医療用医薬品に、医療機器でやっているようなクラス分けを導入し、リスクの比較的少ないクラスについては、営業を強化しても良い…というのはいかがでしょうか。
最近の医薬品業界のリストラは凄まじいです。ここ数年で、サノフィが、アステラスが、ベーリンガーが、大正製薬が、MSDが、大日本住友が、シオノギが、武田が、田辺三菱が、さらに辿れば他にも数社がリストラを敢行しております。その理由は大きく言えば、業界の構造の変化と言えます。一昔前は、高血圧とか糖尿病などの慢性疾患の製品を各社こぞって開発し、同じような効き目の似た薬が、各社からたくさん世の中に誕生しました。効能効果はほとんどというか、ほぼ同じだけど、少し違う製品を5社も6社も発売し、ドクターの周りには常に5人も6人ものMRが群がり、激しい競争をしていたのです。
ドクターからしてみれば、ほとんど効果の変わらない薬ですから、MRとの関係性でその薬を使ったり使わなかったりすることになりがちでした。優秀な営業マンタイプのMRが来れば、すぐその薬に変わっちゃうし、可愛いおねいちゃんMRが来れば、すぐまた変わっちゃったり。そんな感じでした。この現象をネガティブに捉える人が最近はほどんどだと思いますが、そうでしょうか。医療用医薬品といえども、利潤追求企業の製品です。生命関連製品だけに、高い倫理基準と、厳しいコンプライアンスコードがありますが、ただそれに則って営業活動にしのぎを削っても良いと思っております。MRに勝ち負けがあったり、競争があったりしても良いのです。
ところが度重なる薬価改定や、ジェネリック医薬品の登場で、各社が慢性疾患の医薬品開発から、急激に専門領域にシフトし始めました。オンコロジーや、オーファンや、免疫領域などなどです。アンメットニーズに挑戦することもとても良いことですし、患者さんにとっては何より朗報です。
良いことなのですが、これらの専門性の高い医薬品は、人間関係では売れません。バリバリの営業マンタイプのMRや、超美人MRが来たからと言って、バイオ製剤や抗がん剤などはそうそう変えることができません。
業界が構造的に変化しました。今まで治療方法やクスリが無かった難病などに医薬品が初めて登場したり、オンコロジーや免疫など高度な知識を必要とする製品が次々に登場したりしています。
専門生の非常に高い製品への開発に、すでに各社シフトしております。
当然、今まで人間関係や営業力で売っていたMRは要らなくなりますし、企業側のマーケティングも、人海戦術やローラー作戦から、KOLへのピンポイントの対策や、独自のアプローチなどなど、手法がガラリと変わったのです。
また、医師や医療従事者も、別にMRがわざわざ来なくても、必要な情報は手に入るようになりました。
それに、医師の世代も代わり、昔のような医局で威張って喜んでいる医師や、教授になって権力を翳して喜んでいる医師などの豪傑タイプは少なくなりました。製薬会社をたくさん侍らせて喜んでいる医師はもう化石でしょう。
ジェネレーションもあるかもしれません。医師に限らず、今の若手やミドルの世代は別にゴルフをやっても嬉しくないだろうし、接待されても、そもそもお酒もガブガブ飲む医師も少なくなり、普段それほど話をする訳ではない、ただ単に「あの人ね。。」みたいな関係の人間同士が同席しても、何を話して良いかもわからないし、間が持たなくて話に困る感じじゃないでしょうか。昔のMRは、そういう状況を楽しい場に変えることが得意だったのですが、今はそういう人は少ないか、仮に座持ちが得意なMRが居たとしても、そもそも酒席そのものが持てないので、力を発揮することもないでしょう。仕事が終われば、とっとと職場を去って、職場の人と離れて自分の好きなことをしたいのは、医師でも、MRでも今の世代では同じではないでしょうか。
そういう医師にとっては、医局に居る時にMRなんかが来てもウザいだけでしょう。まあ、おねいちゃんが来たら男性医師にとっては嬉しいかもしれませんし、また芸人バリに面白いMRが来たら楽しいかもしれません。しかしながら、だからと言って、製品を変えてしまうほどのことにはなかなかならないのです。人海戦術、コール数アップ、人柄で売る・・・などなど、そういう時代はもう何年も前に終焉しました。
専門的な製品には、美人であることより、人柄より、高度な知識を持ったMRが戦力になるわけです。
であれば、今まで製品知識よりも人間関係を武器に売っていたMRが、自ら変化して高度な知識を身につければ良いと思うのですが、長年身につけたスタイルを急に変えることはできませんよね。
このような背景で、たくさんのMRがリストラされるわけです。
ここで考えようですが、糖尿病や高血圧、アレルギーなどのいわゆるプライマリー製品は、別に世の中から無くなっている訳ではありません。依然として存在はするわけです。ジェネリックが出たとしても、長期収載品などは残っています。当時鳴り物入りで世の中に出て来た素晴らしい製品が、なんのプロモーションもされずにただ市場に存在しております。これらの製品に関しては、ある程度プロモーションコードをゆるくしたらどうだろうと、勝手に考えます。誰しもが専門領域の製品を扱いたいとは限りません。前述のように、企業は営利を追求しても何も問題ないわけで、生命関連製品故の、厳しい倫理観、コンプライアンスや、他業界に類のない厳しいプロモーションコードはありますが、その上でそれに則った形で営業強化しても良いのではと思ったりしてしまいます。
プライマリーと言っても、医療用医薬品はそもそも特徴的に利益率が大変高いという事実ががあります。
営業力によってでシェアが少しでも伸びれば、実は数億円単位の利益が出て、企業にとってはMRを雇ってもそれに見合う以上の利益になる訳です。それはとても重要なことです。
古いと思われるかもしれませんが、コールすれば、たとえば昔の薬でも良い薬なら、医師はそれを使ったりすると思います。例に出せば、たとえば、「先生、リピトールお願いします」といえば、「随分昔の薬を宣伝してくるねえ・・・」と思われるかもしれませんが、別に問題ある薬ではないので、「じゃあ、使うか。」みたいになるわけで、その「じゃあ、使うか」で伸びる数字はバカになりません。
アイデアですが、たとえば、長期収載品を一つのクラス、ジェネリックを一つのクラス。あるいは、疾患別に、抗アレルギー薬や、降圧薬というように、これらの比較的安全性が確立していてなおかつ、処方を変更してもリスクの比較的低い製品をまるで医療機器のクラスのように、クラス分けして、それらのクラスに向けて個別にプロモーションコードを作ったら、業界は活性化するのではないでしょうか。
このような製品を担当するMRの年収を1000万円クラスにする必要はなくて、世間一般、他業界の営業マンと同じ水準にしても、就業希望者は出てくると思います。企業にとっては、シェアがアップすることは、実は望んでいるところなのですから。
まあ、無理かな (笑)
「製薬会社をたくさん侍らせて喜んでいる医師」
地方部にはいっぱいいますよ。
また懇親会やゴルフコンペの参加MRの数を他と争っている病医院も少なくありません。
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そういう医師がまだ居るんですね。しばらく製薬会社と医師の現場から離れて居るので、知りませんでした。ありがとうございます!!
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