら、外資コンサルとかが作っていませんか? これ?

ちがったらすみませんですけど、なにか外資コンサルの香りがプンプンします。

しかも
「良い薬があったら、迅速に出しましょう」
「なるべく、世界に遅れを取らないようにしましょう」

とかで良いですよね。基本的には。国民としては、良い薬の安全性と有効性がきまったら、出してくれればよいのです。

それがです、何故かわかりませんが、まあ、どんなにドラッグラグが叫ばれてたとしてもです、わざわざ、


欧米等でも未承認の医薬品のうち、一定の要件を満たすものについては、検討会議の検討対象を拡大することで、国内での実用化を加速する

というように、欧米、欧米って、意識しているのです。意識しすぎじゃないですか? 欧米かっ!



欧米より先に

あ、良い意味でです。競争があって、それに勝つのは良いことです。もちろん、医薬品は生命関連製品ですので、倫理、安全性などなどを一定レベルで担保知てもらわないと困るのですが、その上で、競争がそこにあって、そしてその競争に勝つのなら大歓迎です。

ただ疑問なのは、欧米は逆にそこまで日本を意識していますかね?

穿った見方というか、ひねくれた見方というか、屁理屈的な発想というか、そういう見方で見ると、たとえばですが、

「ドラッグ・ラグ」とか、「厚労省なにやってんだ」とか、そういう世間からの批判を受けたくないという官僚が、それこそ、BCGとか、マッキンゼーとかに、高いお金(税金)を払って、お願いをしたのかもしれない、、、とさえ、勘ぐってしまったり、しなかったり。

それか、善人説で言えば、熱き血潮に燃えている、日本国民の健康のために身を粉にして働いて、情熱を持って仕事に取り組んでいるキャリア官僚達によるハードワークの賜物だ・・・と考えるかです。

ただし、後者の善人説だと、だったら、そこまで「欧米」出さなくても良くないですか?

自分がひねくれているからなのかもしれませんが、
「良い薬を無駄なく早く世の中に出す」に普通にフォーカスしてくれればよいのに、「欧米より早く出す」にフォーカスしているような気がします。

「先駆け審査指定制度」を加速させるための、「先駆けパッケージ戦略」。その戦略を具現化するための施策である「未承認薬迅速実用化スキーム」


そして厚労省の戦略を踏まえて、PMDAでも、その対応策を発表しています。が、これなにか、言わされてない? そんなことないか。。

先駆けパッケージ戦略への対応
 平成26年6月17日に、厚生労働省から、革新的医薬品等の実用化促進に向け、「先駆けパッケージ戦略」が公表されました。
 「先駆けパッケージ戦略」は、世界に先駆けて革新的医薬品等の実用化を図るため、基礎研究から臨床研究・治験、承認審査、保険適用、国際展開までの対策を一貫してパッケージで推進するものとされております。
 その重点施策として、「先駆け審査指定制度」(世界に先駆けて日本で開発され、早期の治験段階等で著明な有効性が見込まれる革新的な医薬品等について、優先相談、事前評価、優先審査等を行い、早期の実用化を目指すもの)などの施策が盛り込まれております。
 PMDAとしても、厚生労働省とともに、これらの施策に取り組んでまいります。

PMDA



日本の政策を信じています。ので、これが本当に世の中の患者さんにとどくのであれば、本当に素晴らしい、良い国だと思います。

また、競争があるということも、この資本主義社会では当たり前ですので、そこも肯定します。

お役のイメージ先行であまり良いイメージもなかったかもしれませんが、今回の、例の再生医療の先駆け審査指定制度も、もしかしたら、数年前からのこの一連の動きが良い結果として出てきたのかもしれませんね。

だとしたら、日本は本当に良い国です。これからヘルスケア領域は活況になるかもしれないと思いました。



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