製薬会社は営業部門に「何もしなくてもOK」というスタンスをとったら良いのではと思います。
もちろん、何もしないというのは語弊があるので、このコロナ禍の時だけ、ドクターとのコンタクトは「最低限のコミュニケーションキープでOK」と、銘打ってもらえれば良いかと思います。
本社がそのようなスタンスを明確にすれば、営業部門のマネージャーも、MRもとてもQOLが上がります。
「なんか、何もしていないって事にならないか????」
と、いうビビリの営業所長も、支店長も、本社が明確な指針を打ち出してくれさえすれば、安心して、部下のMRに「何もしなくて良い」と言う事ができます。
このコロナの間に、例えば、自己啓発のKPIでも作ったらいかがでしょうか。読書とか、資格とか英語の勉強などへのKPIです。それはとてもQOLも上がるし、人材育成にもなります。
MR活動はアポ無しのちょっとした事の積み上げ
MRの全てのコミュニケーションにアポイントは取っているわけではありせんよね。普段はです。普段というのは、コロナ前です。
コロナ前から、ただでさえMRによる医療機関の訪問規制が厳しくなっていましたが、コロナ禍では、MRは本当にリモートでの活動がほぼほぼメインになっております。
リモート活動では、デジタルを活用することになり、メール、ウェブ面談などが主流になるのです。そこでMRとドクターを繋げる様々なツールの活用がお祭り状態になっております。
訪問ができればまだ、ドクターとのコミュニケーションなど色々とあります。その訪問も、コロナ前においても全てのコミュニケーションにアポイントを取っていたわけではありません。
それがMRです。
病院とか開業医を訪問して、ちょっとした事を話したり。それがMRですよね。
ちょっとした事が積み重なった時に、結構大事な事になります。その積み重ねがドクターとの関係構築をするのですよね。
そのちょっとした事は大事ではありますが、わざわざツールを使ってアポイントまで取らなくて大丈夫なのです。大丈夫だったのです。
ちょっとだけど、積み上げができなくなった
コロナ禍では訪問できなくなりましたので、ちょっとした事の積み重ねはできなくなりました。
それでも、それほど慌てる事はないかと思います。
なぜなら、積み重なった時には大事な事になりますが、、一回一回はちょっとした事なので、短期的にコミュニケーションが以前よりも減ったとしても、そこまで大きなダメージはないです。
ただ、ずっとゼロだと積み上げができませんのでよくないです。ですので、本当にたまに、メールとかツールでコンタクトすれば、良いかと思います。最低限のコンタクトをキープで良いのではないでしょうか。
最低限のコンタクトでも、実際は薬の売り上げにはほとんど影響ないかと思います。
薬が売れるんだから、内容のないメールをドクターに沢山出さなくても、楽して家に居れば良いかと思います。
上司はどうでしょうか。
担当を持っていない、マネージャーや所長などの上司、そしてその上司はどうしているのでしょうか。以前のようにMRとの同行や研究会にアテンドしたりなどというような物理的な動きはありません。
上司は担当病院が無いので、やる事といえば部下のMRと何かを話すほかありません。部下のMRのマネジメントをしなければならないのです。
MRがやる事がなくて、家にいる。それでも薬が売れていれば、それで良い。
この状況に、ビビリの上司はいてもたってもいられなくなるでしょう。
「そうだよね。MRは別に今は何もやらなくて良いから。」
とは、言えないのです。なぜなら、上司にも上司がいて、部下のマネジメントを評価されるからです。「自分の」評価が下がるのではないかと心配しているのです。
上司といえば、40歳代、50歳代。子供が私立の学校に行っている、親の介護がある、家のローンがある。英語もできないし、ITリテラシーも金融リテラシーもないし、特段、ビジネスの特技もないし、もうこの製薬会社の営業部門で生きていって、家族を養うしかないのです。今から、外に放り出されるのは、恐怖でしかありません。
その恐怖を振り払うかのように、部下のMRに指示を出します。出した指示を誇らしげに本社に報告します。会社からの評価が下がるなんて事があれば、上司にとっては地獄絵図です。
その場から放り出されるなんて事があれば、特に何の取り柄もない上司にとっての未来は、惨憺たる有り様になるわけです。
死活問題です自分の評価の方が大事です。
「自分のため」に、何かのKPIをMRに課さないと、きっと落ち着かないのかと思います。多分必死です。
必死の挙句に、コロナ禍でMRに課すのは、そのツールを使った最大限のドクターとのコンタクトです。
何通メールしたか?、何個アポイントとったか?、研究会したか?
SOVですよね。
上司も、かつてはMR。
「そんな事をして、誰が得するの?」
くらいのことは、実はわかっているのですが、ビビると、もう昔の事はわからなくなるのでしょうか。
「自分の」存在意義を示しているかのようです。承認欲求です。
デジタル、アプリを経由して、「ちょっとした事」についてのコンタクトが死ぬほど来る医師にとっては、迷惑以外の何者でもありません。
そしてその医師のフラストレーションが向く先は当然、MRです。なぜなら、医師はMRの上司のことまで知りません。中には出禁になったりするケースもあります。
ただ、上司にとっては、別に、「自分は」問題ありません。MRが医師から怒られても、「上司は」関係ありません。
こうして、デジタルでのコンタクトの数が、コロナ禍でのMRのKPIとして、どんどん加速していきます。
上司は、KPIを上げる事をMRに指示します。MRは医師に怒られます。でも「上司は」問題ない。と言う、負のスパイラルが加速します。
リアルワールドでは、問題があるのです。
その問題は、虚構のうちに葬られ、本社ではその
「ツール導入が功を奏して、医薬品の売り上げがキープできた。」
というストーリーに、見事に据え変えられるのです。
医薬品の売り上げは、そんなに落ちません。なぜなら、需要があるからです。
製薬会社の利益はそんなに落ちません。なぜなら、需要があるからです。
そして、利益もそれほど落ちないというか、むそろ利益幅は大きいです。保険制度からの支払いだからです。
トレンドの薬でなくても、例えば昔からあるビタミンCにも、乳酸菌にも、滋養強壮のタウリンにも薬価がついております。
製薬会社のプロフィットは保険制度からの収入なのです。売り上げは、そうそう落ちるものではありません。
「そうそう落ちない」と言う薬の売り上げの理由が、いつの間にか、「ツール導入」による成果と定義されているのです。
ミラクルです。
ツール開発業者も、製薬会社と病院からの支払いで利益を得るわけですから、これも元を正せば、保健行政からの支出になります。
大変なのは、下っ端のMRと、現場でマジで忙しく働いている医師です。
どうしたら良いのでしょうか。
解決策は、製薬会社の本社が、大々的に
「何もしなくて良いです。」
「何もしなくても、評価を下げません。」
と、表明することかと思います。
上司も、「おい、お前ら、何もしなくて良いぞ。」と、部下のMRに言えるようになります。もちろん、最低限のことはします。
そうする事によって、MRも、上司も、みんな安心して何もしなくなり、医師も過剰なデジタルコンタクトが無くなり、街に平和が訪れます。
それによって困るのは、今度はツール業者ですけど、別に関係ないですよね。