皆様、いかがお過ごしですか。シルバーウィークですね。転職をお考えの方、漠然としか考えていない方も、時間のある今、ご相談くださいませ。

さて、今日の話です。

「なんとなく」ではなく、計算し尽くした「クリスタル」

1980年、田中康夫の『なんとなく、クリスタル』は、ブランド名に膨大な注釈を付けることで時代を切り取りました。何かを選ぶとき、人は「なんとなく」と言いながら、実はよく計算しているものです。

今回取り上げるCrystalys Therapeutics(クリスタリス)は、名前こそ「なんとなくクリスタル」を思わせますが、集まった投資家は決してなんとなくではありません。痛風という地味な領域に、ノボ財団系のNovo Holdingsをはじめ、名だたる医療特化型の投資家が連なっています。

Crystalysとは何か

なんか、六本木のバーみたいですよね。あと、歌舞伎町に昔、こういう店ありました。

でも、もちろん、全然違います!

あと、Krystal Biotech とも、違います!

Crystalysは、痛風を専門とする臨床段階のバイオ企業です。サンディエゴに本社を置き、Catalys PacificとNovo Holdingsが共同創業しました。「去年できた」と言われることがありますが、会社自体は2022年の設立で、2025年にステルスから姿を現したというのが実態です。 PR NewswireFierce Biotech

主役の薬はドチヌラドです。1日1回服用の経口URAT1阻害薬で、いま2本の第3相試験(RUBY、TOPAZ)と第2相試験(AMETHYST)が進行中です。 Pulse 2.0

CEOのJames Mackayは、米国で初めて承認されたURAT1阻害薬Zurampicの開発に関わった人物です。一方で、前職のAristea Therapeuticsは、主力薬の試験で安全性の懸念が出て2023年に閉鎖されています。成功と挫折の両方を経験した経営者、ということになります。 Fierce BiotechFierce Biotech

シンジケートの人脈図

ここが本題です。資金調達は2回あり、顔ぶれがどう変わったかを見ると、この会社の「育ち方」が見えてきます。

ラウンド時期金額リード主な参加者
Series A2025年9月2.05億ドルNovo Holdings、SR One、Catalys PacificPerceptive Xontogeny、Lightstone、AN Venture Partners、abrdn、KB Investments、Pontifax、Longwood、Alexandria、Wedbush、Prebys
Series B2026年7月1.3億ドルFrazier Life SciencesWellington Management、HBM Healthcare Investments、Soleus Capital、Cormorant Asset Management、Trails Edge Capital Partners、Pivotal bioVenture Partners、KCap Biotechnology Fund、および既存投資家全員

見どころを3つ挙げます。

①創業者が最後まで残っている。 Novo HoldingsとCatalys Pacificは共同創業者であり、Series Bにも既存投資家として参加しています。Series Bは応募超過(oversubscribed)で、既存投資家が全員残ったとのことです。途中で降りた人がいない、というのは地味に強い信号です。 PR Newswire

②Series Bで「顔ぶれの質」が変わった。 Series Aは創業型のベンチャーキャピタルが中心でした。Series Bでは、Wellington、Cormorant、Soleusなど、上場前後の企業に投資することが多い大手運用会社やヘッジファンド系が入っています(この分類は僕の理解なので、掲載前に各社の位置づけを確認します)。CEOは市場が好調なのでIPOも選択肢だと話していますから、この並びはその布石に見えます。 Fierce Biotech

③Novo Holdingsは「国家株主」と呼ばれるだけの存在感。 ノボ ノルディスクの主要株主であるノボ財団の投資部門が、共同創業から2回のラウンドまで一貫して関わっています。

なぜ、なんとなくではなく、「慎重に」いけたのか

投資家がここまで慎重に集まれた最大の理由は、ドチヌラドがゼロからの創薬ではないことです。

日本での承認は2020年で、それ以降120万人以上が治療を受けており、22試験・約1,300人でヒトでの有効性が確認済みとのことです。日本、中国、フィリピン、台湾、タイで承認済みです。つまり、アジアで実績のある薬を欧米に持ち込む座組みです。 Novo HoldingsBioSpace

米国とEUでは、第一選択薬のキサンチンオキシダーゼ阻害薬が効かない患者に、承認された第二選択薬がないとされています。空いている席が明確なので、ストーリーが描きやすいのです。 Pulse 2.0

ただし、残るリスクもあります。欧米向けの第3相の結果はまだ出ておらず、アジアの承認実績がそのまま欧米当局に通用する保証はありません。「慎重な投資判断」は「リスクがない」という意味ではなく、「見えるリスクを絞り込んだ」という意味です。

え、あの会社? MR撤退した?

なお、ドチヌラドを創り出したのは富士薬品です。日本企業が育てた薬が、海外の資金で世界に出ていく。その構図だけ、頭の片隅に置いておいてください。 BioSpace

Crystalysは、「なんとなく」集まったのではなく、「しっかり計算して、あえてなんとなく風に」集まった集団に見えます。第3相の結果が出る頃、この注釈は増えるのか、減るのか。次のニュースを待ちたいと思います。

さて、ドラッグセイムスで、オロナミ・・・じゃなかった、リッチミンDでも買って、飲もうか。まだあるのかな。日本にいる時、近所のセイムスでいつもケースごと買っていた。

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