社員紹介による転職は、製薬業界だけではありません。どの業界にもありますので、下記は、どの業界にも当てはまることです。
増え続ける社員紹介による転職
製薬業界は、狭い業界と言われている通り、特に社員紹介による転職が多いです。
職種的には、物理的にMRが一番数が多いので、どうしてもMRの社員紹介の数が多くなりますが、開発でも、他の職種でも、とにかく社員紹介による転職が、最近めっきり多くなってきています。
全体数が減りつつも、まだまだMRの転職はある
MRが減っていると言われていますが、MRが要らなくなったわけではありません。何故MRが減っているのかといえば、元々多すぎたMRの中で、以下の人々が去っているからです。
- 元々適合していなかった人
- 早期退職などで自分からやめていく人
- MRを取り巻くネガティブな環境に嫌気がさしてやめていく人
多すぎたゆえ、単純に全体数を減らそうとなったときには、こんな人々がやめていくのです。
全体で6万人近いMRが何千人も減っていくのをみていると、業界的に衰退しているのかと思ってしまいますが、そうではなく構造の変化によるものだと考えられます。
MRは一定量は必要ですが、いままで長年にわたり、「一定量以上居た」のだと思えば納得できます。
別に、MRそのものの必要性がなくなったのではありません。
年々減っていく中、なんとなく生き残るために専門性が叫ばれてきました。SOVよりも、営業の専門性を高めたいと。例えば、免疫、オーファン、オンコロジーなどですよね。
ただ、専門性と言うけれど、従来型のSOV、プライマリー領域もバカになりません。新薬や、プロモーション品がトレンドで注目されがちですが、企業としては、エスタブリッシュ品の売上が屋台骨となっていることは否めません。
たとえば、リピトールですが、ジェネリックが出て何年にもなりますが、2017年で180億弱売れているみたいです。
従来型のMRは、大きな声で言えないが会社は必要としている
リピトールを例に出しましたが、昔の良い薬は、今や企業もイチオシでプロモーションもほとどんどしていないだろうと思いますが、むしろ、プロモーションしていないところをチャンスと捉えることもできるのです。
なぜかといえば、競合も、同じように昔の薬をプロモーションしていないからです。競合品のブロックも甘々になっています。
医療機関も、ジェネリックもあるし、別に「どれを使っても良いよ」みたいな雰囲気になりがちで、これもチャンスです。
「先生、他社さんのプッシュがなければ、リピトールお願いします。」
今となっては、古典的なMR方法ですが、前述したように、他社もプッシュしてないし、どれでも良い状態なので、おそらく先生によっては、
「は? リピトール? 君今頃そんなの売りに来たの? 他誰もそんなの言いに来ないよ。まあ、別に、変えても良いけどね。良い薬だし。」
これが味噌です。このやりとりで、実際、控えめに言っても5%くらいは売上が伸びると思います。
バカにならない、従来品の伸び
リピトールの売上、200億弱ですが、5%伸びたら10億円弱伸びるということになります。
企業にとって、特にプロモーションもかけてないブランドで、10億円の伸びって、すごくないですか?
製薬会社も、営利企業ですから、こういう売上を狙っていくのはとても大事なのです。従来型のMR方法でも、実は価値があって、時代的に声高には言えないのかもしれまえんが、実は企業はこれを望んでいます。
従来型のMRですが、これもMRが必要な理由の一つです。
MRの転職の実態
さてそんなMRの転職に関してですが、そもそも全体の数も減っていて、採用どころか、逆にリストラに頭を悩ませている製薬企業ですので、転職案件は爆減しています。
とはいえ、前述のように必要なMRですので、実は中途採用のニーズは潜在的にあるのです。
エージェントがドバドバ募集している時代でもないので、世の中的には案件がないように見えます。
案件は無いけど、案件に出ないだけでニーズはある
しかしながら、エージェントを使わない転職案件が一定量、常にあります。
ただし、候補になるのは、転職希望者ではなくて、転職の希望の有無にかかわらず、優秀な人です。当たり前っちゃ、当たり前ですが。
一部のエージェントと、社員紹介がメイン
そもそもMRは、たとえ今の会社で順調に仕事をして、上手く行っていたとしても転職をしたほうが良いのです。理由は以前にも書かせていただきました。
では、転職の方法ですが、今までのように、ネットとかで検索してエージェントが掲げている募集案件に登録して・・・という時代はもうとっくに終わりました。転職方法の転換があります。
エージェントから社員紹介へ
今や、製薬業界の転職といえば、特にMRに関しては、扱っているのは一部の大手エージェントのみくらいで、あとの大半は社員紹介によるものです。
ますます増えている社員紹介による転職の際に、上手く転職するにはどうしたら良いのでしょうか。
社員紹介でうまく転職するコツ
=自分のブランディング
→良い意味で八方美人であれ
社員紹介で転職をするには、まず自分自身の評判が良くなければなりません。評判をよくするには、自分自身のブランディングが重要になってきます。
→社内でも 嫌な上司でもサポートに徹する
自分自身の評判を上げるには、その良い評判が拡散されなければなりません。拡散のためには、自分よりベテランである上司からの評判をまず良くすることです。上司は一般的にですが、明らかに自分自身よりも顔が広いので、評判が拡散されやすいのです。
→競合メーカーにもとにかく笑顔で挨拶
良い評判拡散のためには、競合メーカーとの関係が大事です。競合していると、なんとなく病院で会っても、一瞥をくれるだけでスルーしがちです。ただしこれでは良い評判は広がりません。競合こそ、むしろ笑顔で挨拶です。ヘラヘラして居ても構わないと思います。やりすぎでも良いです。
「いや〜、さすがですね。あんまりイジメないでくださいよ〜」
みたいにヘラヘラして、親しみをもたせつつ、ただ、真面目な面も見せる。これで、競合メーカーにも良い評判が広がります。競合メーカーに良い評判がひろがるということは、その領域での専門性が高まることに他なりません。
→卸では常に笑顔
メーカーの集まる卸では、とにかく笑顔です。しらないメーカーにも笑顔を振りまいておきましょう。メーカー名と名前が拡散されます。大学とか基幹病院だけしか担当しなくなると、卸にも行かなくなるかもしれませんが、何かと理由をつけて、メーカーの集まる時間に登場して、笑顔を振りまいてみてください。良い評判が拡散されます。
→KOLにはとにかく名前を売る→この際、薬の売上よりも自分を売る。
KOLはとにかく大事です。自社製品の波及効果云々ではありません。ぶっちゃけ、自社製品なんてどうでも良いです。それよりも、自分です。自分のブランディングのために、KOLには良い印象を常に与えて、いざとなったら味方になってもらいましょう。
→KOLはすべての競合メーカーが集まる
その領域のKOLであれば、あたりまえですが、その領域のすべてのMRが集結するわけです。MRどころか、MSL、メディカルアフェアーズ、支店長などの偉い人が各メーカーから集結するわけですので、KOLは大事です。
KOL対策=自分のブランディング対策と思ってください。
KOLへのブランディングは、やがて、他社に対しての間接的なアピールになるのです。
以上のような行動をとっていると、結局これが良いMRですよね。これこそコミュニケーション能力と言えるでしょう。
社員紹介による転職
自分のブランディングが確立されたら、いよいと社員紹介による転職活動に入るわけです。ブランディングが確立されていれば、もう面接もセレモニーみたいなものです。内定は簡単です。面接のテクニックもそこまで要りません。
社員紹介で気をつけること
社員紹介には、実は、エージェント経由には無い、注意点があります。
信頼できる人を選ぶ
→秘密を守れる人
→秘密を守ってくれる関係づくり→いきなりは無理
転職というのはとてもセンシティブです。少しのボタンの掛け違いにより、築き上げてきたものが音を立てて、爆速で崩れることになりかねません。
秘密を守れるというのは、大前提中の大前提です。ここでしくじると、アウトです。
何故秘密が大事なのか
→MRはトークが好き
→MRは噂に敏感
→噂が広まるには、半日あれば十分
MRというのは、営業です。営業の人は、特に歳をとればとるほど、トークが大好きです。営業なのでとにかくトークの人が多いです。特に、転職したいとかいう人の話は、だれかに噂をしたくてウズウズしてしまう類のネタの一つです。
バレると
→自分の部署の所長や支店長と微妙な関係に
→相手の社内でも微妙な関係に
これが、周囲にバレますと、とりあえず微妙な関係になります。
「あいつ、ウチ受けてるらしいよ」
「あいつ、やめるらしいよ」
みたいなことが拡散されたら最悪です。
上司からも、その上司からも、同僚からも、後輩からも、他社からも、とにかくそういう目で見られてしまいます。
そうなると、上手くいくものも行きません。
微妙な関係は、ポジティブなことはありません。そして 噂というのは常にネガティブです。
やがて自分のブランディングが音を立てて崩れるのです。
くどくなりましたが、秘密を守れる人を介しての社員紹介というのがとにかくとても大事なのです。
条件に関しては、なるべく早い段階で確認
→言いにくい分、遅くなりがち
→ほぼ決まったあとに、不服のある条件だとややこしくなる
→紹介側の社員は、自分の会社の上司や人事に交渉はしない
大事なことのもう一つは、条件に関しての確認作業です。これはとても言いにくいのですが、一方でとても大事なことの一つです。
なんとなく、良い関係を築いてきた、紹介してくれる人。そして、秘密も守ってくれそうな人。社員紹介による転職でとてもお世話になる人でしょう。
そんな人に、お金の話とか、なかなかし辛いものです。
じつは、そんな事があるので、エージェントが居たほうが、本来は良いのですが、実際社員紹介がふえているので、仕方ありません。
早めに条件などの確認をしておかないと、後で大変なことになります。
お互い、良い関係で、逆に言えばなーなーになった状態でドンドン話が進んで、いざ、条件提示になったときに、もしそれが良くない条件だったら・・・
その紹介社員にとっては、まさか、自分の所属している上司や人事に交渉なんてしません。
あとから条件のことを問題にするのは、とても危険
最終段階で、条件の不満を言うと、ゴネてるみたいになってしまい、ブランディングにダメージを受けます。
なにかと、人物像について間違ったイメージを与えることになります。なによりも、時間をかけて進んできたものが、ご破算になるのが、そもそもダメージです。
積み上げてきた時間と労力を考えると、一瞬で萎えます。
そんな事にならないように、早めに条件の確認をしておきましょう。早めにしておけば、あとでお金でゴタゴタしなくて済みます。
辞めてほしくない人は、引き止められる
カウンターオファー
→噂が広まると、引き止め作戦に遭う
→ブランディングが成功している人なら尚の事
→上司、上長は優秀な部下を失うのは売上ばかりか、自分自身の評判まで下げ下げになることになる。
→引き止め作戦に必死になる
さて秘密を守ってもらって、そして条件もなんとか上手く出してもらって、いよいよ最終段階にはいってくれば、いずれはそれを、自分の会社に言わなければなりません。
退職の意志を示さなくてはならなないのです。この段階でも、さらなる注意が必要になるのです。
ブランディングに成功している人こそ、その会社にとっては辞めてほしくないのです。
会社に辞めてほしくないと思われている人が辞めたいということになると、その上司の責任問題になります。
上司は、とにかく引き止めにかかります。
この時の上司の引き止めは、おそらく、カウンターを出してきます。
カウンターオファーのリスト
- 「君にとって、今はタイミングではないよ」
- 「君の将来のことを考えると、転職はしないほうがよいよ」
- 「君の昇進の話がすすんでいるところだよ」
- 「来週、取締役が来るから、そこで君の話をすることろだよ」
- 「君にとって、あの会社を選択することは良くないよ」
- 「転勤させてやるよ」
- 「領域変えてあげるよ」
- 「マーケ、MSLに推薦するよ」
- 「給料上げるよ」
- 「そんなこと、この大事なときにしてよいと思っっているのか」
- 「ずいぶん自分勝手だな」
- 「どれだけ周囲にふたんをかけるのか」
- 「無責任だな」
と、とにかく、ポジティブにもネガティブにも引き止め作戦に入ります。
君にとって、君のため・・・は、嘘
実は、引き止めに必死な上司は自分のことしか考えていません。評判の良い社員をやめさせてしまうと管理能力上から疑われるからです。
上司は、それが嫌で、とにかく引き留めようとして、その理由を、あたかも「君のこと」というふうに作っているだけなのです。実査は自分のためです。
実際は、あなたのことなんで、1ミリも考えていないのです。
このような引き止め作戦が続くと、そもそも、お世話になった会社や、愛着もある会社ですから、気持ちが揺らいでしまうのです。
「俺、なにかまずいことしているのかな〜〜」
という、まるで犯罪者のような気持ちに陥ったりすることも無きにしもあらずです。
何も悪いことはしていないのにです。
こういう場面でも、本当はエージェントが介していればよいのですが、社員紹介なので、致し方ありません。
そういうときは、こう考えましょう。
会社への愛着よりも、自分への愛着
何のために仕事を知ているのか
→会社か?
→家族か?
自分、そして家族のために仕事をしているのです。会社のためではありません!
惜しまれつつやめて、なおかつ、転職後も良い関係を保つようにしなければなりません。それは簡単ではありませんが、コツさえ掴めばできることです。
自分の意志。働く意味。
これを常に念頭に置くことです。
最終的には、自分の意志を強く持つことがとても大事になってくるのです。